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(別添1)
アスペルギルステレウス糖たん白質
1.食品添加物
アスペルギルステレウス糖たん白質 (Aspergillus terreus glycoprotein)
2.基源・製法・本質
糸状菌(Aspergillus terreus)によるブドウ糖、澱粉及び大豆ミールの発酵培養液を除菌し、硫酸アンモニウムにより分画した後、脱塩して得られたものである。主成分は糖タンパク質である。
3.主な用途
製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1) 単回投与試験
急性経口LD50はラットで6,000mg/kg超、マウスで7,500mg/kg超である1),2)。
(2) 反復投与試験
SDラットを用いた強制経口(300、600、1,200、2,400mg/kg)投与による3ケ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2,400mg/kg/dayと考えられる3)。
(3) 変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、いずれも陰性と判断される4),5) 。
(4) 眼粘膜刺激性試験
日本白色ウサギを用いて眼の角膜、結膜及び虹彩に対する一次刺激性を3.0%水溶液で調べた試験の結果は、陰性と認められている6)。
(引用文献)
1. 今井 清ほか: MST(ムタステイン)の経口投与によるラットにおける急性毒性試験, 基礎と臨床, 20(12), 131, Sep. 1986
2. 今井 清ほか: MST(ムタステイン)の経口投与によるマウスにおける急性毒性試験, 基礎と臨床, 20(12), 133, Sep. 1986
3. 山口一喜ほか: MST(ムタステイン)のラットにおける経口3ケ月間投与毒性試験, 基礎と臨床, 20(12), 135, Sep. 1986
4. 田中憲穂ほか: MST(ムタステイン)のチャイニーズハムスター培養細胞による染色体試験, 基礎と臨床, 20(12), 127, Sep. 1986
5. 岩原繁雄ほか: MST(ムタステイン)の細菌による変異原性試験報告, 基礎と臨床, 20(12), 123, Sep. 1986
6. 原康夫ほか: ムタステインの眼粘膜刺激性試験, 基礎と臨床, 23(2), 71, Jan. 1989
アカネ色素
1.食品添加物名
アカネ色素(Madder colour)
2.基原・製法・本質
アカネ科セイヨウアカネ(Rubia tinctorum LINNE)の根より、室温時~温時水又は含水エタノールで抽出して得られたものである。主色素はアリザリン及びルベリトリン酸である。黄~赤紫色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1) 単回投与試験
急性経口LD50はマウスで3,505~3,509mg/kgと考えられる1)。
(2) 反復投与試験
B6C3F1マウスを用いた混餌(0.3、0.6、1.25、2.5、5.0%)投与による90 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は7.5g/kg/dayと考えられる。2)
(3) 変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験では、陽性の結果が得られ3),4),6)、TA100 の-S9 では、0.1mg/plateから陽性となったが、+S9では、1.0mg/plateから陽性となり、S9の添加により活性が低下した4)。細菌を用いたDNA修復試験では 100ml/mlという高用量で弱い陽性結果が得られている3)。マウスを用いた小核試験の結果は陰性と判断される5),7)。
(4) 多臓器中期発がん性試験
N-ニトロソジエチルアミン(DEN)、N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)、N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)ニトロソアミン(DHPN)を投与したF344ラットを用いた混餌(0、2.5、5.0%)投与による多臓器中期発がん性試験において、いずれの標的部位に対しても発がんプロモーター作用を示していない8)。
(引用文献)
1.マウスによる急性毒性試験, 1975, 社内データ (未公表)
2.田中卓二ら: セイヨウアカネ由来新規天然色素 MADDER ROOT の急性及び亜急性毒性に関する研究, 日本食品化学学会誌, 1(1) 17, 1994
3.蜂谷紀之ら: 天然添加物の急性毒性及び各種変異原性試験成績の概要(昭和 56年-58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
4.変異原性試験, 1980, 社内データ (未公表)
5.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その7) -昭和60年度厚生省試験研究-, トキシコロジーフォーラム, 9(6), 628-633, 1986
6.麻野間正晴ら: 天然添加物のサルモネラ菌に対する変異原性 (第2報), 名古屋市衛生研究所報, 30, 1984
7.Madder Red Color: Mouse Micronucleus Test, 1996, 社内データ(未公表)
8.A. Hagiwara, et al., Two Different Constituents of Madder Colors Lack Tumor Promoting or Carcinogic Potential in a Medium-term Multi-organ Carclnogenesis Bioassay in Rats, 日本食品化学学会誌 (Japanese Journal of Food Chemistry) Vol.4(2), 99‐106, 1997
アシラーゼ
1.食品添加物名
アシラーゼ(Acylase)
2.基原・製法・本質
糸状菌 (Aspergillus ochraceus, Aspergillus melleus) の培養液より、水で抽出して得られたもの、冷時~室温時除菌したもの、又はこれより、冷時エタノールで処理して得られたものである。
3.主な用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウス、ラットで15,000 mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与試験
Wisterラットを用いた強制経口(200、800、3,200mg/kg)投与による5週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は3,200mg/kg/dayと考えられる2)。Wisterラットを用いた強制経口(200、800、3,200mg/kg)投与による26週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は3,200mg/kg/dayと考えられる3)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は、比較的高用量(1.25mg/plate 以上)で、陽性と判断される4),5)。細菌を用いた DNA修復試験5)、培養細胞を用いた染色体異常試験6)及びマウスを用いた小核試験7)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.Acylase の急性毒性試験, 1975. 8, 社内データ (未公表)
2.Aspergillus sp.産生アシラーゼの安全性試験 (Ⅱ) -ラットを用いる5週間強制経口投与亜急性毒性試験-, 1975. 10, 社内データ (未公表)
3.Aspergillus sp.産生アシラーゼの安全性試験 (Ⅲ) -ラットを用いる 26週間強制経口投与慢性毒性試験-, 1975. 10, 社内データ (未公表)
4.黒田孝一ら: 天然添加物の変異原性, 大阪市立環境科学研究所年報 47, 24-30, 1985
5.蜂谷紀之ら: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要 (昭和56年-58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105,1985
6.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その6) -昭和59年度厚生省試験研究-, トキシコロジーフォーラム, 8(6), 705‐708, 1985
7.祖父尼俊雄ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その12) -平成 2 年度厚生省試験研究-, 変異原性試験, 3(4), 206-215, 1994
オキアミ色素
1.食品添加物名
オキアミ色素(Krill colour)
2.基原・製法・本質
オキアミ科オキアミ(Euphausia similis G.O.SARS)又はナンキョクオキアミ(Euphausia superba DANA)の甲穀又は眼より、圧搾し、分離して得られたもの、室温時アセトンで抽出して得られたもの、加圧下に二酸化炭素で抽出して得られたもの、又はへキサンで抽出して得られたものである。主色素はアスタキサンチンである。燈~赤色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで2g/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与試験
SD 雄性ラットを用いた強制経口(0.3g/kg、1.0g/kg、3.0g/kg アスタキサンチン濃度約 1.7%)投与による4週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は3g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は陰性と判断される3)。
(引用文献)
1.ASTAX1700に関する経口急性毒性試験, 1994, 社内データ (未公表)
2.ASTAX1700の経口投与による4週間反復投与毒性試験, 1994, 社内データ (未公表)
3.ASTAX1700に関する変異原性試験, 1994, 社内データ (未公表)
γ-オリザノール
1.食品添加物名
γ-オリザノール(g-Oryzanol)
2.基原・製法・本質
イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)の種子より得られる米ぬか又は胚芽油より、室温時含水エタノール及びn-へキサン又はアセトンで分配した後、含水エタノール画分から得られたものである。主成分はステロールとフェルラ酸及びトリテルペンアルコールとフェラル酸のエステルである。
3.主な用途
酸化防止剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで5.0g/kg超である1)。
(2)反復投与/発がん性試験
Wistar ラットを用いた強制経口(30、100、300、1,000mg/kg)投与による 181 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は1,000mg/kg/dayと考えられる2)。
F344 ラットを用いた混餌(200、600、2,000mg/kg)投与による2年間の発がん性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び発がん性は認められていない。無毒性量は2,000mg/kg/dayと考えられる6)。
B6C3F1マウスを用いた混餌(200、600、2,000mg/kg)投与による 78週間の発がん性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び発がん性は認められていない。無毒性量は2,000mg/kg/dayと考えられる7)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験3)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験4)及び細菌を用いたDNA修復試験5)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.厚生省平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験, 急性毒性試験報告書
2.羽里彦左衛門ら: γ-オリザノール(オリバー錠)の慢性毒性試験, 基礎と臨床, 8(11), 91‐109, 1974
3.厚生省平成3年度食品添加物安全性評価試験, 変異原性試験(Ames法)報告書
4.厚生省平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験, 変異原性試験(染色体異常試験)報告書
5.厚生省平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験, 変異原性試験(Rec-assay)
6 .M.TAMAGAWA et.a1.: Carcinogenicity study of g-oryzanol in F344 rats, Fd. Chem.Toxicol., 30, 41-48, 1992
7.M.TAMAGAWA.et.a1.: Carcinogenicity study of g-oryzanol in B6C3F1 mice, Fd. Chem. Toxicol., 30, 49-56, 1992
カカオ色素
1.食品添加物名
カカオ色素(Cacao colour)
2.基原・製法・本質
アオギリ科カカオ(Theobroma cacao LINNE)の種子(カカオ豆)を発酵後、培焼したものより、温時弱アルカリ性水溶液で抽出し、中和して得られたものである。主色素はアントシアニンが熱により重合したものである。褐色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで10,000mg/kg超、ラットで5,000mg/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与/発がん性試験
SDラットを用いた強制経口(500、1,000、2,000、4,000mg/kg)投与による5週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は4g/kg/dayと考えられる2)。
