通知

 

食安発第0825004号

平成18年08月25日

都道府県知事

保健所設置市長

特別区長

殿

医薬食品局食品安全部

 

 

食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法の一部改正について

 


 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成18年厚生労働省告示第473号)が本日公布され、その内容については、本日付け食安発第0825001号当職通知をもって通知したところである。
 今般、これに関連して、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号当職通知。以下、「試験法通知」という。)別添の第3章個別試験法について、農薬ピラクロストロビンに係る試験法を別紙のとおり追加したので、関係者への周知方よろしくお願いする。
 また、上記試験法を実施するに際しては、試験法通知別添の第1章総則部分を参考とされたい。


ピラクロストロビン試験法(農産物)


1.分析対象化合物
 ピラクロストロビン

2.装置
 紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-UV)
 液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液
 次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。
 ピラクロストロビン標準品 本品はピラクロストロビン98%以上を含み、融点は60~65℃である。

4.試験溶液の調製
1)抽出
① 穀類、豆類及び種実類の場合
 試料10.0gに水20 mLを加え、2時間放置する。これにメタノール100 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、メタノール50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約20 mLまで濃縮する。これに5%塩化ナトリウム溶液100 mLを加え、n-ヘキサン100 mL及び50 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。
 この残留物にn-ヘキサン30 mLを加え、n-ヘキサン飽和アセトニトリル30 mLずつで2回振とう抽出する。アセトニトリル層を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液5mLを加えて溶かす。

② 果実、野菜及びハーブの場合
 試料20.0gに、メタノール100 mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、メタノール50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、40℃以下で約20 mLまで濃縮する。これに5%塩化ナトリウム溶液200 mLを加え、n-ヘキサン100 mL及び50 mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液5mLを加えて溶かす。

2)精製
① シリカゲルカラムクロマトグラフィー
 クロマトグラフ管(内径15 mm)に、カラムクロマトグラフィー用シリカゲル(粒径63~200μm)5gをn-ヘキサンに懸濁させて充てんし、無水硫酸ナトリウム5gを積層する。このカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、アセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液45 mLを注入し、流出液は捨てる。次いでアセトン及びn-ヘキサン(3:17)混液50 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液3mLを加えて溶かす。

② エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルクロマトグラフィー
 エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500 mg)にアセトン、n-ヘキサン及びアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液各10 mLを順次注入し、各流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、アセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液12 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(3:2)混液に溶解し、穀類、豆類及び種実類の場合は正確に4mL、果実、野菜及びハーブの場合は正確に8mLとしたものを、孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、試験溶液とする。

5.検量線の作成
 ピラクロストロビン標準品の0.025~0.5 mg/Lアセトニトリル及び水(3:2)混液溶液を数点調製し、それぞれ20μLをHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量
 試験溶液20μLをHPLCに注入し、5の検量線でピラクロストロビンの含量を求める。

7.確認試験
 LC/MSにより確認する。

8.測定条件
1)HPLC
 検出器:UV(波長275 nm)
 カラム:トリアコンチルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径4.6 mm、長さ250 mm
 カラム温度:40℃
 移動相:アセトニトリル、水及びメタノール(11:8:1)混液
 保持時間の目安:21分

2)LC/MS
 カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2~2.1 mm、長さ150 mm
 カラム温度:40℃
 移動相:アセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液混液(1:1)から(3:2)までの濃度勾配を20分間で行い、さらに(9:1)で5分間送液する。
 イオン化モード:ESI(+)
 主なイオン(m/z):388
 注入量:2μL
 保持時間の目安:19分

9.定量限界
 0.01 mg/kg

10.留意事項
1)試験法の概要
 ピラクロストロビンを試料からメタノールで抽出し、n-ヘキサンに転溶する。果実、野菜及びハーブはそのまま、穀類、豆類及び種実類の場合はアセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂した後、シリカゲルカラム及びエチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製し、HPLC-UVで測定、LC/MSで確認する方法である。

