一覧へ戻る 平成13年01月11日 「遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む食品に関する表示」 及び「指定検査機関の在り方」に関する食品衛生調査会の意見具申について - 別添4 アレルギー物質を含む食品の表示についての考え方 本文へ(別添4) アレルギー物質を含む食品の表示についての考え方 平成12年12月26日 1.対象範図 アレルギーをはじめとした過敏症(以下「アレルギー疾患」という。)を惹起することが知られている物質(以下「アレルギー物質」という。)については、飲食に起因する健康被害の発生防止の観点から、これらを有する食品に対し、表示を義務づける必要がある。このため、食品衛生法においては、JAS法では規定されていない流通過程の食品及び食品原材料にも表示が義務づけられているところであり、アレルギー表示についてもこの原則に準ずるべきである。よって、アレルギー物質を含む食品の表示の対象範囲は、食品衛生法第11条〔表示の基準〕の規定に基づく食品衛生法施行規則別表第3に定める食品又は添加物であって販売の用に供するものであり、容器包装された加工食品とする。 食品衛生法第11条 (表示の基準)による表示 →公衆衛生の見地から表示につき必要な基準を定めることができる。 JAS法 (農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)による表示 →消費者の選択に資することを目的とする。 2.表示規定について 部会報告書では、表示の方法を、過去の健康危害などの程度及び頻度を考慮して、重篤なアレルギー疾患を惹起する実績のあった食品について、当該食品を原材料として表示させる「特定原材料表示」方式とし、実態調査をもとに24品目の特定原材料を示している。 しかし、これら24品目の中でも実際のアレルギー発症数、重篤度等に差異があるため、法令で厳しく表示を義務努寸けるものと、通知で表示を奨励するものとに分けることが現実的であるとの指摘を「食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究班」から受けたところである。これに対し、次回見直しまでの間、以下のように対応をとることとした。 (1) 表示制度導入につき、始めは24品目の中でも特に重篤度・症例数の多い5品目の表示について省令で取り決め、適宜特定原材料の見直しを行うこととする。 (2) 24品目の中で、アレルギー物質を含むことが知られていて、アレルギー疾患を引き起こすものの、症例数が少ないか、あるいは、多くても重篤な例が少ないものであり、現段階では科学的知見が少ない19品目に関しては、通知により表示を行うことを奨励すること。<省令/通知による規定> 規定 特定原材料名 理由 省令 卵、乳、小麦 症例数が多いもの。 なお、牛乳およびチーズは、「乳」を原料とする食品(乳及び乳製品等)を一括りとした分類に含まれるものとする。 そば、落花生 症状が重篤であり生命に関わるため、特に留意が泌要なもの。 通知 あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご 症例数が少なく、法令で定めるには今後の調査を必要とするもの。 ゼラチン 牛肉・豚肉由来であることが多く、これらは特定原材料であるため、既に牛肉、豚肉としての表示が必要であるが、パブリックコメントによる「ゼラチン」としての単独の表示を行うことへの要望が多く、専門家からの指摘も多いため、独立の項目を立てることとする。 ※ なお、特定原材料を示す名称の記載方法等については、さらに他法令との整合性を考慮していく必要がある。3.含有量が微量な場合の表示について 食物アレルギーは、人によっては舐める程度でアナフィラキシー症状が惹起されるなど、極微量のアレルギー物質によって発症することがある。よってアレルギー物質を含む食品にあっては、その含有量にかかわらず当該原材料を含む旨を表示する必要がある。 但し、実際の表示に関しては、JAS法と異なる点も含め、以下の点に留意して表示すること。(1)微量表示 微量でも特定原材料が含まれる場合は表示すること。 キャリーオーバー及び加工肋剤について ① 省令により表示を義務づけるとされた5品目については、キャリーオーバー及び加工助剤についても最終製品まで表示する必要がある。 ② 他の19品目については、可能な限り表示するように奨励すること。 加 工 助 剤:食品の加工の際に添加される物であって、当該食品の完成前に除去されるもの、当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの又は当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないものをいう。キヤリーオーバー:食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されない物であって、当該食品中には当該物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないものをいう。 (2)可能性表示の禁止 「可能性表示」(May contain:入っているかもしれません)は認めないこと。 「可能性表示」を認めると、PL法対策としての企業防衛、あるいは製造者による原材料調査の負担回避のねらいから、製造者によっては十分な調査を行わずに安易に「可能性表示」を実施することにもなりかねない。こうした安易な可能性表示を認めると、患者にとって症状の出ない商品についても「可能性表示」により特定原材料を含む旨の表示が行われるため、かえって選択の幅を狭める恐れがある。 (3)特定原材料複合化の禁止 原則として省令や通知で定める特定原材料名(別紙:「特定原材料」の表記方法読み替えリスト)に則り、記載すること。 <大項目分類名使用の禁止例> 正しい表示 禁止される表示 「穀類(小麦、大豆)」又は「小麦、大豆」 穀類 「牛肉、豚肉、鶏肉」 「肉類」「動物性〇〇」 「りんご、キウイフルーツ、もも」 果物類、果汁 * 但し、製造工程上の理由などから次の食品に限って下記のように表示することができる。 例外規定表示 たん白加水分解物(魚介類) (4)高級食材の誇大表示の禁止 特定原材料のうち、高価なもの(あわび、いくら、まつたけ等)が含まれる加工食品については、ごく微量しか含有されていないにもかかわらず、あたかも多く含まれるかのような表示が行われると消費者に誤認を生じさせるおそれがあることから、表示に当たっては、例えば「エキス含有」など、それらの含有量、形態に着目した表示も併せて記載されることが望ましい。<表示例> 特定原材料名 表示例 あわび 「あわび粉末」使用 まつたけ 「まつたけエキス」入り 消費者への正しい情報提供の場として、それが主要原材料であるかのような誤解を与えないように表示することが望ましい。 (5)添加物の表記方法について 添加物のうち、過去の症例や知見によりアレルゲン性が無いことが明らかなもの以外は、使用された特定原材料が判別できるように表示すること。 1) 原則として「物質名(~由来)」と記載する。 2) 乳化剤、調味料等の一括名で表示する食品添加物の場合は、一般的に「一括名(~由来)」と記載する。 3) 別名又は簡略名で、「卵」「大豆」「乳又は乳製品」等を意味する表現められている食品添加物の場合は、その名称をもって特定原材料表示に変えることができる。 アレルゲン性が不明のものについては、今後さらなる調査・検討が必要である。アレルゲンであるか否かについては、症例やアレルギー発症機序から検証し、低分子物質の抗原提示性も含め検討する必要がある。 特定原材料由来の食品添加物であっても、抗原性試験等によりアレルゲン性のないことが明らかである場合には、表示は免除される。抗原性試験については、「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」によるものとする。 添加物の安定化のため、特定原材料から製造される食品を使用する場合は特定原材料の表記をすること。(例:添加物であるトコフェロールを扱いやすくするため大豆油で希釈する場合) 【事例】「大豆」「卵黄」等を使用した食品添加物について 卵黄より製造される「レシチン」 → 〇「卵黄レシチン」 大豆より製造される「植物レシチン」 → ×「大豆レシチン」 → 〇「植物レシチン(大豆由来)」 〇「乳化剤(大豆由来)」 卵白より製造される「リゾチーム」 → ×「酵素」 → 〇 「リゾチーム (卵由来)」 〇「卵白リゾチーム」 牛乳より製造される「カゼインナトリウム」 → 〇「カゼインナトリウム(牛乳由来)」 ×「ミルクカゼインナトリウム」 乳清を精製濃縮した「ラクトフェリン」 → 〇「ラクトフェリン(牛乳由来)」 大豆由来の乳化剤を使用し、一括名で表示する場合 → 〇「乳化剤(大豆由来)」 (特定原材料が大豆のみの場合) 大豆由来の乳化剤、牛乳由来の乳化剤及びその他由来の乳化剤を併用した場合 → 〇「乳化剤(大豆、牛乳由来等)」 (6)香料の表記方法 香料に関しては、実際にアレルギー疾患を引き起こしたという知見が乏しいため、現時点では特定原材料表示は求めないが、今後さらに調査・検討が必要である。 しかしながら、香気成分以外に特定原材料24品目を原材料として製造された副剤を使用している際には、可能な限り表示することが望ましい。 (7)アルコール類の取扱い アルコール類については、摂取時の反応が特定原材料のアレルゲン性によるものかアルコールの作用によるものかを判断するための知見が現在得られていない。よって、現時点では表示の義務の対象としないが、今後さらに報告・症例の調査に基づき検討していくものとする。 牛乳の乳漿から製造される工業用アルコール(主に食品の製造時に用いられるアルコール)についても、アレルギー疾患を引き起こすとの知見は得られていないので、同様にさらなるが必要と考えられる。 4.