SD ラットを用いた混餌(0.05%、5%)投与による 104 週間の反復投与試験及び発がん性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び発がん性は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験では、5mg/plate 以上の高用量で陽性3)、弱陽性4)と判断された報告がある。また、ロットによって異なる結果が得られたとの報告5)もある。細菌を用いたDNA修復試験においてもロットによって異なる結果が得られ、15mg/diskという高用量で陽性の結果が得られている5)。培養細胞を用いた染色体異常試験においても異なるロットについて試験が行われ、比較的高用量(D20値が 0.7~1.83mg/ml)で陽性の結果が得られている3),5),6)。マウスを用いた小核試験では、統計的に有意差のある結果が得られたが、その出現頻度は非常に低い(0.28%)もので7)、別のロットでは陰性の結果が得られている8)。
(引用文献)
1.清水充ら: 化学的合成品以外の食品添加物のマウス及びラットにおける急性経口毒性について, 生活衛生 37(5), 215‐220, 1993
2.昭和61年度厚生省委託試験
3.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その2) -昭和55年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ-, 変異原と毒性, 4(6), 80-89, 1981
4.藤田博ら: 天然食品添加物のAmes試験における変異原性, 東京都立衛生研究所研究年報, 47, 309-313, 1996
5.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その7) -昭和60年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ-, トキシコロジーフォーラム, 9(6), 628-633, 1986
6.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績-昭和54年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ (第一回)-, 変異原と毒性, 第12集 82-90, 1980
7.蜂谷紀之ら: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要 (昭和56-58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
8.蜂谷紀之ら: 天然添加物についての小核試験, 変異原性試験, 1(1), 13-17, 1992
グァーガム酵素分解物
1.食品添加物名
グァーガム酵素分解物(Enzymatically hydrolyzed guar gum)
2.基原・製法・本質
「グァーガム」を酵素(α-ガラクトシダーゼ、ヘミセルラーゼ)で分解して得られたものである。主成分は多糖類である。
3.主な用途
増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウス、ラットで6,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(0.2、1.0、5.0%)投与による 13週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は、3.1g/kg/day と考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される3)。
(引用文献)
1.K-13(グアーガム分解物)のマウスおよびラットにおける経口投与急性毒性試
験,1988,社内データ(未公表)
2.K-13(グアーガム分解物)の雌雄ラットにおける飼料添加投与による13週間毒性試験, 1989, 社内データ (未公表)
3.K-13(グアーガム分解物)の変異原性試験, 1990, 社内データ (未公表)
クエルセチン
1.食品添加物名
クエルセチン(Quercetin)
2.基原・製法・本質
「ルチン(抽出物)」を、酵素又は酸性水溶液で加水分解して得られたものである。成分はクエルセチンである。
3.主な用途
酸化防止剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与/発がん性試験
F344 ラットを用いた混餌(0.1、0.2%)投与による 64 週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない3)。
ラットを用いた混餌(0.25、0.5、1%)投与による410日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は500mg/kg/dayと考えられる7)。
ddY マウスを用いた混餌(2%)投与による発がん性試験において、発がん性は認められていない1)。
A/JJms マウスを用いた混餌(5%)投与による肺腫傷を指標とする 23 週間の発がん性試験において、発がん性は認められていない2)。
F344 ラットを用いた混餌(0.1%)投与による 540 日間の発がん性試験において、発がん性は認められていない4)。
ACIラットを用いた混餌(1、5%)投与による540日間の発がん性試験において、5%投与群で有意な体重増加抑制が観察されたのみで、発がん性は認められていない5)。
ACI ラットを用いた混餌(10%)投与による 850 日間の発がん性試験において、発がん性は認められていない5)。
ゴールデンハムスターを用いた混餌(10%)投与による 735 日間の発がん性試験において、発がん性は認められていない6)。
(2)繁殖試験
F344 ラットを用いた混餌(0.1、0.2%)投与による 64 日間の反復投与試験の中で繁殖能(分娩、生存児率、ほ育率等)に及ぼす影響を調べた試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は100mg/kg/dayと考えられる3)。
(3)催奇形性試験
SDラットを用いた妊娠9日の単回経口(2、20、200、2,000mg/kg)投与及び妊娠6~15 日の反復経口(2、20、200、2,000mg/kg)投与による催奇形性試験において、単回経口投与の 200、2,000mg/kg投与群、反復経口投与の2、2,000mg/kg投与群の胎児重量が対照群と比較して有意に低かったが、生存胎児数に差はなく、催奇形性は認められていないl0)。
(4)変異原性試験
サルモネラ菌株 TA100 あるいは TA98 を用いた復帰変異試験では、陽性の結果が報告されている3),8)。マウスを用いた小核試験では、クエルセチン 100~1000mg/kg の強制経口投与若しくは腹腔内投与、またはクエルセチン5%、10%混餌投与による骨髄または末梢血の赤血球についての検討結果は、いずれも陰性と判断される9)。クエルセチン 250mg/kg腹腔内投与したウサギについて末梢血リンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験の結果は、陰性と判断される9)。
(引用文献)
1.Saito, D. et al.: Test of Carcinogenicity of quercetin, a widely distributed mutagen in food, Teratogenesis, Carcinogenesis, and Mutagenesis, 1, 213-221, 1980
2.Hosaka, S. et al.: Carcinogenicity test of quercetin by pulmonary adenoma bioassay in strain A mice, Gann, 72(2), 327-328, 1981
3.Stoewsand, G. S. et al.: Quercetin: a mutagen, not a carcinogen, in Fischer rats, J. Toxicol. Environ. Health, 14, 105-114, 1984
4.Takanashi, H. et al.: Carcinogenicity test of quercetin and kaempferol in rats by oral administration, J. Food Safety, 5, 55-60, 1983
5.Hirono, I. et al.: Carcinogenicity examination of quercetin and rutin in ACI rats, Cancer Letters, 13, 15‐21, 1981
6.Morino, K. et al.: Carcinogenicity test of quercetin and rutin in golden hamsters by oral administration, Carcinogenesis, 3(1), 93-97, 1982
7.Ambrose, A. M. et al.: Comparative toxicities of quercetin and quercitrin, Amer. Pharm. Assoc. XLI(3), 119-122, 1952
8.Nagao, M. et al.: Mutagenicities of 61 flavonoids and 11 related compounds, Environ. Mutagen., 3, 401-419, 1981
9.MacGregor, J. T. et al.: In vivo exposure to plant flavonols; influence on frequencies of micronuclei in mouse erythrocytes and sister-chromatid exchange in rabbit lymphocytes, Mutat. Res., 124, 255-270, 1983
10.Willhite, C. C.: Teratogenic potential of quercetin in the rat, Fd. Chem. Toxic., 20, 75-79, 1982
クチナシ青色素
1.食品添加物
クチナシ青色素(Gardenia blue)
2.基原・製法・本質
アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRILL var. grandi flora HORT., Gardenia jasminoides ELLIS)の果実より、微温時水で抽出して得られたイリドイド配糖体とタンパク質分解物の混合物に、β-グルコシダーゼを添加した後、分離して得られたものである。青色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで5,000mg/kg超、ラットで10,000mg/kg超と考えられる1),2),3),4)。
(2)反復投与試験
ddYマウスを用いた混餌(1、2、4%)投与による5ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない3)。
F344 ラットを用いた混餌(0.6、1.25、2.5、 5%)投与による 13週間の反復投与試験において、検体投与による毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる5)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は陰性と判断される3),6),7),8)が、5~200mg/plateという高用量において陽性の結果が得られたとの報告もある9)。細菌を用いたDNA修復試験3)、培養細胞を用いる染色体異常試験 7)、マウスを用いた小核試験10),11)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.急性経口毒性試験, 1987, 社内データ (未公表)
2.急性経口毒性試験, 1978, 社内データ (未公表)
3.「天然色素ガーデニアンブルー75」の安全性について, 社内データ (未公表)
4.野口勉ら: 天然食品添加物の経口投与による急性毒性試験, 生活衛生, 32, 110-115 (1988)
5.今沢孝喜ら: 「クチナシ青色素のF344ラットにおける13週間亜慢性毒性試験」 国立衛生試験所報告, 114, 27-32, 1996
6.変異原性試験, 1987, 社内データ (未公表)
7.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その2) -昭和55年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ-, 変異原と毒性, 4(6), 80-89, 1981
8.安井陽子ら: 市販天然着色料の突然変異原性について, 食品衛生学雑誌, 23, 86-90, 1982
9.蜂谷紀之ら: 食品添加物の変異原性試験の概要 (昭和 56-58 年) トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
10.蜂谷紀之ら: 天然添加物についての小核試験, 変異原性試験, 1(1), 13-17, 1992
11.祖父尼俊雄ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その11)-平成元年度厚生省試験研究による-, 変異原性試験, 2(1), 19-28, 1993
クチナシ赤色素
1.食品添加物名
クチナシ赤色素(Gardenia red)
2.基原・製法・本質
アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRILL var. grandi flora HORT)の果実より微温時水で抽出して得られたイリドイド配糖体のエステル加水分解物とタンパク質分解物の混合物に、β-グルコシダーゼを添加した後、分離して得られたものである。赤色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで5,000mg/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与試験
B6C3F1マウスを用いた混餌(0.5%、1.5%、4.5%)投与による 21 週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は5.3g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、DNA修復試験の結果は、いずれも陰性と判断される2)。
培養細胞を用いた染色体異常試験では、極めて高用量(D20値 15.33mg/ml)で、陽性の結果が得られている3)。マウスを用いた小核試験では、5g/kg という高用量まで試験が行われたが、結果は陰性と判断される4)。
(引用文献)
1.野田勉ら: 天然食品添加物の経口投与による急性毒性試験, 生活衛生, 32(3), 110-115, 1988
