国外で使用される農薬等に係る残留基準の設定及び改正に関する指針について
国外で使用される農薬、飼料添加物及び動物用医薬品につき、食品衛生法(昭和22 年法律第233 号)第11 条第1 項の規定に基づく食品中に残留する基準の設定及び改正する場合の要請について、別添のとおり当該要請の手続、要請書に添付すべき安全性に関する試験成績等必要な資料の範囲に関する指針を作成したので、貴管内関係者に対し周知徹底方よろしく御指導願いたい。
なお、本通知及び指針に掲げる食品衛生法の条項は、食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15 年法律第55 号)が本年2 月27 日に施行された後のものであるので、当該指針の活用に当たり留意されたい。
(別添)
国外で使用される農薬等に係る残留基準の設定及び改正に関する指針
Ⅰ目的
平成15 年5 月に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律(平成15 年法律第55 号。以下「改正法」という。)により新設された食品衛生法(昭和22 年法律第233 号)第11 条第3 項の規定に基づき、食品中に残留する農薬、飼料添加物及び動物用医薬品(以下「農薬等」という。)について、いわゆるポジティブリスト制(基準が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則として禁止する制度)を導入することとしており、同制度は改正法の公布後3 年以内に施行される。また、食品安全基本法(平成15 年法律第48 号)の施行等により、国内において農薬取締法(昭和23 年法律第82 号)、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28 年法律第35 号)及び薬事法(昭和35 年法律第145 号)に基づき登録申請等のある農薬等については、その登録等と同時に食品衛生法第11 条第1 項に基づき、食品の規格として農薬等の残留基準の設定及び改正を行っている。
ポジティブリスト制施行に当たっては、我が国への輸出が想定される農畜水産物に国外で新たに使用が認められる農薬等に係る残留基準の設定及び改正について、国外からの要請に対応する必要がある。
本指針は、残留基準の設定及び改正に必要とされる試験成績等の範囲の目安を示したものであるが、本来、すべての物質について一律の資料を求めることは合理的ではなく、また、今後とも科学技術の進歩に応じ新しい試験・評価方法の開発が行われることも考えられる。そのため、本指針で挙げられた試験成績及び資料を、評価又は残留基準の検討に用いるのに足る他の試験成績又は資料をもって代用することを妨げるものではない。
Ⅱ農薬等の残留基準設定及び改正に係る手続
1 .要請
国外で使用が認められている農薬等であって、我が国への輸出が想定される農畜水産物に使用される場合に、要請者は厚生労働大臣あてに、別紙様式1 又は別紙様式2 により要請書を提出することができる。その際、要請書には、当該農薬等に関する安全性に関する資料等を添付しなければならない。
なお、要請者が国外に在住する場合には、日本国内において当該要請に関する事項について責任をもって対応できる者(国内連絡先)を明記すること。また、要請書は、直接、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課に提出すること。
2 .審査
残留基準の設定及び改正の要請については、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課において事務局審査を行う。食品健康影響評価に係る部分については、食品安全基本法第24 条第1 項第1 号に基づき、食品安全委員会の意見を聴く。
食品安全委員会の評価結果を踏まえ、残留基準値案につき薬事・食品衛生審議会(以下「審議会」)の意見を聴く。
審議会からの答申を踏まえ、食品衛生法第11 条第1 項に基づく残留基準に係る告示等の必要な事務手続きを行う。
なお、食品安全委員会及び審議会における審査の過程等において、必要とされる場合には、要請者に資料の追加提出等を求めることがある。
Ⅲ必要とされる試験成績等について
1 .試験成績等の範囲及びGLP の適用
(1) 試験成績等の範囲
残留基準の設定及び改正の要請に当たり、必要とされる試験成績等の範囲は次のとおりとする。なお、当該農薬等の安全性等の評価に関係する資料を有する場合にあっては、以下の①及び②の規定にかかわらず、それらの資料も提出すること。
①残留基準設定の要請の場合
ァ. 農薬
「農薬の登録申請に係る試験成績について」(平成12 年11 月24 日12 農産第8147 号農林水産省農産園芸局長通知)における、毒性に関する試験成績(水産動植物、水産動植物以外の有用生物への影響及び水質汚濁性に関する試験成績を除く。)及び残留性に関する試験成績(土壌への残留性
に関する試験成績を除く。)を基本とする。
ィ. 飼料添加物
「飼料添加物の評価基準の制定について」(平成4 年3 月16 日4 畜A 第201 号農林水産省畜産局長及び水産庁長官通知)の飼料添加物の評価基準の安全性に関する試験及び残留性に関する試験を基本とする。VICH (動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力)における安全性に関するガイドラインに準じたものであっても差し支えない。
ゥ. 動物用医薬品
「動物用医薬品関係事務の取扱いについて」(平成12 年3 月31 日12-33 農林水産省畜産局衛生課薬事室長通知)の別紙第4 の毒性試験法等のガイドラインを基本とする。VICH (動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力)における安全性に関するガイドラインに準じたものであっても差し支えない。
②残留基準改正の要請の場合
残留基準改正の要請に係る農畜水産物等における残留性に係る試験成績を提出すること。また、当初の残留基準設定後に毒性及び残留性に係る新たな知見が得られている場合は、要請に当たり当該資料を提出すること。なお、その他の毒性に係る資料を保有することが必要であるが、その提出は厚生労働省からの求めに応じて行うこととする。
(2) GLP の遵守等
(1)に掲げる試験においては、GLP を遵守することを基本とする。また、上記(1)の試験を自ら実施しない場合は、当該試験成績(学術雑誌に公表されたものを除く。)の使用について試験実施者の承諾を得ていること。
(3) 使用言語
資料概要は邦文で記載すること。資料概要以外の添付資料(個々の試験成績等)については英文で記載されたものであっても差し支えないが、英文以外の場合は邦文又は英文に翻訳したものを添付すること。
2 .試験成績等の追加要求について
残留基準の設定及び改正の上で必要があると認められる場合には、必要な試験成績及び資料等の提出を、要請者に対して求めることがある。
3 .その他
諸外国※における登録等の情報及び設定されている残留基準、設定を希望する残留基準値並びに当該農薬等の食品中の分析法(例えば、流通している食品中の残留農薬のモニタリングに用いることができる分析法)に関する資料を提出すること。
また、加工調理の過程における残留農薬等の消長、移行性及び濃縮性等の知見(特に穀類、オイルシード等)がある場合は、厚生労働省に提出することが望ましい。
なお、残留基準設定後であっても、要請者は国外における登録等の取下げや、取消しに関する情報があった場合には、入手し得る情報を添えて、厚生労働省へ連絡すること。
※JMPR (FAO/WHO 合同残留農薬専門家会議)又はJECFA (FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議)で科学的な評価に必要とされている毒性試験結果などのデータに基づき設定している国(米国、カナダ、EU 、オーストラリア及びニュージーランド)とする。
H.16.02.05様式.pdf