通知

 

食安発第1006004号

平成18年10月06日

都道府県知事

保健所設置市長

特別区長

殿

医薬食品局食品安全部

 

 

食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法の一部改正について

 

 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成18年厚生労働省告示第608号)が本日公布され、その内容については、本日付け食安発第1006001号当職通知をもって通知したところである。
 今般、これに関連して、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号当職通知。以下、「試験法通知」という。)別添の第3章個別試験法について、農薬フロニカミドに係る試験法を別紙のとおり追加したので、関係者への周知方よろしくお願いする。
 また、上記試験法を実施するに際しては、試験法通知別添の第1章総則部分を参考とされたい。



別紙

フロニカミド試験法(農産物)

1.分析対象化合物
 フロニカミド
 N-(4-トリフルオロメチルニコチノイル)グリシン (以下「TFNG」 という。)
 4-トリフルオロメチルニコチン酸 (以下「TFNA」 という。)

2.装置
 液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液
 次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。
 フロニカミド標準品 本品はフロニカミド 96%以上を含み、融点は158℃である。
  TFNG標準品 本品はTFNG 95%以上を含み、融点は170℃である。
  TFNA標準品 本品はTFNA 94%以上を含み、融点は140℃である。

4.試験溶液の調製
1)抽出
 果実及び野菜の場合は試料20.0gを量り採る。種実類の場合は試料10.0g、茶の場合は試料5.00gにそれぞれ水20 mLを加え、2時間放置する。
これにメタノール100 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、メタノール50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液にメタノールを加えて正確に200 mLとし、この4mLを採り、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に1%ギ酸5mLを加えて溶かす。
2)精製
① 果実、野菜及び種実類の場合
 スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム(500 mg)にメタノール10 mL、水10 mL及び1%ギ酸10 mLを順次注入し、各流出液は捨てる。グラファイトカーボンミニカラム(500 mg)にギ酸及びメタノール(1:99)混液10 mL及び1%ギ酸10 mLを順次注入し、各流出液は捨てる。
 スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラムに、1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、1%ギ酸5mL及びギ酸、水及びメタノール(1:90:10)混液8mLを順次注入し、各流出液は捨てる。次いで、このカラムの下部にグラファイトカーボンミニカラムを接続し、ギ酸、水及びメタノール(1:30:70)混液10 mLを注入し、溶出液を採る。スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラムを除去した後、グラファイトカーボンミニカラムにギ酸及びメタノール(1:99)混液10 mLを注入し、溶出液を採り、先の溶出液と合わせ、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、果実及び野菜の場合は正確に2mL、種実類の場合は正確に1mLとしたものを試験溶液とする。
② 茶の場合
 1)で得られた溶液を、①果実、野菜及び種実類の場合と同様に、スチレンジビニルベンゼン共重合体カラムクロマトグラフィー及びグラファイトカーボンカラムクロマトグラフィーによる精製に供し、得られた残留物に酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液5mLを加えて溶かす。
 シリカゲルミニカラム(690 mg)に酢酸エチル5mL及び-ヘキサン5mLを順次注入し、各流出液は捨てる。このカラムに上記の溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液5mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、酢酸エチル及び-ヘキサン(4:1)混液10 mLを注入し、溶出液(Ⅰ)を採る。さらに、アセトン10 mL及びアセトニトリル10 mLを順次注入し、各流出液は捨てる。次いで、アセトン、酢酸及び酢酸エチル(40:1:60)混液20 mLを注入し、溶出液(Ⅱ)を採る。各溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。溶出液(Ⅰ)の残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に5mLとしたものをフロニカミドの試験溶液とする。また、溶出液(Ⅱ)の残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に5mLとしたものをTFNG及びTFNAの試験溶液とする。