2.吉積智司ら: クチナシ酵素処理天然色素の理化学的性質とその安全性について, 食品工業 23(22), 41, 1980
3.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その6)-昭和59年度厚生省試験研究による-, トキシコロジーフォーラム, 8(6), 705-708, 1985
4.蜂谷紀之ら: 天然添加物についての小核試験, 変異原性試験, 1(1), 13-17, 1992
クチナシ黄色素
1.食品添加物名
クチナシ黄色素(Gardenia yellow)
2.基原・製法・本質
アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRILL var. grandi flora HORT., Gardenia jasminodes ELLIS)の果実より、室温時水若しくは含水エタノールで抽出して得られたもの、又はこれを加水分解して得られたものである。主色素はクロシン及びクロセチンである。黄色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラットで5,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与/発がん性試験
C57BLマウスを用いた飲水(0.05、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6%)投与による12週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は、1.6g/kg/dayと考えられる2)。
C57BLマウスを用いた飲水(0.2、0.8%)投与による 95週間の発がん性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び発がん性は認められていない。無毒性量は0.8g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験3)の結果は、陰性と判断される。
(引用文献)
1.清水ら: 化学的合成品以外の食品添加物のマウスおよびラットにおける急性経口毒性について, 生活衛生, 37, 215-220, 1993
2.Nariaki Fujimoto et.al: Chronic toxicity Study of Gardenia Yellow color in C57BL mice, J. Toxicol. Pathol. 7, 455-460, 1994
3.天然黄色色素 (クチナシ黄色素) の安全性について, 昭和56年, 社内データ (未公表)
α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア
1.食品添加物名
α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア (a-Glucosyltransferase treated stevia)
2.基原・製法・本質
「ステビア抽出物」に、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いてグルコースを付加して得られたものである。主甘味成分はα-グルコシルステビオシドである。
3.主な用途
甘味料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで30,000mg/kg超である1),2)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(1.25、2.5、5.0%)投与による13週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は 2.5g/kg/dayと考えられる3),4)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験5),6)、細菌を用いたDNA修復試験6)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.急性毒性試験報告書, 1980. 9. 社内データ (未公表)
2.急性毒性試験報告書, 1984. 9. 社内データ (未公表)
3.a-Glucosyl steviol glycoside toxicity to rats by repeated dietary administration for 13 weeks, January, 1988, 社内データ (未公表)
4.菊池 啓明: 月刊フードケミカル, 1988, 6
5.「変異原性試験報告書」, 1981. 1., 社内データ (未公表)
6.「変異原性試験報告書」, 1984. 10., 社内データ (未公表)
コウリャン色素
1.食品添加物名
コウリャン色素(Kaoliang colour)
2.基原・製法・本質
イネ科コウリャン(Sorghum nervosum BESS.)の実及び穀より、温時水若しくは含水エタノールで抽出して得られたもの、又は室温時~温時アルカリ性水溶液で抽出し、中和して得られたものである。主色素はアピゲ二二ジン及びルテオリニジンである。赤褐色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで61,800mg/kg超、ラットで11,200mg/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(0.3、1、3、10%)投与による 13週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は5g/kg/dayと考えられる3)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は陰性と判断される4),5),6)。細菌を用いたDNA修復試験の結果は弱陽性と判断される4)。培養細胞を用いた染色体異常試験では、極めて高用量(D20値 13.35mg/ml)で陽性と判断される7)マウスを用いた小核試験では1g/kgまで試験が行われ、結果は陰性と判断される8)。
(引用文献)
1.マウスによる急性毒性試験, 1977, 社内データ (未公表)
2.コウリャン色素の急性毒性試験, 1975, 社内データ (未公表)
3.コウリャン色素の90日反復投与毒性試験, 1977, 社内データ (未公表)
4.蜂谷紀之ら: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要 (昭和56-58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-195, 1985
5.安井陽子ら: 市販天然着色料の突然変異原性について, 食品衛生学会誌, 23(1), 1982
6.麻野間正晴ら: 天然添加物のサルモネラ菌に対する変異原性 (第2報) 名古屋衛生試験所報, 30, 1984
7.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その5) -昭和58年度厚生省試験研究による-, トキシコロジーフォーラム, 7(6), 634-643, 1984
8.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その8) -昭和 61 年度厚生省試験研究による-, トキシコロジーフォーラム, 10(6), 649-654, 1987
シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ
1.食品添加物名
シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ (Cyclodextrin glucanotransferase)
2.基源・製法・本質
細菌(Bacillus, Brevibacterium, Corynebaterium)の培養液より、冷時~室温時水で抽出して得られたもの、又は除菌後、冷時~室温時濃縮したもの,又はこれを含水エタノールで処理して得られたものである。
3.用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
Bacillus sp.由来の本酵素製品(220 unit/ml、B1ue Value法、pH5.5)の急性経口LD50はマウス及びラットで20ml/kg超である。1)
(2)反復投与試験
Bacillus macerans由来の本酵素製品(690 unit/ml、B1ue Value 法、pH5.5)を用いたSD ラットの強制経口(原液、5倍希釈液をそれぞれ 10ml/kg)投与による3ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は原液10ml/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
Bacillus sp.由来の本酵素製品の細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される3)。
(引用文献)
1. Bacillus sp. 産生 CGTase (K-CGTase) 原液の安全性試験, マウスおよびラットにおける経口急性毒性試験, 昭和61年8月, 社内データ (未公表)
2. Bacillus macerans 産生 CGTase のラットにおける亜急性毒性試験, 昭和61年5月, 社内データ (未公表)
3. Bacillus sp. 産生 CGTase (K-CGTase) 原液の安全性試験,微生物を用いた変異原性試験, 昭和61年8月, 社内データ (未公表)
シタン色素
1.食品添加物名
シタン色素 (Sandalwood red)
2.基原・製法・本質
マメ科シタン (Pterocarpus santalinus LINNE)の幹枝より、水、熱時プロピレングリコール又は温時エタノールで抽出して得られたものである。主色素はサンタリンである。紫赤色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(1.25、2.5、5%)投与による 90 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる1)。
(2)変異原性試験
哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、陰性と判断される2)。
(引用文献)
1.シタン色素のラットを用いた3ヶ月の経口投与による亜急性毒性試験, 1992年6月社内データ (未公表)
2.石館 基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その6) -昭和59年度厚生省試験研究による-, トキシコロジーフォーラム, 8(6), 705-708, 1985
ステビア抽出物
1.食品添加物名
ステビア抽出物 (Stevia extract)
2.基原・製法・本質
キク科ステビア (Stevia rebaudiana BERTONI)の葉より、室温時~熱時水で抽出し、精製して得られたものである。主甘味成分はステビオール配糖体(ステビオシド及びレバウジオシド等)である。
3.主な用途
甘味料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
ステビオシドの急性経口LD50はラットで 8,200mg/kg超、マウスで 8,200mg/kg超である1),2)。
ステビオシド精製エキス(ステビオシド含量 41.4%)の急性経口LD50は、マウスで42,000mg/kg超である1)。
ステビオシド粗結晶(ステオビシド含量 93~95%)の急性経口LD50は、マウスで15,000mg/kg超である3)。
(2)反復投与/発がん性試験
F344ラットを用いたステビオシドの混餌(2.5、5%)投与による104週間の反復投与/発がん性試験において、投与量に相関した体重増加抑制、腎臓及び卵巣重量の減少が認められたが、カロリー制限による影響と思われ、毒性学的影響とは考えられない発がん性は認められていない4)。
F344 ラットを用いたステビオシドの混餌(0.31、0.62、1.25、2.5、5.0%)投与による 13 週間の反復投与試験において、2.5%以上の投与群の雌及び5%投与群の雄で体重増加抑制が認められている。無毒性量は0.6g/kg/dayと考えられる5)。
Wistar ラットを用いたステビオシドの強制経口(100、500、2,500mg/kg)投与による1ヶ月間の反復投与試験において、2,500mg/kg 投与群で肝臓重量の減少、肝細胞の肥大、脾臓のリンパ濾胞の腫大が認められている。無毒性量は500mg/kg/dayと考えられる。2)
F344 ラットを用いたステビア抽出物(ステビオシド:74.54%、レバウディオシドA:16.27%)の混餌(0.1、0.3、1.0%)投与による22ケ月間(雄)/24ヶ月間(雌)の反復投与毒性試験において、6ヶ月目に尿検査、血液学的検査、血清生化学的検査及び臓器重量に軽微な変化が認められているが、12ヶ月以降では毒性学的影響は消失している。また、検体投与に起因する腫瘍発生は認められていない6)。無毒性量は550mg/kg/dayと考えられる。
(3)催奇形性試験/繁殖試験
Wistar ラットを用いた妊娠6~15 日間の強制経口(250、500、1000mg/kg)投与による催奇形試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められておらず、催奇形性も認められていない。無毒性量は1,000mg/kg/dayと考えられる12)。
SDラットにステビア粗エキス、精製エキス、又はステビオサイド結晶を21日間混餌(0.69、0.35、0.15%)投与した後、雌雄を交配させて妊娠への影響を調べた結果、妊娠率、出産仔数、親動物及び新生仔の体重などに異常は認められない3)。
Wistarラットを用いたステビオシドの混餌(0.15、0.75、3.0%)投与による妊娠前及び妊娠初期投与試験を行った。雄交配前 60 日間、雌交配前 14 日間、交配後7日間の投与を続けた結果、交配率、妊娠率、胎児に異常は認められていない14)。
Wistar ラットを用いてステビアの乾葉の熱水抽出液を飲水として1匹あたり15~20g/日投与により 12 日間摂取させ妊娠抑制作用を調べた結果、出産率及び出産仔数への影響は認められていない15)。
ゴールデンハムスターを用いたステビオシドの強制経口(0.5、1.0、2.5g/kg)投与による3世代の繁殖試験を行った結果、成長、生殖機能及び生殖器の組織学的検査において異常は認められていない17)。
Wistar ラットを用いたステビオシド(100、500、2,000mg/kg)及びステビア乾葉エキス(700、2,100mg/kg)の強制経口投与による妊娠前及び妊娠初期投与試験を行った。雄交配前約60日間、雌交配前14日間及び交配後7日間の投与を続けた結果、ステビオシド2,000mg/kg投与群において妊娠率の軽度の低下が認められている。ステビオシドの他の用量の投与群及びステビア乾葉エキス投与群では、妊娠率について対照群との間に有意差は認められていない。いずれの検体も性周期、交配率、胎児への影響は認められていない18)。