具体的な表示方法(1)特定原材料の読み替え表記の設定 読み替え表記及び包括表記について次のように表記することができる。 (参考資料1-4 参照) 読み替え表記:特定原材料と表記方法や言葉が違うが、特定原材料と同じものであることが理解できる表記 (卵→玉子 とできる等) 包括表記:一般的に特定原材料より製造されていることが知られているため、特定原材料表記の必要は無いと考えられる食品 (するめ→「いか」より製造されると理解できる) (2)表示スペースを考慮した省略規定 24特定原材料を重複して使用する場合は、以下のように省略できることとする。 ① 特定原材料を単に混合する等の方法により使用し、製造されている複合原材料(例えば、事例1におけるフラワーペースト)を用いた複合調理加工品(事例1におけるシュークリーム)に関しては、消費者の誤認を与えない限りにおいて、全ての原材料(複合原材料の原材料を含める)を重量割合の多い順に表示できるものとする。 【事例1】 括弧をはずして表記する場合 複合調理加工品 原材料名 省略可能な表記例 シュークリーム 卵★、牛乳▲、砂糖、小麦粉◎、でんぷん(小麦粉◎)、フラワーペースト(卵★、小麦粉◎、牛乳▲、大豆●)、食塩 卵★、牛乳▲、砂糖、小麦粉◎、でんぷん、大豆●、食塩 サンドイッチ パン(小麦粉◎、卵★)、卵★、トマト、レタス、マヨネーズ(卵★、植物性油脂、醸造酢) 小麦粉◎、卵★、トマト、レタス、植物性油脂、醸造酢 ※ 事例中の★、▲、◎、●等の印は、当該事例を見やすくするためのものであり、実際の表示には必要ない。 ② 通常、原材料が混合されているものや、一緒に食べられるもの(単一惣菜、サンドイッチ等)については、加工品の特定原材料について、JAS 法の表示を行った上で、原材料表示の最後に括弧を付して、(大豆、小麦、...、...を原材料の一部として含む)等、特定原材料を使用している旨を記載することにより表示とすることができる。なお、複合調理加工品を複数詰めあわせて販売されているもの(弁当等)については、別途省略規定を必要とする。 【事例2】下記表記について 複合調理加工品 原材料名 省略可能な表記例 ポテトサラダ じゃがいも、にんじん、ハム(豚肉、食塩)、マヨネーズ(卵★、大豆●油、醸造酢)、たんぱく加水分解物(豚肉*)、調味料(アミノ酸) じゃがいも、にんじん、ハム、マヨネーズ、たんぱく加水分解生物、調味料(アミノ酸)(原材料の一部として、豚肉、卵及び大豆油を含む) 五目豆 大豆●、にんじん、れんこん、しいたけ、ごぼう、砂糖、醤油(大豆●、小麦◎)、酒、みりん、大豆油、食塩、調味料(アミノ酸)、乳化剤(大豆●由来) 大豆●、にんじん、れんこん、しいたけ、ごぼう、砂糖、醤油、酒、みりん、大豆油、食塩、調味料(アミノ酸)、乳化剤(原材料の一部に小麦を含む) ※ 事例中の★、*、◎、●等の印は、当該事例を見やすくするためのものであり、実際の表示には必要ない。 ③ 原材料名に特定原材料名及び読み替え規定に定める表記が入っているときは、それをもって特定原材料表記とすることができる。 → 大豆油、小麦でんぷん等(3)表記方法について 食品衛生法においては、容器包装を開かないでも容易に見ることができるように当該容器包装又は包装の見やすい場所に記載することとしている。従って、別添の添付文書等によるアレルギー物質を含有する旨の情報提供のみでは、表示とはみなさない。(4)乳等省令との整合性 特定原材料のうち、乳を原材料とする食品の表示に関しては、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27 日厚生省令第52号)」(以下「乳等省令」という)に準ずるものとする。ただし、一般的に乳成分を含むことが理解されにくい原材料名については別に「乳製品」又は「乳又は乳を主要原料とする食品」である旨を併記すること。 乳等については、別紙のとおり読み替え表示とすることができる。 <乳等省令29項目について>l 乳 「生乳」 さく取したままの牛の乳 「牛乳」 直接飲用に供する目的で販売する牛の乳 「特別牛乳」 牛乳であって特別牛乳として販売するもの 「部分脱脂乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分を除去したものであって、脱脂乳以外のもの 「脱脂乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳からほとんどすべての乳脂肪分を除去したもの 「加工乳」 生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工したものであって、直接飲用に供する目的で販売するもの(部分脱脂乳、脱脂乳、はっ酵乳及び乳酸菌飲料を除く) l 乳製品 「クリーム(乳製品)」 生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの 「バター」 生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したもの 