一覧へ戻る 生衛発 第 825号-1 平成12年05月01日 各 都道府県知事 政令市長 特別区長 殿 生活衛生局 組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の法的義務化に関する食品、添加物等の規格基準の一部改正等について 組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の法的義務化に関する食品、添加物等の規格基準の一部改正等について 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号。以下「乳等省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第370号。以下「規格基準」という。)の一部が、それぞれ平成12年5月1日厚生省令第95号及び厚生省告示第232号をもって改正されるとともに、組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続(以下「審査手続告示」という。)及び組換えDNA技術応用食品及び添加物の製造基準(以下「製造基準告示」という。)が、それぞれ平成12年5月1日厚生省告示第233号及び厚生省告示第234号をもって制定されたので、下記の事項に留意の上その運用に遺憾のないようにされたい。 記 第1 改正及び制定の背景 近年、新技術としてのいわゆる生物工学(バイオテクノロジー)の実用化が進んでおり、食品分野においてもバイオテクノロジーの応用により食品の高品質化、生産性の向上等が期待され、既に国際的に実用化が進んできている。 バイオテクノロジーのうち組換えDNA技術は、従来、食品又は添加物の製造に応用された経験が少ないものであり、この技術を用いて製造される食品及び添加物については、その安全性について十分配慮がされなければならない。 このため、厚生省では、組換えDNA技術応用食品・添加物については、平成3年に「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」(以下「安全性評価指針」という。)及び「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針」(以下「製造指針」という。)を策定し、その安全性審査を行ってきたところである。 これまでに、29品種の食品と6品目の添加物について、食品衛生調査会における審議を経て、厚生大臣が個別に安全性評価指針への適合確認を行っている。 なお、製造指針への適合確認については、これまで、国内の製造所で遺伝子を組み換えた微生物を利用して食品又は添加物を製造する事例はなく、適用事例はない。 従来の安全性評価指針等に基づく審査は、法律に基づかない任意の仕組みとなっていたが、これまで、厚生省は安全性評価指針等に基づく安全性審査の申請を行うことを関係事業者等に強く要請し、義務付けに準じた扱いとし、これにより十分安全性の評価が行われていたことから、当面、これで足りると考えていたところである。 しかしながら、組換えDNA技術応用食品及び添加物の開発・実用化は、近年、国際的にも広がってきており、今後さらに新しい食品の開発が進むことも予想されるため、安全性を審査していないものが国内で流通しないよう、安全性審査を行う制度を法的に確立しておく必要があること等の理由から、組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査を法的に義務化することとしたものである。 第2 改正及び制定の要旨 1 乳等省令関係 組換えDNA技術を応用した乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品の成分規格及び製造の基準については、規格基準によることとしたこと。 2 規格基準関係(1) 食品が組換えDNA技術によって得られた生物の全部又は一部であり、又は当該生物の全部若しくは一部を含む場合は、当該生物は、厚生大臣が定める安全性審査の手続を経た旨の公表がなされたものでなければならないこととしたこと。(2) 食品が組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して製造された物であり、又は当該物を含む場合は、当該物は、厚生大臣が定める安全性審査の手続を経た旨の公表がなされたものでなければならないこととしたこと。(3) 添加物が組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造された物である場合は、当該物は、厚生大臣が定める安全性審査の手続を経た旨の公表がなされたものでなければならないこととしたこと。(4) 組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して食品又は添加物を製造する場合は、厚生大臣が定める基準に適合する旨の確認を得た方法で行わなければならないこととしたこと。 3 審査手続告示関係 組換えDNA技術を応用した食品及び添加物に関し、規格基準に規定する安全性審査の手続を定めるもの。 (1) 厚生大臣は、組換えDNA技術を応用した食品又は添加物の開発者等から申請があった場合は、食品が組換えDNA技術によって得られた生物であり、又は当該生物を含む場合にあっては当該生物の品種ごとに、食品又は添加物が組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造された物であり、又は当該物を含む場合にあっては当該生物の品種ごと又は当該食品若しくは添加物の品目ごとにその安全性の審査を行うこととしたこと。(2) 安全性の審査は、食品衛生調査会の意見を聴いて行うものとし、人の健康を損なうおそれがあると認められない場合は、当該審査を経た旨を公表することとしたこと。(3) 申請書の様式及び申請書に添付すべき資料を定めたこと。(4) 厚生大臣は、安全性の審査を経た旨を公表した食品又は添加物について、新たな科学的知見が生じたときその他必要があると認めるときは、食品衛生調査会の意見を聴いて再評価を行い、人の健康を損なうおそれがあると認められる場合には、その旨を公表するものとしたこと。(5) 安全性の審査を経た旨の公表がなされた品種と従来品種とを伝統的な育種の手法を用いて掛け合わせた品種(以下「後代交配種」という。)のうち、次に掲げる要件を満たすものについては、安全性の審査を経た旨の公表がなされたものとみなすこととしたこと。(1) 組換えDNA技術により新たに獲得された性質が後代交配種においても変化していないこと。(2) 亜種間での交配が行われていないこと。(3) 摂取量、食用部位、加工法等の変更がないこと。 4 製造基準告示関係 組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して製造された食品及び添加物に関し、規格基準に規定する製造の基準を定めるもの。