食品、添加物等の規格基準の一部改正に係る食品中の残留農薬等試験法について
食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部が、本日、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成16年厚生労働省告示第263号)をもって改正され、その運用についても同日、食安発第0706001号をもって当職から別途通知したところである。
ついては、今般、新たに残留基準を設定した農薬ピリダリルについて、別添のとおり試験法を定めたので、下記の事項に留意の上、関係者への周知方よろしくお願いする。
なお、同日付けで告示した動物用医薬品オクスフェンダゾール、フェバンテル及びフェンベンダゾールの試験法については、後日、通知することとしている。
記
1 試験法の概要
新たに残留基準を設定したピリダリルにつき、その試験法を定めたこと。
2 運用上の留意事項
(1)通知に示す以外の方法により試験を実施する場合は、通知に示す試験法と同 等以上の性能を有する試験法によること。
(2)別添の試験法に用いる検体は、食品、添加物等の規格基準第1食品の部D各条の項の○穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(1)検体に掲げるものとすること。
(3)別添の試験法で使用する試薬・試液は、特に記載したものを除き、食品、添加物等の規格基準第1食品の部D各条の項の○穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(2)試薬・試液及び第2添加物の部C試薬・試液等の項に記載されているものを使用すること。
(4)果実及び野菜等の検体を調製する場合、現行告示の抽出法に係る規定を参考に、検査対象全体を代表するよう検体を採取し、それを細切等の上均一化し試験に供する試料とすること。
(別添)
食品中の残留農薬等試験法
平成16年7月
厚生労働省医薬食品局食品安全部
食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の試験法について、次のとおり定める。
ピリダリル試験法
(注)用語の定義等
1 「定量限界」とは、一般に、試料に含まれる分析対象物の定量が可能な最低の量又は濃度のこと。概ねS/N=10となる分析対象物質の量を試料中の農薬濃度として示した。なお、Sは分析対象物のピーク高さ、Nはベースラインノイズを指す。
2 「類型」については、当該試験法の由来を示すものであり、以下のように分類した。
A:日本国内の公定分析法(環境省告示試験法など)
B:諸外国の公定分析法、マニュアル等(米、独、オランダ、EUなど)
C:厚生労働省試験法検討班作成の試験法
D:文献等から引用した試験法
食品中の残留農薬等の試験
ピリダリル試験法
1.分析対象化合物
ピリダリル
2.装置
アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC(FTD))、高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ(GC(NPD))又は電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフ(GC(ECD))
ガスクロマトグラフ・質量分析計 (GC/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、第1 食品の部D 各条の項の○ 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(2) 試薬・試液に示すものを用いる。
活性炭ミニカラム(250 mg) 内径12~13 mmのポリエチレン製のカラム管に、活性炭250 mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。
ピリダリル標準品 本品はピリダリル98%以上を含む。
4.試験溶液の調製
1) 抽出
試料 20.0 g にアセトン 100 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン 50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液にアセトンを加えて正確に 200 mLとする。この 100 mLを採り、 40℃以下で約 15 mLまで濃縮する。これに10%塩化ナトリウム溶液 100 mLを加え、n-ヘキサン 100 mL及び 50 mLで 2 回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を 40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン・トルエン混液 (4:1) 5 mLを加えて溶かす。
2) 精製
① 活性炭カラムクロマトグラフィー
活性炭ミニカラム (250 mg) にアセトン・トルエン混液 (4:1) 10 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに、1) で得られた溶液を注入した後、アセトン・トルエン混液 (4:1) 15 mLを注入する。全溶出液を 40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にn-ヘキサン 5 mLを加えて溶かす。
② アミノプロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム (360 mg) にn-ヘキサン 10 mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに ①で得られた溶液を注入した後、n-ヘキサン 10 mLを注入する。全溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に 2 mLとしたものを試験溶液とする。
5.検量線の作成
ピリダリル標準品の 0.1~2 mg/Lアセトン溶液を数点調製し、それぞれ 2 μLをGCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液 2 μLをGCに注入し、5の検量線でピリダリルの含量を求める。
7.測定条件
1) GC
検出器: FTD、NPD又はECD
カラム: メチルシリコン、内径 0.53 mm、長さ 15 m、膜厚 1 μm
カラム温度: 250℃
注入口温度: 250℃
検出器温度: 280℃
キャリヤーガス: ヘリウム (ECDの場合は、高純度窒素ガス)
保持時間の目安: 4 分
2) GC/MS
カラム: 5%フェニル-メチルシリコン、内径 0.25 mm、長さ 30 m、膜厚 0.25 μm
カラム温度: 200(1分)-10℃/分-280℃(5分)
注入口温度: 250℃
キャリヤーガス: ヘリウム
イオン化モード(電圧): EI (70 eV)
主なイオン (m/z): 204、164、146
注入量: 1 μL
保持時間の目安: 11.5 分
8.定量限界
0.02 mg/kg
9.留意事項
1) 試験法の概要
ピリダリルを試料からアセトンで抽出し、n-ヘキサンに転溶する。活性炭ミニカラム及びアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製した後、GC(FTD、NPD又はECD)で測定し、GC/MSで確認する方法である。
2) 注意点
① 活性炭ミニカラム(250 mg)では、溶出溶媒としてアセトン・トルエン混液 (4:1)を用いているが、緑葉野菜のように夾雑物の比較的多い試料を対象とする場合は、酢酸エチル(20 mL)やアセトン(20 mL)でも溶出可能である。試料夾雑物の溶出量は、アセトン・トルエン混液で溶出するよりも若干低下することが期待できる。
② 精製が不十分な場合は、シリカゲルミニカラム (690 mg) [試料溶液を負荷した後、n-ヘキサン 10 mLで洗浄、酢酸エチル・n-ヘキサン混液 (1:19) 10 mLで溶出]やオクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム (1000 mg) [試料溶液を負荷した後、アセトニトリル・水混液 (4:1) 10 mLで洗浄、アセトニトリル 10 mLで溶出]による精製を追加するとよい。
③ GC(ECD)測定では、試料夾雑物による影響を受けやすく、試料による感度変動が大きい。また、GC/MS測定では、ピリダリルの感度が食品の品目によって大幅に高まる場合がある。
④ 活性炭ミニカラムで精製する前に、アセトニトリル(50 mL)/ヘキサン(50 mL)分配3回を追加すれば、穀類や豆類についても分析することができる。
10.参考文献
なし
11.類型
C
12.その他
平成16年7月6日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課事務連絡「「食品中の残留農薬等試験法に係る分析上の注意事項」の改正について」の別添を参考にすること。