5.検量線の作成
 フロニカミド及びTFNGについては 0.002~0.04 mg/L、TFNAについては 0.0016~0.032 mg/Lを含むアセトニトリル及び水(1:9)混液の混合標準溶液を数点調製し、それぞれ10μLをLC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量
 試験溶液10■LをLC/MSに注入し、5の検量線でフロニカミド、TFNG及びTFNAの含量を求め、次式によりTFNG及びTFNAを含むフロニカミドの含量を求める。
  フロニカミド(TFNG及びTFNAを含む)の含量(ppm)=A+B×0.92+C×1.20
  A:フロニカミドの含量(ppm)
  B:TFNGの含量(ppm)
  C:TFNAの含量(ppm)

7.確認試験
 LC/MSにより確認する。

8.測定条件
① 果実及び野菜の場合
 LC/MS
 カラム: オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2mm、長さ 150 mm
 カラム温度:40℃
 移動相: アセトニトリル、酢酸及び水(10:0.1:90)混液で5分間保持し、次いで、
      (60:0.1:40)混液までの濃度勾配を15分間で行う。
 イオン化モード: ESI(負イオンモード)
 主なイオン (m/z): フロニカミド 228、TFNG 247、TFNA 190
 保持時間の目安: フロニカミド 15分、TFNG 9分、TFNA 6分
② 種実類及び茶の場合
 LC/MS
 カラム: 多孔性グラファイトカーボン(粒径5μm)、内径 2mm、長さ 150 mm
 カラム温度:40℃
 移動相: アセトニトリル、ギ酸及び水混液(20:0.1:80)から(70:0.1:30)までの濃度勾配を20分間で行い、さらに5分間保持する。
 イオン化モード: ESI(負イオンモード)
 主なイオン (m/z): フロニカミド 228、TFNG 247、TFNA 190
 保持時間の目安: フロニカミド 11分、TFNG 8分、TFNA 13分

9.定量限界
 各化合物 0.01 mg/kg(TFNG及びTFNAはフロニカミド換算)
 茶の場合は、各化合物 0.1 mg/kg(TFNG及びTFNAはフロニカミド換算)

10.留意事項
1)試験法の概要
 フロニカミド、TFNG及びTFNAを試料からメタノールで抽出し、スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラム及びグラファイトカーボンミニカラムで精製し、茶の場合はさらにシリカゲルミニカラムで精製した後、LC/MSで測定及び確認する方法である。なお、フロニカミド及びその代謝物であるTFNG及びTFNAのそれぞれについて定量を行い、TFNA及びTFNGについてはそれぞれの含量に係数を乗じてフロニカミドの含量に変換し、これらの和を分析値とする。
2)注意点
① 茶以外の農産物において、精製が不十分な場合は、本試験法に示されているシリカゲルミニカラムによる精製を追加するとよい。
②  LC/MS測定でも、試料由来の妨害ピークが検出されることがある。このような場合は、測定条件の変更やLC/MS/MSの使用により確認することが望ましい。
③ 果実、野菜及び種実類の場合は、スチレンジビニルベンゼン共重合体ミニカラムで精製し、溶出液を合わせて測定するが、茶の場合はさらにシリカゲルミニカラムで精製し、溶出液(Ⅰ)と溶出液(Ⅱ)を分けて測定する。
④ 茶では、シリカゲルミニカラムによる精製を省略すると、イオン化抑制と思われる現象が、特にフロニカミドにおいて顕著に認められる。茶以外の農産物においても、回収率が著しく低い場合は、精製不足を考慮する必要がある。
⑤ 種実類では夾雑ピークによる影響を低減し、茶ではイオン化抑制が原因と思われる低回収を効果的に軽減するため、「8.測定条件 ②種実類及び茶の場合」の条件で測定する。

11.参考文献
  なし

12.類型
  C
 
 

フロニカミド試験法(畜産物)


1.分析対象化合物
 フロニカミド
 4-トリフルオロメチルニコチン酸(以下「TFNA」という。)
 4-トリフルオロメチルニコチンアミド(以下「TFNA-AM」という。)

2.装置
 液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液
 次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。
 フロニカミド標準品 本品はフロニカミド 96%以上を含み、融点は158℃である。
 TFNA標準品 本品はTFNA 94%以上を含み、融点は140℃である。
 TFNA-AM標準品 本品はTFNA-AM 97%以上を含み、融点は166℃である。