なお、雌ラットにステビアの葉及び茎の抽出物の5%液10ml を 12 日間摂取させた後、無処置の雄と交配させて雌受胎後へ及ぼす影響を調べた結果、受胎率及び出産仔数の低下が認められたとの報告もある13)。
(4)変異原性試験
純度 50%ステビオシドについての細菌を用いた復帰変異試験では陽性との報告7)があるが、純度50%、85%のステビオシドでは陰性の結果が得られている 7),8),9),10)。ステビア結晶(95~98%)についての細菌を用いた DNA修復試験では陰性の結果が得られている8)。また、純度85%ステビオシドについての細菌を用いた前進突然変異試験、DNA 損傷試験(Umu test)及び哺乳培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、いずれも陰性と判断される9),10)。
ステビオシドのラット腸内細菌での代謝産物ステビオールは、細菌を用いた前進突然変異試験、細菌を用いた DNA 損傷試験及び哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験において、S9mix存在下で陽性であった9),11)。一方、ステビオールは細菌を用いた復帰変異試験、細菌を用いたDNA修復試験並びにマウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と判断される9),11)。
(引用文献)
1.ステビア懇話会, ステビオサイドの安全性について, 1978 (昭和53年)
2.片山脩ほか: ステビア実用化と研究開発データ, アイエスユー(株), 1976
3.明石春雄ほか: ステビアの乾葉抽出物の安全性について, -各種毒性試験結果の報告- 食品工業, 1975. 10月
4.K. TOYODA et al: Assessment of the Carcinogenicity of Stevioside in F344 Rats, Food and Chemical Toxicology, 35(6), 597-603, 1997
5.阿瀬善也ほか: Steviosideのラットを用いた亜慢性毒性試験, 衛生試験所報告, 109, 48ページ, 1991
6.A. Yamada et al: Chronic Toxicity Study of Dietary Stevia Extracts in Fisher 344 Rats, 食品衛生学雑誌, 26(2), 169-183, 1985
7.石館 基ほか: 食品添加物の変異原性試験成績, -昭和54年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ(第一回)-, 変異原と毒性, 第12集, 82-90, 1980
8.奥村昌也ほか: ステビオサイドの修復試験および復帰変異試験, 食品衛生学雑誌, 19(5), 486-490, 1978
9.松井道子ほか: Steviolによる突然変異誘発機構に関する研究, -Southernblotting法による解析-, 衛生試験所報告, 第107号, 83-87, 平成元年 (1989)
10.松井道子ほか: 日本環境変異研究, Vol.8(3), 65 (1985)
11.義平邦利ほか: ステビオサイドの最近の話題, トキシコロジーフォーラム, Vol.10(3), 281-289, 1987
12.宇佐見 誠: ステビオサイドのラットを用いた催奇形性試験, 衛生試験所報告, 113, 31ページ, 1995
13.G. M. Planas: Contraceptive Properties of Stevia rebaudiana, Science, 162, 1007, 1968
14.森 規子ほか: ステビオサイドのラットによる妊娠前および妊娠初期混餌投与試験,食品衛生学雑誌, 22(5), 409-414, 1981
15.ステビア工業会, ラットにおけるステビア乾葉抽出物の妊娠抑制効果について, 1996. 6
16.L. Xili, et al., Chronic oral toxicity and carcinogenicity study of stevioside in Rats, Fd Chem. Toxic. Vol.30, No.11, p.957-965, 1992
17.V. Yodyingyuad, et al., Effect of stevioside on growth and reproduction, Human Reproduction, Vol.6, No.1, p.158-165 (1991)
18.新保幸太郎ほか、ステビア葉およびステビオサイドの妊娠試験, 1978
スピルリナ色素
1.食品添加物名
スピルリナ色素 (Spirulina colour)
2.基原・製法・本質
ユレモ科スピルリナ(Spirulina platensis (NORD.) GEITLER)の全藻より、室温時水で抽出して得られたものである。主色素はフィコシアニンである。青色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで5,000mg/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(1%)投与による12ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は 0.5g/kg/dayと考えられる3)。
スピルリナ乾燥藻を用いたWistar ラットの3世代試験で得られた第3世代第二産子(F3b)にさらに13週間反復(スピルリナ乾燥藻10、20、30%)投与した試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量はスピルリナ乾燥藻として15g/kg/dayと考えられる4)。
(3)催奇形性試験
CD ラットを用いた混餌(スピルリナ乾燥藻 10、20、30%)投与による催奇形性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量はスピルリナ乾燥藻として15g/kg/dayと考えられる10)。
(4)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験5),6)、培養細胞を用いた染色体異常試験7)、細菌を用いたDNA修復試験6)、マウス骨髄細胞を用いた小核試験8)、及びラットを用いた優性致死試験9)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.リナブルーAの急性毒性試験, 1977, 社内データ (未公表)
2.清水充ら: 化学的合成品以外の食品添加物のマウス及びラットにおける急性毒性試験について, 生活衛生, 37(5), 215, 1993
3.リナブルーAの慢性毒性試験, 1979, 社内データ (未公表)
4.Chamorro G.A.: Short-term toxicity Study of SPIRULINA in F3b Generation Rats, J. Toxicol. Clim. Exp. 8(3), 1988
5.リナブルーA (Linablue A)の突然変異誘起性試験, 社内データ (未公表)
6.蜂谷紀之ら: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要 (昭和56-58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
7.石館 基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その6) -昭和59年度厚生省試験研究による-, トキシコロジーフォーラム, 8(6), 705-708, 1985
8.厚生省平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験, 小核試験報告書
9.SALAZAR M el al: Study of Lethal Dominant of Spirulina maxima in Male Rats, Sci. Aliments, 10(3), 1990
10.Chamorro G.: Teratogenic Study of Spirulina in Rats, Arch Latinoam Nutr l989
L-ソルボース
1.食品添加物名
L-ソルボース (L-Sorbose)
2.基原・製法・本質
グルコン酸菌(Gluconobacter)又は酢酸菌(Acetobacter)によるD-グルコース又はその還元物質の発酵培養液より、分離して得られたものである。成分は L-ソルボースである。
3.主な用途
甘味料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで4,000mg/kg/day超である1)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた強制経口(1,500、3,000、4,500mg/kg)投与による 26 週間の反復投与試験において、3,000mg/kg以上の投与群で続灘及び軟便、4,500mg/kg投与群で体重増加抑制が認められている。無毒性量は1,500mg/kg/dayと考えられる2)。
Bethesda black ラット及びC57BLマウスを用いた2年間の皮下(25%水溶液、2ml/ラット、0.5ml/マウス週2回)投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び腰嬢発生は認められていない3)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される4)。
(引用文献)
1.ソルボース安全性確認試験報告書, 社内データ (未公表)
2.新規甘味料 (Sorbose)のラットにおける 26 週間反復経口投与毒性試験報告書, 1991. 3, 社内データ (未公表)
3.N. C. Hueper: Are Sugars Carcinogens? An Experimental Study, Cancer Research, 25, 440, 1965
4.変異原性試験報告書, 社内データ (未公表)
タマネギ色素
1.食品添加物名
タマネギ色素 (Onion colour)
2.基原・製法・本質
ユリ科タマネギ(Allium cepa LINNE)のりん茎より、温時水若しくは含水エタノールで抽出して得られたもの、又は温時弱アルカリ性水溶液で摘出し、中和して得られたものである。主色素はクエルセチンである。黄色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで 2,000mg/kg超、ラットで5,000mg/kg超と考えられる1),2),3)。
(2)反復投与試験
B6C3F1マウスを用いた混餌(0.3、0.6、1.25、2.5、5%)投与による90日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は10g/kg/dayと考えられる1)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験4)、マウスを用いた小核試験5)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.Toshihiro Kojima T. et al: Acute and Subacute Toxjcity Test of on Ion Coat, Natural Colorant Extracted from Onion (Allium cepa L.) in (C57BL/6XC3H) F1 Mice, J. Toxi. Envi. Health, 38, 89 (1993)
2.タマネギ色素の急性毒性試験, 1991, 社内データ (未公表)
3.単回投与毒性試験, 1988, 社内データ (未公表)
4.微生物を用いる突然変異試験, 1986, 社内データ (未公表)
5.タマネギ色素のマウスを用いる小核試験, 1997, 社内データ (未公表)
タマリンドシードガム
1.食品添加物名
タマリンドシードガム(Tamarind seed gum)
2.基原・製法・本質
マメ科タマリンド(Tamarindus indica LINNE)の種子の胚乳部分より、温時~熱時水若しくはアルカリ性水溶液で抽出して得られたもの又はこれを酵素(β-ガラクトシダーゼ)処理したものである。主成分は多糠類である。
3.主な用途
増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラットで5.0g/kg超、マウスで2.0g/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与/発がん性試験
B6C3F1マウスを用いた混餌(1.25、5.0%)投与による78週間の反復投与試験において、5.0%投与群で体重増加抑制及び肝重量の増加が認められているが、検体投与に起因する病理学的変化はみられていない。発がん性は認められていない。無毒性量は1.9g/kg/day都考えられる3)。
SDラットを用いた混餌(4、8、12%)投与による24ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。発がん性は認められていない。無毒性量は6g/kg/dayと考えられる4)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験5)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験6)及び細菌を用いたDNA修復試験7)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.蜂谷紀之ら: 天然添加物の急性及び各種変異原性試験成績の概要 (昭和56~58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
2.滝澤行雄: 平成5年度食品添加物安全性再評価等の試験, 天然添加物の急性毒性に関する研究, 平成6年
3.M. Sano et al.: Lack of Carcinogenicity of Tamarind Seed Polysaccharide in B6C3F1 Mice, Food and Chemical Toxicology, 34, 463-467, 1996
4.タマリンド種子多糖類のラットにおける2年間長期毒性試験, J. Toxic. Sci., 3, 163-192, 1978
5.宮部正樹: 平成5年度食品添加物安全性評価試験, 変異原性 (第1次) Ames法
6.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その6) 昭和59年度厚生省試験研究による, トキシコロジーフォーラム, 8(6), 705-708, 1985
