食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について
食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成27年厚生労働省告示第289号)が本日公布され、これにより食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部が改正されたところであるが、改正の内容等は下記のとおりであるので、その運用に遺憾なきよう取り計らわれたい。
また、適用期日までの間においても、関係者において当該改正を踏まえた取扱いがなされるよう、周知・指導について、特段の配慮をお願いする。
記
第1 改正の経緯
豚を含む獣畜及び家きんの肉や内臓については、食中毒の原因となる菌等が付着している可能性があるため、必要な加熱を行うよう、従来よりくり返し指導を行ってきた。一方、平成24年7月に牛レバーの生食用としての提供を禁止して以降、一部の飲食店において豚の肝臓を生食用として提供していることが判明したことから、平成24年10月4日付け食安監発1004第1号により、豚の肝臓を生食することの危険性の周知及び関係事業者に対して必要な加熱を行うよう再度指導してきたところである。
このような状況を踏まえ、平成25年8月から薬事・食品衛生審議会において食肉の生食に関する対応について検討を行ってきたところ、豚の食肉の生食については、飲食店等における提供実態があること、E型肝炎ウイルス(以下「HEV」という。)、食中毒菌及び寄生虫による危害要因があること、HEVや寄生虫は内部汚染であるため内部までの加熱以外のリスク低減策が考えられないこと等を踏まえ、公衆衛生上のリスクが特に高いことから生食用として提供を禁止する旨結論付けられた。このため、今般、国民の健康の保護を図るため、食品衛生法(昭和22年法律第233号。以下「法」という。)第11条第1項に基づく基準を設定し、豚の食肉を生食用として販売することを禁止するものである。
第2 改正の内容
法第11 条第1項の規定に基づき、食品、添加物等の規格基準(以下「規格基準」という。)第1食品の部B食品一般の製造、加工及び調理基準の項の9に、新たに豚の食肉の基準を追加し、以下のとおり改正したこと。
牛の肝臓又は豚の食肉は,飲食に供する際に加熱を要するものとして販売の用に供されなければならず,牛の肝臓又は豚の食肉を直接一般消費者に販売する場合は,その販売者は,飲食に供する際に牛の肝臓又は豚の食肉の中心部まで十分な加熱を要する等の必要な情報を一般消費者に提供しなければならない。ただし,第1 食品の部D 各条の項○ 食肉製品に規定する製品(以下9において「食肉製品」という。)を販売する場合については,この限りでない。
販売者は,直接一般消費者に販売することを目的に,牛の肝臓又は豚の食肉を使用して,食品を製造,加工又は調理する場合は,その食品の製造,加工又は調理の工程中において,牛の肝臓又は豚の食肉の中心部の温度を63℃で30 分間以上加熱するか,又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない。ただし,一般消費者が飲食に供する際に加熱することを前提として当該食品を販売する場合(以下9において「加
熱を前提として販売する場合」という。)又は食肉製品を販売する場合については,この限りでない。加熱を前提として販売する場合は,その販売者は,一般消費者が飲食に供する際に当該食品の中心部まで十分な加熱を要する等の必要な情報を一般消費者に提供しなければならない。
(傍線部が改正部分)
第3 適用期日
平成27年6月12日から適用すること。このため、適用日より前に製造、加工及び調理された豚の食肉であっても、適用日以降は、規格基準を満たさないものは販売等はできないこと。
第4 運用上の注意
1 規格基準でいう豚の食肉には、豚の内臓が含まれるものであること。
2 豚の食肉は、飲食に供する際に加熱を要するものとして販売の用に供さなければならないことから、飲食店で一般消費者が自ら豚の生肉等を調理し、飲食する際には、一般消費者に対しコンロ等加熱設備を提供するよう事業者に指導すること。
3 豚の食肉を直接一般消費者に販売する事業者は、一般消費者が豚の食肉を中心部まで十分に加熱して飲食するよう、以下の内容を事業者に指導すること。
(1)食肉販売等を行う事業者は、加熱用である旨、調理の際に中心部まで加熱する必要がある旨、食中毒の危険性があるため生では食べられない旨等の情報提供を掲示等により行うこと。
(2)飲食店営業等を行う事業者は、加熱用である旨、調理の際に中心部まで加熱する必要がある旨、食中毒の危険性があるため生では食べられない旨等をメニューに記載する等、情報提供を行うこと。なお、上記の情報提供を行ったにもかかわらず一般消費者が生で食べている場合には、加熱して食べるよう重ねて注意喚起すること。
4 加熱用として販売されている生の豚の食肉を、一般消費者が生で喫食することがないよう、中心部まで加熱する必要性があることを事業者及び一般消費者に十分に注意喚起すること。なお、厚生労働省ホームページにリーフレット等広報資材を掲載しているので適宜活用されたい。
5 豚の食肉の中心部の温度を63℃で30分間以上加熱することと同等以上の殺菌効果を有する方法とは、中心部の温度を75℃で1分間以上加熱殺菌すること等をいうこと。
6 規格基準の第1食品の部D各条の項○食肉製品に規定する製品(乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品)は今回新たに設けた豚の食肉の基準は適用されないこと。
第5 その他
第4の3の指導に当たっては、豚の食肉に限定せずに、従来行ってきた以下の内容に留意して指導するとともに、食中毒を予防する観点から消費者に対して注意喚起を積極的に行うこと。
(1)テンダライズ処理又はタンブリング処理した肉、結着・成形肉、挽肉調理品等の病原微生物による汚染が内部に拡大するおそれのある肉については、中心部の色が変化するまで、十分な加熱が必要であること。
(2)(1)のような加工を行っていない獣畜及び家きんの食肉についても、食中毒の原因となる菌等が付着している可能性があるため、十分な加熱が必要であること。
(3)野生鳥獣であるイノシシやシカ等の食肉からHEV、食中毒菌及び寄生虫が検出されていることから、野生鳥獣を飲食に供する場合は、十分な加熱が必要であること及び平成26年11月14日付け食安発1114第1号に基づき、関係事業者等に対して野生鳥獣肉の衛生管理の徹底について周知を図ること。
(4)加熱前の食肉から他の食材へ交差汚染が起こる可能性があるため、加熱前後で調理器具を使い分ける等の注意をすること。