4.試験溶液の調製
1)抽出
 筋肉、脂肪、肝臓、腎臓及びその他の食用部分の場合は、試料20.0gを量り採る。卵の場合は、殻を除き十分均一化した後、試料20.0gを量り採る。乳の場合は、試料20.0gを量り採る。
 これにアセトニトリル及び水(4:1)混液100 mL並びに-ヘキサン50 mLを加え、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離を行う。アセトニトリル及び水混液層を採り、-ヘキサン層及び残留物にアセトニトリル及び水(4:1)混液50 mLを加え上記と同様に抽出する。得られたアセトニトリル及び水混液層を200 mLのメスフラスコに合わせ、アセトニトリル及び水(4:1)混液を加え正確に200 mLとする。この4mLを分取し、10%塩化ナトリウム溶液30 mL及びリン酸0.3 mLを加え、酢酸エチル30 mLずつで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液5mLを加えて溶かす。
2)精製
 シリカゲルミニカラム(690 mg)に酢酸エチル5mL及び-ヘキサン5mLを順次注入し、各流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入し、流出液は捨てる。さらに、酢酸エチル及び-ヘキサン(1:1)混液5mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、アセトン、酢酸及び酢酸エチル(40:1:60)混液20 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。残留物をアセトニトリル及び水(1:9)混液に溶解し、正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

5.検量線の作成
 フロニカミド標準品、TFNA標準品及びTFNA-AM標準品のアセトニトリル溶液を調製し、それらを混合し、フロニカミドについては0.002~0.04 mg/L、TFNA及びTFNA-AMについては0.0016~0.032 mg/Lを含むアセトニトリル及び水(1:9)混液の混合標準溶液を数点調製し、それぞれ10μLをLC/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量
 試験溶液10μLをLC/MSに注入し、5の検量線でフロニカミド、TFNA及びTFNA-AMの含量を求め、次式により、TFNA及びTFNA-AMを含むフロニカミドの含量を求める。
 フロニカミド(TFNA及びTFNA-AMを含む。)の含量(ppm)=A+B×1.20+C×1.21
 A:フロニカミドの含量(ppm)
 B:TFNAの含量(ppm)
 C:TFNA-AMの含量(ppm)

7.確認試験
 LC/MSにより確認する。

8.測定条件
 LC/MS
 カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径3~5μm)、内径2.0~2.1 mm、長さ150 mm
 カラム温度:40℃
 移動相:A液及びB液について下の表の濃度勾配で送液する。
 移動相流量:0.2 mL/分
  A液:アセトニトリル
  B液:0.1%酢酸溶液

時間(分)

A液(%)

B液(%)

10

90

10

90

10

60

40

13

60

40

13

10

90

 イオン化モード:ESI
 主なイオン(m/z):フロニカミド 負イオンモード 228
            TFNA 負イオンモード 190
            TFNA-AM 正イオンモード 191
 注入量:10μL
 保持時間の目安:フロニカミド 12分、TFNA 6分、TFNA-AM 7分

9.定量限界
 各化合物 0.01 mg/kg(TFNA及びTFNA-AMはフロニカミド換算)

10.留意事項

1)試験法の概要
 フロニカミド、TFNA及びTFNA-AMを試料からアセトニトリル及び水(4:1)混液で抽出と同時に-ヘキサン洗浄する。酢酸エチルに転溶し、水を除いた後、シリカゲルミニカラムにより精製し、LC/MSで測定及び確認する方法である。なお、フロニカミド及びその代謝物であるTFNA及びTFNA-AMのそれぞれについて定量を行い、TFNA及びTFNA-AMについてはそれぞれの含量に換算係数を乗じてフロニカミドの含量に変換し、これらの和を分析値とする。

2)注意点
① TFNAは、アセトニトリル溶液中低濃度ではガラス容器などに吸着する傾向がある。低濃度の溶液はアセトニトリル及び水(1:9)混液で調製する。
② イオン化モードを分析途中で変更して同時に測定を行う場合、TFNA及びTFNA-AMの保持時間が近接しているため、各ピークの測定が適切に行われるよう留意する。

11.参考文献
  なし

12.類型
  C


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