7.栗田年代: 平成5年度食品添加物安全性再評価等の試験検査, 変異原性試験・第1次試験; Rec-assay法
チャ乾留物
1.食品添加物名
チャ乾留物 (Tea dry distillate)
2.基原・製法・本質
ツバキ科チャ(Camellia sinensis O.KZE.)の葉より製した茶を、乾留して得られたものである。有効成分は特定できないが、アミノ酸、カフェイン、タンニン、カテキン類を含む。
3.主な用途
製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラットで32g/kg超と考えられる l)。
(2)反復投与試験
Wistar ラットを用いた強制経口(2.5、5.0、10.0g/kg)投与による35 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は10g/kgと考えられる2)。
Wistarラットを用いた飲料水(1.25、2.5、5%)の自由摂取投与による52週間の反復投与試験において、5%投与群で白血球数の増加が認められている。無毒性量は 2.5%(雄1.3~4.3g/kg、雌2.0~4.9g/kg)と考えられる。3)
(3)生殖発生毒性試験
SD ラットを用いた強制経口(植物成分 20%の液剤として、2.5、5、10ml/kg)投与による妊娠前及び妊娠初期投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は10ml/kg/dayと考えられる5)。
SD ラットを用いた強制経口(植物成分 20%の液剤として、2.5、5、10ml/kg)投与による周産期及び授乳期投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められない。無毒性量は10ml/kg/dayと考えられる6)。
SD ラットを用いた強制経口(植物成分 20%の液剤として、2.5、5、10ml/kg)投与による胎児の器官形成期投与試験において、10ml/kg 投与群に母動物の有意な摂館量の減少及びF1次世代動物に有意な受胎率の低下が認められている。無毒性量は5ml/kg/dayと考えられる7)。
(4)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される4)。
(引用文献)
1.FS-500M (フレッシュシライマツ)の急性毒性試験-ラット経口投与による検討-, 基礎と臨床, 17(4), 29-31, 1983
2.FS-500Mのラットにおける亜急性毒性試験-35日間連続経口投与-, 1982, 社内データ (未公表)
3.フレッシュシライマツのラットにおける慢性毒性試験-1年間(52 週間)連続経口投与-, 1987, 社内データ (未公表)
4.FS-500M (フレッシュシライマツ)の微生物による変異原性試験, 1980, 社内データ(未公表)
5.フレッシュシライマツの生殖試験-ラットにおける妊娠前及び妊娠初期投与試験-, 1986 社内データ (未公表)
6.フレッシュシライマツの生殖試験-ラットにおける周産期及び授乳期投与試験-, 1986, 社内データ (未公表)
7.フレッシュシライマツの生殖試験-ラットにおける胎児の器官形成期投与試験-, 1986, 社内データ (未公表)
ツヤプリシン(抽出物)
1.食品添加物名
ツヤプリシン (抽出物) (Thujaplicin (extract))
2.基原・製法・本質
ヒノキ科ヒバ(Thujopsis dolabrata SIEB. et ZUCC.)の幹枝又は株根より水蒸気蒸留して得られたものを、室温時アルカリ性水溶液で精油を除去し、中和後、ヘキサンで再結晶させた後、溶媒を除去したものである。主成分はツヤプリシン類である。
3.主な用途
保存料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
ヒノキチオールの急性経口LD50はマウスで399~504mg/kgと考えられる1), 2)。
(2)反復投与試験
ヒノキチオールナトリウムのマウスを用いた強制経口(1、5、10、50mg/kg)投与による6ヶ月間の反復投与試験において、10mg/kg 以上の投与群で副腎皮質の脂肪類粒の増加及び肝小葉の単核細胞浸潤が認められている。無毒性量は5mg/kg/dayと考えられる3)。
(3)変異原性試験
ヒノキチオールの細菌を用いた復帰変異試験の結果は陰性と判断される4)。細菌を用いたDNA修復試験では、-S9で 1.0mg/diskで陽性の結果が得られたが、+S9 では陰性となった4,5)。培養細胞を用いた染色体異常試験では、-S9で0.002mg/ml という低用量で染色体異常が誘発されたが、+S9 では 0.01mg/ml で陽性と判断される4)。マウスを用いた小核試験では、22.5~90.0mg/kg の用量で試験が行われ、結果は陰性と判断される6)。
(引用文献)
1.李淑玉: Hinokitiolの薬理学的研究, 新潟医学会雑誌 95(2), 1951
2.山田明男: 天然添加物安全性試験, ヒノキチオール, 茶抽出物, e-ポリリジンの急性毒性試験, 平成元年度厚生省委託試験報告, 大阪市立環境科学研究所
3.中野敏: 不飽和7員環化合物の実験的並びに臨床的研究, 新潟医学会雑誌, 第73巻補冊第1号, 昭和34年
4.祖父尼俊雄ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その11), 変異原性試験, 2(1), 19-28, 1993
5.上野清一、石崎睦雄: 天然添加物のDNA損傷活性 (その6), 食品衛生学雑誌, 33(4), 378-382, 1992
6.滝澤行雄: 平成3年度食品安全性再評価等の試験 (厚生省委託), 天然添加物の小核誘発性に関する研究, 秋田大学
5'-デアミナーゼ
1.食品添加物名
5'-デアミナーゼ (5'-Deaminase)
2.基原・製法・本質
糸状菌(Aspergillus mellus, Aspergillus oryzae)の培養液より、冷時~室温時水で抽出して得られたもの、又は冷時~室温時濃縮後、冷時エタノールで処理して得られたものである。
3.用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで25,000mg/kg超、ラットで15,000mg/kg超である1)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(500、2,000、8,000mg/kg)投与による35 日間の反復投与試験において、8,000mg/kg 投与群で顎下腺重量の増加、また、同群の雌で血中尿素窒素の増加及び卵巣重量の減少が認められている。無毒性量は2,000mg/kgと考えられる1)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験2)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験2)、細菌を用いたDNA修復試験3)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.デアミザイムの急性および亜急性毒性試験, 1992. 3, 社内データ (未公表)
2.石館 基ほか: 食品添加物の変異原試験成績 (その5), 昭和58年度厚生省試験研究による, トキシコロジーフォーラム, Vol.7(6), 634-643, 1984
3.蜂谷紀之ほか: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要, トキシコロジーフォーラム, Vol.8(1), 91-105, 1985
デキストラナーゼ
1.食品添加物名
デキストラナーゼ (Dextranase)
2.基原・製法・本質
糸状菌 (Chaetomium erraticum, Chaetomium gracile, Penicillium lilacinum)の培養液より、冷時~室温時水若しくは酸性水溶液で抽出して得られたもの、除菌後、冷時~室温時濃縮したもの、又は冷時エタノールで処理して得られたものである。
3.用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
1,500,000unit/gの原末を用いた急性経口LD50はマウスで8,260~8,610mg/kg、ラットで4,000mg/kg超である1)。
2,290,000unit/gの原末を用いた急性経口LD50はラットで2,000mg/kg超である2),3) 。
63,000unit/mlの原液を用いた急性経口LD50はマウス及びラットで 20ml/kg 超である2),4) 。
(2)反復投与試験
Wistar-Imamichiラットを用いた強制経口(0.5、5.0、50、500、1,000mg/kg、1,500,000unit/g)投与による 26週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は1,000mg/kg超である5)。
SDラットを用いた強制経口(500、1,000、2,000mg/kg、2,290,000unit/g)投与による90 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2,000mg/kg/dayと考えられる2),6) 。
(3)催奇形性試験 (胎児の器官形成期投与試験)
Wistar-Imamichi ラットを用いた強制経口(80、800、2,000mg/kg、1,500,000unit/g)投与による胎児の器官形成期投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2,000mg/kg/dayと考えられる10)。
(4)変異原性試験
細菌を用いたDNA修復試験、細菌を用いた復帰変異試験、細菌を用いたマウスにおける宿主経由試験の結果は、いずれも陰性と判断される7)。Chaetomium erraticum由来酵素(2,290,000unit/g)8)及びのChaetomium erraticum由来酵素(液状)9)の細菌を用いた復帰変異試験の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.デキストラナーゼのマウス、ラットに対する急性毒性試験, 社内データ (未公表)
2.デキストラナーゼ試験方法
3.Chaetomium erraticum産生デキストラナーゼの安全性試験 (1) ラットを用いた単回投与毒性試験, 1990. 10, 社内データ (未公表)
4.デキストラナーゼL原液の急性毒性試験,-マウスおよびラットにおける経口急性毒性試験, 昭和61. 2, 社内データ (未公表)
5.デキストラナーゼのラットに対する毒性, 経口投与による5週間連続投与ならびに26週間連続投与, 社内データ (未公表)
6.Chaetomium erraticum産生デキストラナーゼの安全性試験 (4), デキストラナーゼ原末のラットを用いた90日経口投与毒性試験, 1992. 5, 社内データ (未公表)
7.Dextranaseの細菌に於ける突然変異誘起性試験, 社内データ (未公表)
8.Chaetomium erraticum産生デキストラナーゼの安全性試験 (2) 微生物を用いる変異原性試験, 1990. 12, 社内データ (未公表)
9.Chaetomium erraticum産生デキストラナーゼLの安全性試験, 微生物を用いた変異原性試験, 昭和61. 7, 社内データ (未公表)
10.Dextranaseの生殖試験, ラットに対する胎児の器官形成期投与試験, 社内データ (未公表)
トランスグルタミナーゼ
1.食品添加物名
トランスグルタミナーゼ (Transglutaminase)
2.基原・製法・本質
動物の肝臓より、又は放線菌(Streptomyces, Streptoverticillim mobaraense)若しくは細菌(Bacillus)の培養液より、室温時水で抽出後、冷時エタノールで処理して得られたものである。
3.主な用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラットで2,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(0.2、1.0、5.0%)投与による3ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験3)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験4)、マウスを用いた小核試験5)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.HBTGのラットを用いた経口投与による単回投与毒性試験, 1990. 7. 社内データ (未公表)
2.HBTGのラットを用いた混餌投与による13週間反復投与毒性試験および5週間回復試験, 1991. 1., 社内データ (未公表)
3.酵素タンパクの細菌を用いる復帰突然変異試験, 1990. 11., 社内データ (未公表)
4.酵素タンパクの哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験, 1991. 3., 社内データ (未公表)
5.酵素タンパクのげっ歯類を用いる小核試験, 1991. 3., 社内データ (未公表)
ニストース
1.食品添加物名
ニストース (Nystose)
2.基原・製法・本質
ショ糖を酵素 (フルクトシルトランスフェラーゼ)処理した後、分離して得られたものである。成分はニストースである。
3.主な用途
製造用剤
4.安全性試験成績の概要(注)
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラット及びマウスで9,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与/発がん性試験
Wistar ラットを用いた強制経口(1,500、3,000、4,500mg/kg)投与による6週間の反復投与試験において、3,000mg/kg 以上の投与群で軽微な体重増加抑制及び盲腸膨満が認められているが、この変化は検体が難吸収性の糖質であることによると考えられる。無毒性量は4,500mg/kg/dayと考えられる1)。
Wistarラットを用いた混餌(基礎餌中のショ糖5%或いはデンプン5%を除いたものに検体を5%、10%添加)投与による6週間の反復投与試験において、体重増加抑制、血清コレステロールの低下、盲腸膨満が認められたが、これらは検体が難吸収性の糖質であることによると考えられる。無毒性量は5,000mg/kg/dayと考えられる1)。
F344ラットを用いた混餌(0.8、2、5%)投与による104週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び発がん性は認められていない。無毒性量は2,500mg/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験3)、哺乳類培養細胞を用いた不定期 DNA 合成試験4)、及びマウスリンフォーマ細胞を用いた TK遺伝子座の突然変異試験5)の結果は、S9 mixの有無にかかわらずいずれも陰性と判断される。