2)注意点
① HPLC分析において、試料由来の妨害成分を除去できない場合は、LC/MSを用いて測定を行う。
② エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルミニカラムから妨害成分が溶出するため、あらかじめ、アセトン、n-ヘキサン及びアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液各10 mLで洗浄して使用する。
③ 試料によって不溶物が残ることから、これを除去する目的でメンブランフィルターを使用する。

11.参考文献
 なし

12.類型
 C
 
 


ピラクロストロビン試験法(畜産物)
 

1.分析対象化合物
 ピラクロストロビン

2.装置
 紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-UV)
 液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)

3.試薬、試液
 次に示すもの以外は、総則の2に示すものを用いる。
 ピラクロストロビン標準品 本品はピラクロストロビン98%以上を含み、融点は60~65℃である。

4.試験溶液の調製
1)抽出
 筋肉、脂肪、肝臓、腎臓、その他の食用部分、卵及び乳の場合は、5.00gを量り採る。乳の場合は、よく混合して均一化した後、その5.00gを量り採る。
 これにアセトニトリル50 mL、アセトニトリル飽和n-ヘキサン50 mL及び無水硫酸ナトリウム10gを加え、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離を行う。アセトニトリル層を採り、ヘキサン層及び残留物にアセトニトリル50 mLを加えてホモジナイズし、上記と同様に遠心分離を行う。得られたアセトニトリル層を先のアセトニトリル層に合わせ、40℃以下で濃縮し溶媒を除去する。これに5%塩化ナトリウム溶液100 mLを加え、n-ヘキサン100 mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液5mLを加えて溶かす。

2)精製
① シリカゲルカラムクロマトグラフィー
 クロマトグラフ管(内径15 mm)に、カラムクロマトグラフィー用シリカゲル(粒径63~200μm)5gをn-ヘキサンに懸濁させて充てんし、無水硫酸ナトリウム5gを積層する。このカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、アセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液45 mLを注入し、流出液は捨てる。次いでアセトン及びn-ヘキサン(3:17)混液50 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液3mLを加えて溶かす。
② エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルクロマトグラフィー
 エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500 mg)にアセトン、n-ヘキサン及びアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液各10 mLを順次注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、アセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液12 mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(3:2)混液に溶解し、正確に2mLとしたものを孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、試験溶液とする。

5.検量線の作成
 ピラクロストロビン標準品の0.025~0.5 mg/Lアセトニトリル及び水(3:2)混液溶液を数点調製し、それぞれ20μLをHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。

6.定量
 試験溶液20μLをHPLCに注入し、5の検量線でピラクロストロビンの含量を求める。

7.確認試験
 LC/MSにより確認する。

8.測定条件
1)HPLC
 検出器:UV(波長275 nm)
 カラム:トリアコンチルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径4.6 mm、長さ250 mm
 カラム温度:40℃
 移動相:アセトニトリル、水及びメタノール(11:8:1)混液
 保持時間の目安:21分
2)LC/MS
 カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)、内径2.1 mm、長さ150 mm
 カラム温度:40℃
 移動相:アセトニトリル及び0.01%ギ酸溶液混液(1:1)から(3:2)までの濃度勾配を20分間で行い、さらに(9:1)で5分間送液する。
 イオン化モード:ESI(+)
 主なイオン(m/z):388
 注入量:2μL
 保持時間の目安:19分

9.定量限界
 0.01 mg/kg

10.留意事項
1)試験法の概要
 ピラクロストロビンを試料からアセトニトリルで抽出すると同時にn-ヘキサン洗浄し、n-ヘキサンに転溶した後、シリカゲルカラム及びエチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルミニカラムにより精製し、HPLC-UVで測定、LC/MSで確認する方法である。

2)注意点
① HPLC分析において、試料由来の妨害成分を除去できない場合は、LC/MSを用いて測定を行う。
② エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲルミニカラムから妨害成分が溶出するため、あらかじめ、アセトン、n-ヘキサン及びアセトン及びn-ヘキサン(1:19)混液各10 mLで洗浄して使用する。
③ 試料によって不溶物が残ることから、これを除去する目的でメンブランフィルターを使用する。

11.参考文献
 なし

12.類型
 C




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