(1) 組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して食品又は添加物を製造する場合の施設、設備及び装置が満たすべき基準、遵守すべき事項並びに職員及び組織の基準を定めたこと。(2) 厚生大臣は、組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して食品又は添加物を製造しようとする者から申請があったときは、食品衛生調査会の意見を聴いて、製造所ごとに、当該製造所が前記(1)の基準に適合していることの確認を行うこととしたこと。(3) 申請書の様式及び申請書に添付すべき資料を定めたこと。(4) 国外の製造所であって、本告示に定める基準と同等又はそれ以上の水準の管理がなされている場合は、当該基準に適合しているものとみなすこととしたこと。(5) 製造業者は、組換え体に係る製造実施状況を、製造所ごとに、製造開始時及び終了時並びに毎年度末に、厚生大臣に報告しなければならないこととし、その報告書の様式を定めたこと。(6) 確認を受けた製造業者は、施設、設備又は装置の軽微な変更を行うときは、あらかじめ変更届を厚生大臣に提出しなければならないこととしたこと。(7) 確認を受けた者が死亡したとき(法人にあっては、解散したとき。)又は製造方法等の変更(前記(6)に規定する場合を除く。)が行われた場合は、当該確認は失効するものとしたこと。 第3 運用上の注意 1 審査手続告示又は製造基準告示に基づく申請の手続等について(1) 審査手続告示に基づく安全性審査は、食品衛生調査会において、別添1の「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」に基づいて行われるものであること。(2) 審査手続告示又は製造基準告示に基づく申請資料の提出等は、別添2(生衛発825別添2.pdf)に基づいて行われるものであること。(3) 審査手続告示別表1に規定するGLPは、次に示す医薬品、化学物質等の安全性試験の実施に関する基準をいうこと。・医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第21号)・新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の項目等を定める命令第4条に規定する試験施設について(昭和59年3月31日付け環保業第39号、薬発第229号、59基局第85号、環境庁企画調整局長、厚生省生活衛生局長、通商産業省基礎産業局長連名通知)・農薬の毒性に関する試験の適正実施について(平成11年10月1日付け11農産第6283号、農林水産省農産園芸局長通知) 2 安全性審査の対象食品について (1) 組換えDNA技術応用食品及び添加物については、現在、開発及び流通が、組換えDNA技術を応用して得られた植物を食品として用いる場合又は組換えDNA技術によって得られた非病原性の微生物を利用して食品若しくは添加物を製造する場合(当該微生物自体を食さない場合に限る。)に限って行われていることから、当面、これらについてのみ安全性審査を行うものであること。したがって、将来、これら以外の新たな種類の食品について審査をする必要性が生じた場合は、厚生省は、速やかに、別添1の安全性審査基準及び別添2の申請の手続を改正することとしていること。(2) 宿主、ベクター及び挿入DNAの供与体が同一の種に属する場合(いわゆるセルフクローニング)及び組換え体と同等の遺伝子構成をもつ生細胞が自然界に存在する場合(いわゆるナチュラルオカレンス)については、審査手続告示及び製造基準告示に基づく審査の対象ではないが、組換えDNA技術を応用した食品及び添加物がこれに該当するか否かについては、個別事例毎に厚生省が判断するものであること。(3) 審査手続告示第5条第2号に規定する亜種に該当するか否かについては、個別事例毎に厚生省が判断するものであること。 3 その他 (1) 食品又は添加物の製造過程において組換えDNA技術を利用する者が、当該技術の安全性に影響を及ぼす知見を発見した場合は、速やかに厚生大臣に報告させること。(2) 審査手続告示第3条に規定する安全性審査及び製造基準告示第4条に規定する製造基準への適合確認は、組換えDNA技術の安全性のみに係るものであり、添加物については、別途、食品衛生法第6条に基づく指定がない限り、販売等が禁止されるものであること。(3) 製造基準告示第4条の適合確認を受けた製造所に対しては、必要に応じて現地調査を実施されたいこと。なお、その回数については、食品衛生法施行令第3条を参考とされたいこと。現地調査によって、施設が適合確認を受けた方法に反する又は異なる方法で製造を行っていること等が判明した場合は、確認を失効させることとしているので、このような事実が判明した場合は、速やかに、乳肉その他の動物性食品にあっては乳肉衛生課、添加物にあっては食品化学課、体調調整機能を有する食品にあっては新開発食品保健対策室、その他一般の食品にあっては食品保健課まで報告されたいこと。(4) 製造指針への適合確認についてはこれまで適用事例はないが、29品種の食品及び6品目の添加物については安全性評価指針に基づき既に安全性審査が行われている。これら29品種の食品及び6品目の添加物については、改めて審査手続告示に基づき安全性審査を行うこと。ただし、これらの食品及び添加物に係る安全性審査は、申請を待たずに厚生省が保有する資料に基づき行うものとし、追加資料が必要な場合は、当該資料の提出を求めることとすること。 また、安全性評価指針に基づき申請がなされ安全性審査を了していないものについては、審査手続告示に基づく申請がなされたものとみなすが、追加資料が必要な場合は、当該資料の提出を求めることとすること。(5) 安全性審査の手続を経た旨の公表等は、官報による官庁報告を予定していること。 第4 施行期日 平成13年4月1日から施行又は適用することとしたこと。 ただし、安全性審査及び製造基準への適合確認の手続については、適用日前においても行うことができることとしたこと。 第5 その他 平成3年12月26日付け衛食第153号生活衛生局長通知「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針及び組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針について」及び平成4年3月27日付け衛食第32号、衛乳第69号、衛化第25号生活衛生局食品保健課長、乳肉衛生課長、食品化学課長通知「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の製造指針及び組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針に基づく確認申請等の取扱いについて」は、廃止する。 一覧へ戻る