(注)試験に供した試料は、ケストース 39%、ニストース 46%、1-フルクトフラノシルニストース10%である。
(引用文献)
1.武田植人、新里鉄太郎: ネオシュガーの安全性試験, ネオシュガー研究会報告, 17-27, 1982
2.井上博之: ネオシュガーの長期安全性試験, ネオシュガー研究会報告, 45-59, 1988
3.Microbial metabolic activation test to assess the potential mutagenic effect of Neosugar, May l986, 社内データ (未公表)
4.Autoradiographic assessment of unscheduled DNA repair synthesis in mammalian cells after exposure to Neosuger, Nov. 1986, 社内データ (未公表)
5.An assessment of the mutagenic potential of Neosugar using the mouse lymphoma TK locus assay, Jan. 1987, 社内データ (未公表)
ヒアルロン酸
1.食品添加物名
ヒアルロン酸 (Hyaluronic acid)
2.基源・製法・本質
鶏冠より、微温時~温時水、アルカリ性水溶液若しくは酸性水溶液で抽出し、エタノール若しくは含水エタノールで処理、若しくは酵素処理した後エタノール若しくは含水エタノールで処理し、精製して得られたもの、又は細菌(Streptococcus zooepidemicus)の培養液を、冷時~温時、除菌し、エタノール若しくは含水エタノールで処理し、精製して得られたものである。成分はヒアルロン酸である。
3.主な用途
製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウス、ラット及びウサギでそれぞれ 2,400mg/kg 超、800mg/kg超、1,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた腹腔内(15、30、60mg/kg)投与による3ヶ月間の反復投与試験において、60 mg/kg投与群の雄で総蛋白の減少、30及び60mg/kg投与群の雄で赤血球の減少とMCH、MCVの上昇がみられたが、いずれも35 日間の休薬により回復した。腹腔内投与による無毒性量は15mg/kg/dayと考えられる2)。
ビーグル犬を用いた膝関節腔内(2、6、12mg/kg)週2回投与による6ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。膝関節腔内投与による無毒性量は12mg/kg/dayと考えられる3)。
(3)生殖発生毒性試験
SDラットを用いた皮下(8、20、50mg/kg)投与による胎児の器官形成期投与試験、妊娠前及び妊娠初期投与試験、周産期及び授乳期投与試験並びにニュージーランドホワイトウサギを用いた皮下(8、20、50mg/kg)投与による胎児の器官形成期投与試験のいずれにおいても、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量はいずれの試験においても50mg/kg/dayと考えられる6),7),8),9)。
(4)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験4)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験4)及びマウスを用いた小核試験5)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(5)その他の毒性試験
マウス、モルモットを用いた抗原性試験において、PCA反応、能動全身性アナフィラキシー反応はいずれも陰性と認められている10)。
(引用文献)
1.長野聖ら: Sodium Hyaluronate (SPH)の急性毒性試験, 薬理と治療, 2(12), 37-45, 1984
2.長谷川隆司ら: Sodium Hyaluronate (SPH)のラットにおける3ヶ月間腹腔内投与による亜急性毒性試験および回復試験, 応用薬理, 28(6), 1021-40, 1975
3.三好幸二ら: Sodium Hyaluronate (SPH)のビーグル犬における6ヶ月間膝関節腔内投与による慢性毒性試験および回復試験(1)全身所見, 応用薬理, 29(1), 49-81, 1985
4.大西端男ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の変異原性試験, 薬理と治療, 20(3), 65-72, 1992
5.有賀文彦ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)のマウスを用いる小核試験, 薬理と治療, 20(3), 73-75, 1992
6.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(1)‐ラットにおける皮下投与時の胎児の器官形成期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 11-26, 1992
7.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(2)‐ラットにおける皮下投与時の妊娠前および妊娠初期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 27-35, 1992
8.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(3)‐ラットにおける皮下投与時の周産期および授乳期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 37‐50, 1992
9.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(4)‐ウサギにおける皮下投与時の器官形成期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 51-58, 1992
10.竹本 稔ら: Sodium Hyaluronate (SH)の抗原性試験, 薬理と治療, 20(3), 59-64, 1992
ヒマワリ種子抽出物
1.食品添加物名
ヒマワリ種子抽出物 (Sunflower seed extract)
2.基源・製法・本質
キク科ヒマワリ(Helianthus annuus LINNE)の種子又は種子の搾油相より、熱時水又は含水エタノールで抽出して得られたものである。有効成分はインクロロゲン酸及びクロロゲン酸である。
3.主な用途
酸化防止剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで2,000mg/kg超である1)。
(2)反復投与試験
F344 ラットを用いた混餌(1%)投与による8週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は 0.5g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される3)。
(引用文献)
1.ヒマワリ種子抽出物の急性毒性試験, 1990, 社内データ (未公表)
2.ヒマワリ種子抽出物の亜急性毒性試験, 1991, 社内データ (未公表)
3.ヒマワリ種子抽出物の変異原性試験, 1990, 社内データ (未公表)
フィチン酸
1.食品添加物名
フィチン酸(Phytic acid)
2.基原・製法・本質
イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)の種子より得られた米ぬか又はイネ科トウモロコシ(Zea mays LINNE)の種子より、室温時水又は酸性水溶液で抽出し、精製して得られたものである。主成分はイノシトールヘキサリン酸である。
3.主な用途
酸味料、製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで0.9g/kg、ラットで0.41g/kgと考えられる1),2)。
(2)反復投与/発がん性試験
F344 ラットを用いた飲水(0.6、1.25、2.5、5.0、10%)投与による 12週間の反復投与試験において、10%投与群の全例、5.0%投与群の雄全例及び雌1例が試験終了前に死亡、1.25、2.5%投与群では体重増加抑制が認められた。無毒性量は 300mg/kgと考えられる3)。
F344ラットを用いた飲水(1.25、2.5%)投与による100~108週の発がん性試験において、体重増加抑制及び尿の潜血反応が両投与群で認められている。病理学的検査で腎孟の過形成が両投与群の雄にみられ、腎孟乳頭腫が投与群の少数例(雄 2.5%群 3/57、雌 2.5%群 4/55、雌 1.25%群 3/58)に認められている。この腎孟乳頭腫の発生は、フィチン酸等キレート作用を有する物質を高用量長期間投与すると、ラットでは腎孟に石灰沈着が起き、この刺激による上皮の壊死と再生が腫瘍の発生を促すためであると考えられており、本試験において腎孟の乳頭種が認められた動物では、腎に石灰沈着あるいは乳頭壊死が観察されている。他の臓器には検体投与に起因する病理組織学的変化は認められていない4)。
(3)催奇形性試験
SDラットを用いた妊娠7日~17 日間の混餌(0.625、1.25、2.5%)投与による催奇形性試験において、催奇形性は認められていないが、2.5%投与群で母体に対する影響の二次的な影響によると考えられる骨格変異の頻度の増加が認められている。無毒性量は750mg/kg/dayと考えられる8)。
(4)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験5)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験5)、マウスを用いた小核試験6)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.藤谷知子: フィチン酸及びフィチン酸ナトリウムのマウスに対する急性毒性, 東京都立衛生研究所研究年報, 38, 368-370, 1987
2.北里大学公衆衛生学部教室, 急性試験成績報告書 (昭和43年9月)
3.市川久次: フィチン酸ならびにフィチン酸ナトリウムのラットにおける経口急性毒性, 東京都立衛生研究所研究年報, (38), 371-376, 1987
4.Y. Hiasa, Y. Kitahori, J. Morimoto, N.Konishi, S. Nakaoka, and H. Nishioka: Carcinogenicity study in rats of phytic acid 'Daiichi', a natural food additive, Food Chem. Toxicol. 30(2), 117-125, 1992
5.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その2), 変異原と毒性, 4(6), 80-89, 1981
6.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その9), トキシコロジーフォーラム, 11(6), 663-669, 1988
7.松本信雄ら:昭和 62 年度食品添加物安全性再評価等の試験検査, フィチン酸の催奇形性に関する研究 (厚生省委託研究), 東京慈恵会医科大学
プルラナーゼ
1.食品添加物名
プルラナーゼ (Pullulanase)
2.基原・製法・本質
細菌(Bacillus, Klebsiella, Sulfolobus solfataricus)の培養液より、冷時~室温時水で抽出して得られたもので、除菌したもの、冷時~室温時濃縮したもの、冷時エタノール、含水エタノール若しくはアセトンで処理して得られたもの、又は硫酸アンモこウム等で分画した後、脱塩処理して得られたものである。
3.主な用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
Bacillus circulans 由来のプルラナーゼの急性経口LD50はラットで 3,000mg/kg超であるl)。
Bacillus sectorramus 由来のプルラナーゼの急性経口LD50はラット及びマウスで20ml(約9,000unit)/kg超である2),3)。
Klebsiella pneumoniae 由来のプルラナーゼの急性経口LD50はマウスで約210,000unit/kg、ラットで187,000unit/kg超である2),4)。
(2)反復投与試験
Bacillus circulans 由来のプルラナーゼのSDラットを用いた強制経口(200、600、2,000mg/kg)投与による 13週間反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2,000mg/kg/dayと考えられる5)。
Bacillus sectorramus 由来のプルラナーゼのSDラットを用いた強制経口(2.5、5.0、10.0ml/kg)投与による90日間の反復投与試験こおいて、10.0ml/kg投与群で流通の増加、甲状腺重量の減少、副腎重量の減少が認められている。無毒性量は 5.0ml(約2,250unit)/kg/dayと考えられる6)。
Klebsiella pneumoniae 由来のプルラナーゼのWisterラットを用いた混餌経口(3,750、7,500、15,000unit/kg)投与による 26 週間の反復投与試験において、15,000unit/kg投与群で体重増加抑制が認められている。無毒性量は7,500unit/kg/dayと考えられる4)。
(3)変異原性試験
Bacillus circulans 由来及びBacillus sectorramus 由来のプルラナーゼは細菌を用いた復帰変異試験でいずれも陰性と判断される7),8)。
(引用文献)
1.アミラックスのラットにおける単回強制経口投与毒性試験, 1992. 3, 社内データ (未公表)
2.DB-250 試験方法
3.Bacillus sectorramus 産生枝切り酵素(DB-1)原液の安全性試験, マウスおよびラットにおける経口急性毒性試験, 昭和62. 7, 社内データ (未公表)
4.Klebsiella pneumoniae 産生Pullulanaseの急性,亜急性および慢性毒性試験, 昭和50. 10, 社内データ (未公表)
5.アミラックスのラットにおける13週間反復経口投与毒性試験, 1992. 11, 社内データ (未公表)
6.Bacillus sectorramus 産生枝切り酵素(DB-1)原液の安全性試験, ラットにおける経口亜急性毒性試験, 昭和63.3, 社内データ (未公表)