「バターオイル」 バター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪分以外の成分を除去したもの 「チーズ」 ナチュラルチーズ及びプロセスチーズ 「濃縮ホエイ(乳製品)」 乳を乳酸菌ではっ酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清を濃縮し、固形状にしたもの 「アイスクリーム類」 乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く) 「濃縮乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳を濃縮したもの 「脱脂濃縮乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分を除去したものを濃縮したもの 「無糖れん乳」 濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売するもの 「無糖脱脂れん乳」 脱脂濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売するもの 「加糖れん乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳にしょ糖を加えて濃縮したもの 「加糖脱脂れん乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分を除去したものにしょ糖を加えて濃縮したもの 「全粉乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの 「脱脂粉乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの 「クリームパウダー(乳製品)」 生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分以外の成分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの 「ホエイパウダー(乳製品)」 乳を乳酸菌ではっ酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの 「たんぱく質濃縮ホエイバウダー(乳製品)」 乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清の乳糖を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの 「バターミルクパウダー」 バターミルクからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの 「加糖粉乳」 生乳、牛乳又は特別牛乳にしょ糖を加えてほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの又は全粉乳にしょ糖を加えたもの 「調整粉乳」 生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原材料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え粉末状にしたもの 「はっ酵乳」 乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母ではっ酸させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したもの 「乳酸菌飲料」 乳等を乳酸菌又は酵母ではっ酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料 (はっ酵乳を除く) 「乳飲料」 生乳、牛乳、若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を主要原材料とした飲料であって、「生乳」「牛乳」「特別牛乳」「部分脱脂乳」「脱脂乳」「加工乳」まで及び「乳製品」に掲げるもの以外のもの 5.施行期日及び経過措置について (1) これらの改正規定は、平成13年4月1日から施行する。 (2) 経過措置として、平成14年3月 31日までに製造され、加工され、若しくは輸入される食品等に係る表示については、なお従前の例によることができるものとする。 (3) 対応実施が可能なものについては、平成14年3月 31 日以前であっても表示に努めること。6.その他 製造元となる事業者は、表示を基本的に必要としない原材料について、可能性の情報も含めできる限り、電話での問い合わせ対応やインターネット等による情報提供などを行うことが望ましい。 表示が正しくなされているか等を検証する方法は、書類による追跡調査とする。 今回の改正の内容を消費者に周知徹底するための方策を、さらに検討する必要がある。 一覧へ戻る