7.アミラックスの細菌を用いる復帰突然変異試験, 1992. 10, 社内データ (未公表)
8.Bacillus sectorramus 産生枝切り酵素(DB-1)原液の安全性試験, 微生物を用いた変異原性試験, 昭和62. 5, 社内データ (未公表)
プルラン
1.食品添加物名
プルラン(Pullulan)
2.基源・製法・本質
黒酵母(Aureobasidium pullulans (DE BARY) ARN.)の培養液より、分離して得られた多糖類である。成分はプルランである。
3.主な用途
増粘安定剤、製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで14,300~24,100mg/kg超1),2)、ラットで5,000mg/kg超である3)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌(1、5、10%)投与による62週間の反復投与試験が行われているが、肺炎による死亡のため対照群の生存率が 50%を下回っており、評価し得る毒性学的所見は限定される。10%投与群で難吸収性糖質の投与によるものと考えられる盲腸重量の増加が認められている3)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験 4),5)、細菌を用いた DNA 修復試験3)、マウスを用いた小核試験6)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(4)その他
健康成人男性13人を対象とした分子量50,000のプルラン(10g/日)の 14 日間反復摂取後の血液生化学検査において、検査値の変化は認められていない7)。
(引用文献)
1.プルランの急性毒性試験, 昭和49年8月, 社内データ (未公表)
2.プルランの毒性試験, 昭和49年6月, 社内データ (未公表)
3.T. Kimolo, el al.: Safety studies of a novel starch, pullulan. Chronic toxicity in rats and bacterial mutagenicity, Food and Chemical Toxicology, 35, 323-329 (1997)
4.蜂谷紀之ほか: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要, トキシコロジーフォーラム, Vol.8(1), 91-105, 1985
5.プルランの突然変異誘発試験, 昭和53年3月, 社内データ (未公表)
6.石館 基ほか: 食品添加物の変異原試験成績 (その9), 昭和 62 年度厚生省試験研究による,トキシコロジーフォーラム, Vol.11(6), 663-669, 1988
7.米山 勝ほか: ヒトにおける水浴性多糖プルラン摂取の影響, 澱粉科学, 37(3), 123-127, 1990
へスペリジナーゼ
1.食品添加物名
へスペリジナーゼ(Hesperidinase)
2.基原・製法・本質
糸状菌(Aspergillus, Penicillium decumbens)の培養液より、冷時~室温時水で抽出し、冷時~室温時濃縮後、冷時エタノールで処理して得られたものである。
3.主な用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
へスペリジナーゼ(へスペリジナーゼ活性110unit/g)の急性経口LD50はマウスで40g/kg超、ラットで24g/kg超である1)。
(2)反復投与/発がん性試験
へスペリジナーゼ(へスペリジナーゼ活性110unit/g)のddYマウスを用いた混餌(0.4、2、10g/kg)投与による 35 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は10g/kgと考えられる1)。
へスペリジナーゼ(へスペリジナーゼ活性110unil/g)のSDラットを用いた混餌(0.4、2、10g/kg)投与による 35 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は10g/kgと考えられる1)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される2)。
(引用文献)
1.Hesperidinaseの急性・亜急性毒性試験, 1982, 社内データ (未公表)
2.Hesperidinaseの微生物を用いる変異原性試験, 1983, 社内データ (未公表)
べニコウジ黄色素
1.食品添加物名
べニコウジ黄色素 (Monascus yellow)
2.基源・製法・本質
子のう菌類べニコウジカビ(Monascus purpureus WENT.)の培養液を乾燥し、粉砕したものより、微温時弱塩酸酸性エタノールで抽出し、中和して得られたものである。主色素はキサントモナシン類である。黄色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで60g/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与/発がん性試験
SD ラットを用いた強制経口(1、2、4ml/kg)投与による 90 日間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は4ml/kgと考えられる2)。
(3)変異原性試験
べニコウジカビ抽出液(主色素はキサントモナシン類)の細菌を用いた復帰変異試験の結果は、陰性と判断される3)。
(引用文献)
1.マウスによる急性毒性試験, 1982, 社内データ (未公表)
2.ハイムーンイエローSのラットにおける90日間経口投与による亜急性毒性試験, 1988年, 社内データ (未公表)
3.ハイムーンイエローSの微生物を用いる変異原性試験, 1984, 社内データ (未公表)
べニコウジ色素
1.食品添加物名
べニコウジ色素 (MonasCus Colour)
2.基原・製法・本質
子のう菌類べニコウジカビ (Monascus pilosus K. SATO ex D. HAWKSWORTH et PITT, Monascus purpreus WENT.)の菌体より、室温時~微温時含水エタノール又は含水プロピレングリコールで抽出して得られたものである。主色素はモナスコルブリン及びアンカフラビン等である。赤色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで14g/kg超、ラットで5g/kg超であるl),2)。
(2)反復投与/発がん性試験
F344ラットを用いた混餌 (0.6、1.25、2.5、5、7%)投与による13週間の反復投与試験において、7%投与群で体重増加抑制、5%以上の投与群で腎細管上皮の壊死が認められている。無毒性量は1.25g/kgと考えられる3)。
F344 ラットを用いた混餌 (0、1.25、2.5%)投与による 108週間の発がん性試験において、検体投与に起因する腫傷の発生は認められていない4)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は陰性と判断されるが5,6)、1~200ml/plateという高用量の試験で陽性の結果が報告されている 7)。細菌を用いたDNA修復試験6),7),8)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、いずれも陰性と判断される9)。マウスを用いた小核試験では5g/kgという高用量まで試験が行われ, 結果は陰性と判断される10)。
(引用文献)
1.天然色素モナスレッドの急性毒性, 1973, 社内データ (未公表)
2.清水充ら: 大阪市立環境研, 化学的合成品以外の食品添加物のマウスおよびラットにおける急性経口毒性について, 生活衛生, 37, 215-220, 1993
3.日浅義夫: 紅麹色素のF344 ラットへの亜急性毒性試験報告, 厚生省委託試験 (平成3年度)
4.Y. Hiasa, et al., Lack of Carcinogenicity of Monascus Colour in Fisher 344 Rats Journal of Toxicological Pathology, 10(4), 187-192, 1997
5.アンカレッドSP500 の微生物を用いる変異原性試験, 1984, 社内データ (未公表)
6.古泉快夫ら: 紅麹菌産生色素の微生物に対する突然変異誘発性について, 新潟大学医療技術短期大学部, 新潟医学会雑誌, 95(7), 453, 1981
7.蜂谷紀之: 天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要, トキシコロジーフォーラム, vol.8(1), 91-105, 1985
8.黒田孝一ら: 食品添加物のレックアッセイ (第2報)-天然添加物49品目の成績-, 生活衛生, 33, 15-23, 1989
9.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績, 変異原と毒性, 第12集, 82-90, 1980
10.蜂谷紀之ら: 天然添加物についての小核試験, 変異原性試験, Vol.1(1), 13-17, 1992
ベニバナ黄色素
1.食品添加物名
ベニバナ黄色素 (Carthamus yellow)
2.基原・製法・本質
キク科ベニバナ (Carthamus tinctorius LINNE)の花より、室温時~微温時水で抽出して得られたものである。主色素はサフラーイエロー (サフロミン)類である。黄色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで 20g/kg 超1),5)、ラットで5g/kg 超2),3),4)と考えられる。
(2)反復投与/発がん性試験
SDラットを用いた混餌 (0.1、1、10%)投与による6ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は5g/kg/day と考えられる6)。
F344ラットを用いた混餌 (2.5、5%)投与による108週間の発がん性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。発がん性は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる7)。
(3)変異原性試験
ベニバナ抽出物及びベニバナ黄色素 (液体)は、細菌を用いた復帰変異試験で陰性の結果を示した4),8)が、粉末では 0.5~200mg/plate の用量で陽性の結果が報告されている4)。液体についての細菌を用いた DNA修復試験の結果は陰性と判断される4)。哺乳乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及びマウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と判断される9),10)。
(引用文献)
1.Carthamus Yellow, WHO Food Additive Series No.12, pp64 (21st), 1985
2.紅花黄色色素のラットを用いた経口急性毒性試験, 1980, 社内データ (未公表)
3.清水充ら: 化学的合成品以外の食品添加物のマウス及びラットにおける急性経口毒性について, 生活衛生, 37(5), 215-220, 1993
4.峰谷紀之ら: 天然添加物の急性毒性及び各種変異原性試験成績の概要, トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
5.サフロールエローの急性・亜急性毒性試験報告書, 1967, 社内データ (未公表)
6.黄色色素タナカラーY慢性毒性試験報告書, 1971, 社内データ (未公表)
7.松木尚ら: Lack of Carcinogenicity of Commercial Safflower Yellow in Fischer 344 Rats, J. Toxicol. Pathol., 1, 149-155, 1988
8.微生物を用いる突然変異試験報告書, 1986, 社内データ (未公表)
9.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績, 変異原と毒性, 第12集, 82-90, 1980
10.祖父尼俊雄ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その11), 変異原性試験, 2(1), 19-28, 1993
ペプチダーゼ
1.食品添加物名
ペプチダーゼ (Peptidase)
2.基原・製法・本質
糸状菌 (Aspergillus niger, Aspergillus oryzae, Aspergillus sojae, Rhizopus oryzae)若しくは細菌 (Bacillus, Lactococcus lactis)の培養液より、冷時~室温時水で抽出して得られたもの、除菌したもの、若しくはこれより、冷時エタノールで処理して得られたもの、又は培養液を固液分離、濃縮、ろ過して得られたものである。
3.主な用途
酵素
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
Rhizopus oryzae由来のペプチダーゼ (135,000unit/g)を用いたSDラットの強制経口 (500、1, 000、2, 000mg/kg)投与による90日間の反復投与試験において、2, 000mg/kg投与群の雄で体重増加抑制、摂餌量及び摂水量の減少、尿量減少並びにそれらに伴う尿浸透圧、尿クレアチニンの上昇が認められている。無毒性量は1, 000mg/kg/dayと考えられる1)。
(2)変異原性試験
Rhizopus oryzae 由来のペプチダーゼ (135,000unit/g)のマウスを用いた小核試験の結果は陰性と判断される2), 3)。
(引用文献)
1.Rhizopus oryzae産生ペプチダーゼRの安全性試験, ラットを用いた90 日間反復経口投与毒性試験, 1990.10, 社内データ (未公表)
2.ペプチダーゼR 試験方法
3.Rhizopus oryzae No.3545 産生ペプチダーゼ R の安全性試験 (V), マウスを用いた小核試験, 1990.10, 社内データ (未公表)
ε-ポリリシン
1.食品添加物名
ε-ポリリシン (e-Polylysine)
2.基原・製法・本質
放線菌 (Streptomyces albulus)の培養液より、イオン交換樹脂を用いて吸着、分離して得られたものである。成分はε-ポリリシンである。
3.主な用途
保存料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラット、マウスとも5,000mg/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与/発がん性試験
SDラットを用いた混餌 (0.2、1、5%)投与による3ケ月間の反復投与試験において、5%投与群で摂餌量の減少、体重増加抑制、血糖値、血中アルブミン、血中トリグリセライド及び血中リン脂質の減少、肝臓及び甲状腺の臓器重量の減少が認められている。また、リンパ球の減少を伴う白血球数の減少が認められている。無毒性量は0.5g/kg/ day と考えられる3)。SD ラットを用いた混餌 (0.2、0.65、2%)投与による 104 週間の慢性毒性/発がん性併合試験において、2%投与群で投与初期に体重増加抑制が認められたが、その後正常に回復している。発がん性は認められていない。無毒性量は1g/kg/dayと考えられる4)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験 5),6)、細菌を用いた DNA 修復試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験6)、マウスを用いた小核試験7)の結果は、いずれも陰性と判断される。
(引用文献)
1.ポリリジン製剤のラットにおける急性経口毒性試験, 1989 年, 社内データ (未公表)
2.山田明男: 天然添加物安全性試験 ヒノキチオール、茶抽出物、ε-ポリリジンの急性毒性試験, 平成元年度厚生省委託試験, 大阪市立環境科学研究所
3.石井実ら: ポリリジンパウダーのラットを用いた経餌経口投与による3ヶ月間反復投与毒性試験, 基礎と臨床, 27, 6, 2013-2033, 1993
4.福留明ら: ポリリジンパウダーのラットにおける経餌経口投与による慢性毒性/がん原性併合試験, 基礎と臨床, 29, 6, 1416-1434, 1995
5.変異原性試験報告書第2008号, 1988年, 社内データ (未公表)
6.祖父尼俊雄ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その12), 変異原性試験, 3(4), 206-215, 1994
7.滝澤行雄: 平成3年度食品安全性再評価等の試験 (厚生省委託), 天然添加物の小核誘発性に関する研究, 秋田大学
メナキノン (抽出物)
1.食品添加物名
メナキノン (抽出物) (Menaquinone (extract))
2.基原・製法・本質
細菌 (Arthrobacter nicotinae)の培養液より、室温時ブタノールで抽出後、室温時へキサンで抽出し、精製して得られたものである。主成分はメナキノン-4である。
3.主な用途
強化剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで5,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与/発がん」性試験
メナキノン (合成品)の Wistar ラットを用いた強制経口 (8、40、200mg/kg)投与による6ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は200mg/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
メナキノン (合成品)の細菌を用いた復帰変異試験、細菌を用いた DNA 修復試験の結果は、いずれも陰性と判断される3)。
(引用文献)
1.メナキノンのマウスによる急性毒性試験結果, 1991, 社内データ (未公表)
2.小川 正ら: Menaquinone-4 の毒性試験, (I)マウス、ラットおよびイヌにおける急性、亜急性及び慢性毒性試験, 応用薬理, 5(3), 445-459, 1971
3.餅田久利ら: メナテトレノン (K2) の変異原性試験, 薬物療法, 14(2), 55-58, 1981
ヤマモモ抽出物
1.食品添加物名
ヤマモモ抽出物 (Chinese bayberry exlract)
2.基原・製法・本質
ヤマモモ科ヤマモモ (Myrica rubra SIEBOLD)の果実、樹皮又は葉より、水、エタノール又はメタノールで抽出して得られたものである。成分としてミリシトリンを含む。
3.主な用途
酸化防止剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はラットで2,000mg/kg超と考えられる1)。
(2)反復投与試験
SDラットを用いた混餌 (1.25、2.5、5%)投与による3ケ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は陰性と判断される3)。
(引用文献)
1.ヤマモモ抽出物のラットにおける単回経口投与による急性毒性試験, 1993, 社内データ (未公表)
2.ヤマモモ抽出物のラットを用いた3か月の経口投与による亜急性毒性試験, 1994, 社内データ (未公表)
3.ヤマモモ抽出物の細菌を用いる復帰突然変異試験, 1993, 社内データ (未公表)
ルチン (抽出物)
1.食品添加物名
ルチン (抽出物) (Rutin (extract))
2.基原・製法・本質
アズキの全草、エンジュのつぼみ若しくは花又はソバの全草から得られた、ルチンを主成分とするものをいう。
3.主な用途
酸化防止剤、強化剤、着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与/発がん性試験
ACIラットを用いた540日間の混餌 (5%)投与及び850日間の混餌 (10%)投与並びにゴールデンハムスターを用いた 735 日間の混餌 (10%)投与において、発がん性は認められていない1),2)。
(2)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験の結果は陽性と判断される3)。細菌を用いた DNA 修復試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験、マウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と判断される3),4),5),6)。
(引用文献)
1.Hirono, I. et al.: Carcinogenicity examination of quercetin and rutin in ACI rats, Cancer Letters, 13, 15-21, 1981
2.Morino, K. et al.: Carcinogenicity test of quercetin and rutin in golden hamsters by oral administration, Carcinogenesis, 3(1), 93-97, 1982
3.峰谷紀之ら: II.天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要 (昭和56~58年度), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
4.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その6) 昭和59年度厚生省試験研究による, トキシコロジーフォーラム, 8(6), 705-708, 1985
5.石館基ら: I.食品添加物の変異原性試験成績 (その8)昭和 61年度厚生省試験研究による, トキシコロジーフォーラム, 10(6), 649-654, 1987
6.厚生省平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験, 小核試験 (第二次試験)に関する報告書
ワサビ抽出物
1.食品添加物名
ワサビ抽出物 (Wasabi extract)
2.基原・製法・本質
アブラナ科ワサビ (Wasabia japonica MATSUM.)の根茎又は葉より、エタノールで抽出して得られたものである。主成分はイソチオシアナートである。
3.主な用途
製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
アリルイソチオシアナートの急性経口LD50はラットで339mg/kgと考えられる1)。
(2)反復投与/発がん性試験
アリルイソチオシアナート (純度 93%以上)をコーン油に溶解して、強制経口投与による6試験が実施されている。
B6C3F1 マウスを用いた強制経口 (3、6、12、25、50mg/kg)投与による 14 日間の反復投与試験において、50mg/kg 投与群で前胃粘膜上皮及び膀胱粘膜上皮の肥厚が認められている2)。
F344/Nラットを用いた強制経口 (25、50、100、200、400mg/kg)投与による 14 日間の反復投与試験において、50mg/kg以上の投与群で胃粘膜上皮の肥厚が認められている2)。
B6C3F1 マウスを用いた強制経口 (1.5、3、6、12、25mg/kg)投与による 13週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は25mg/kg/dayと考えられる2)。
F344/N ラットを用いた強制経口 (1.5、3、6、12、25mg/kg)投与による 13 週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない2)。
B6C3F1 マウスを用いた強制経口 (12、25mg/kg)投与による 103週間の発がん性試験において、検体投与群で肝細胞の空胞形成の増加傾向が認められている。発がん性は認められていない2)。
F344/N ラットを用いた強制経口 (12、25mg/kg)投与による 103 週間の発がん性試験において、検体投与群の雄で低率ではあるが膀胱移行上皮乳頭腫の発生 (対照群 0/49、12mg/kg 群 2/49、25mg/kg 群 4/49)及び膀胱上皮の過形成 (対照群 0/49、12mg/kg群 1/49、25mg/kg 群 6/49)が認められている。アリルイソチオシアナートの大量長期投与による膀胱移行上皮乳頭腫の発生について、米国NTP (NalionaI Toxicology Program)は、検体が膀胱腫瘍発生に対して、イニシエターとしてではなく、プロモーターとして作用している可能性を示唆している2)。
なお、WHOの国際がん研究機関 (IARC)のモノグラフでは、グループ3 (ヒトへの発がん性に関して分類できないもの)とされている1)。
(3)催奇形性試験
アリルイソチオシアナートのCD-1マウスを用いた妊娠6~15日に強制経口 (0.3、1.3、6.0、28.0mg/kg)投与した催奇形性試験において、28.0mg/kg 投与群で死亡/吸収胚の増加が認められている。無毒性量は6.0mg/kg/dayと考えられる1)。アリルイソチオシアナートのWistarラットを用いた妊娠6~15日に強制経口 (0.2、0.85、4.0、18.5mg/kg)投与した催奇形性試験、ゴールデンハムスターを用いた妊娠6~10 日に強制経口 (0.2、1.1、5.1、23.8mg/kg)した催奇形性試験、及びDutch‐beltedウサギを用いた妊娠6~18 日に強制経口 (0.123、0.6、2.8、12.3mg/kg)投与した催奇形性試験において、いずれも検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。催奇形性は認められていない。無毒性量はそれぞれ 18.5、23.8、12.3mg/kg/dayと考えられる1)。
(4)変異原性試験
アリルイソチオシアナートの枯草菌を用いた DNA修復試験では陰性と報告されている1)が、大腸菌を用いた DNA修復試験では陽性の結果が報告されている3)。細菌を用いた復帰変異試験においては、プレート法では S9mix の有無にかかわらず陰性であるが、プレインキュベーション法では陽性の結果が得られ、S9mix の添加がその活性に影響を与えないという報告と、処理方法を変更して S9mix を添加すると活性がなくなるという報告がある l)。サルモネラ菌を用いた復帰変異試験では陽性結果が確認されている 3)。大腸菌を用いた復帰変異試験では S9mix 存在下でのみ陽性の結果が得られている1)。
アリルイソチオシアナートは植物根端細胞を用いた染色体異常試験及びショウジョウバエを用いた伴性劣性致死試験において陽性の結果が得られているが、後者では陰性との報告もある1)。哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験では、5nMで陽性の結果が得られており、S9mix の添加はその活性に影響を与えていない l)。一方、マウスを用いた優性致死試験では、19mg/kg の用量まで試験が行われているが、結果は陰性と判断されるl)。
アリルイソチオシアナートを 90%以上含むカラシ抽出物については、酵母を用いた宿主経由試験で130mg/kgまで投与したマウスを用いて陰性の結果を得ているl)。また、細菌を用いた復帰変異試験4)、ヒト培養細胞及びラット骨髄細胞 (130mg/kg まで投与)を用いた染色体異常試験、及びラットを用いた優性致死試験 (100mg/kg まで投与)では1)、いずれも陰性の結果を得ている。一方、小麦根端細胞を用いた染色体異常試験1)、ショウジョウバエを用いた伴性劣性致死試験1)及び枯草菌を用いた DNA修復試験4)の結果は、いずれも陽性であった。チャイニーズ・ハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験では構造異常の誘発は極めて弱く、擬陽性と判断されたが、倍数性細胞の誘発が明らかに認められた5)。
なお、ワサビのすりおろし物は大腸菌を用いた DNA 修復試験及びサルモネラ菌を用いた復帰変異試験で陰性であった 3)。ワサビの水抽出物には抗変異原作用が認められている6)。
(引用文献)
1.IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans vol.36, 55-68, 1985
2.Carcinogenesis bioassay of Allyl Isothiocyanate (CAS No.57-06-7) in F344/N rats and B6C3F1 mice (gavage study): National Toxicology Program Technical Report Series No.234, 1-142 (1982)
3.西山勝博ら: イソチオシアン酸アリルとワサビ・カラシ加工製品の変異原性とその機構, 第24回日本環境変異原学会講演要旨 演題 No.P-82, 1995
4.蜂谷 紀之ら: 天然添加物の急性毒性及び各種変異原性試験成績の概要 (昭和 56年-58年), 「トキシコロジーフォーラム」, Vol.8(1), 91-105, 1985
5.石館 基ら: 食品添加物の変異原性試験 (その4)-昭和 57年度厚生省試験研究による-, 「トキシコロジーフォーラム」, Vol.6(6), 95-102, 1983
6.竹村ひとみら: ワサビの変異原性抑制作用とそのメカニズム, 第24回日本環境変異原学会講演要旨演題 No.P-74, 1995