標記分析法については、「食品中の食品添加物分析法について」(平成12年3月30日付け衛化第15号当職通知)の別添「第2版 食品中の食品添加物分析法」により定められているが、亜塩素酸ナトリウムの使用基準改正に伴い、別添のとおり改正したので通知する。
なお、貴職におかれても、御活用の上、貴管内関係者に対する周知徹底方よろしくお願いする。
別添
亜塩素酸ナトリウム
Sodium Chlorite
NaClO2:90.44
1. 試験法の概要
食品に付着している亜塩素酸ナトリウムは,水により浸出し,亜塩素酸ナトリウムとして紫外部吸収検出器を用いたイオンクロマトグラフィー(試験法A)により測定する.食品中の亜塩素酸ナトリウムは,9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液で抽出し,除タンパク,脱塩後に,亜塩素酸ナトリウムとして電気伝導度検出器を用いたイオンクロマトグラフィー(試験法B)により測定する.
2. 試験法
試験法A(紫外部吸収検出器を用いたイオンクロマトグラフィー)1),2)
(1) 検体の採取と試料の調製
一般試料採取法を準用する.
(2) 試料液の調製
試料25.0gを正確に量り,水75mlを加え,軽く振り混ぜながら10分間放置する.次に浸出液をろ紙でろ過する.ろ液を5ml分取してクリーンアップ用カートリッジカラム3)に通し,その液を試料液とする.
(3)検量線用標準液の調製
亜塩素酸ナトリウム4)約1.25 gを精密に量り,水を加えて溶かし正確に100 mlとする.この液1 mlを正確に量り,水を加えて正確に100 mlとしたものを標準液とする.(この液1 mlは亜塩素酸ナトリウム約100 mgを含む).標準液0, 1, 5, 10, 25及び50 mlをそれぞれ正確に量り,水を加えてそれぞれ正確に100 mlとし,検量線用標準液とする(これらの液1 mlはそれぞれ亜塩素酸ナトリウム約0, 1, 5, 10, 25及び50 mgを含む).
(4) 測定法
① 測定条件
紫外部吸収検出器付イオンクロマトグラフを用い,次の条件によって測定する.
カラム充てん剤5):ポリアクリレート系強酸性陰イオン交換樹脂
カラム管:耐アクリル性ポリアクリレート製,内径4.6~6.0mm, 長さ 150~250 mm
カラム温度:40℃
溶離液:1 mmol/l ホウ酸塩緩衝液
流速:1.0 ml/分
測定波長:260nm2)
② 検量線
検量線用標準液それぞれ10 mlずつを正確に量り,イオンクロマトグラフに注入し,得られたピーク面積から亜塩素酸ナトリウムの検量線を作成する.
③ 定量
試料液10 mlを正確に量り,イオンクロマトグラムに注入し,得られたピーク面積と検量線によって試料液中の亜塩素酸ナトリウム濃度(mg/ ml)を求め,次式によって検体中の亜塩素酸ナトリウム含量C(mg/g)を算出する6).
A: 試料液中の亜塩素酸ナトリウム濃度(mg/ ml)
F: 注4)によって標定したファクター
W: 試料の採取量(g)
試験法B(電気伝導度検出器を用いたイオンクロマトグラフィー)7)
(1) 検体の採取と試料の調製
一般試料採取法を準用する.
(2) 試料液の調製
試料を細切し,約5.0 gを精密に量り,9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液45 mlを加え,5分間マグネチックスターラーで撹拌後,15,000 rpm, 5 ℃で15分間遠心分離する.上清を0.2 m mのフィルターに通す.ろ液を限外ろ過し,ろ液 5 mlに9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液を加え,正確に50 ml8)とする.この液10 mlを銀カラム9)に負荷し,初めの3 mlを捨て,全量を採取する.流出液を15,000 rpm, 5 ℃で15分間遠心分離し,上清を陽イオン交換カートリッジ10)に負荷し,流出液をイオンクロマトグラフィー用試料液とする.
(3)検量線用標準液の調製
亜塩素酸ナトリウム4)約125 mgを精密に量り,9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液を加え,100 mlとする.この液1 mlを正確に量り,9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液を加え100 mlとし,標準液とする.(この液1 mlは亜塩素酸ナトリウム約10 mgを含む).標準液0.5, 1, 2, 5及び10 mlをそれぞれ正確に量り,9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液を加え100 mlとし,検量線用標準液とする.(これらの液1 mlはそれぞれ亜塩素酸ナトリウム約50, 100, 200, 500及び1,000 ngを含む).
(4) 測定法
① 測定条件
電気伝導度検出器付イオンクロマトグラフを用い,次の条件によって測定する.
カラム充てん剤11):エチレンビニルベンゼン-ジビニルベンゼンポリマー系陰イオン交換樹脂
カラム管:内径4.6 mm, 長さ 250 mm
カラム温度:30℃
溶離液:9 mmol/l 炭酸ナトリウム溶液
流速:1.0 ml/分
② 検量線
検量線用標準液それぞれ50 mlずつを正確に量り,イオンクロマトグラフに注入し,得られたピーク面積から検量線を作成する.
③定量
試料液50 mlを正確に量り,イオンクロマトグラムに注入し,得られたピーク面積と検量線によって試料液中の亜塩素酸ナトリウム濃度(mg/ ml)を求め,次式によって検体中の亜塩素酸含量(mg/kg)を算出する12).
C: 試料液中の亜塩素酸ナトリウム濃度(mg/ ml)
F: 注4)によって標定したファクター
W: 試料の採取量(g)
試薬・試液等
1. 1 mmol/lホウ酸塩緩衝液:0.01mol/lホウ酸塩緩衝液(pH標準液,pH9.18を水で10倍に希釈したもの).
2. 水:超純水(逆浸透膜処理装置による精製,イオン交換樹脂による脱塩及びメンブランフィルターによるろ過等により,比抵抗値17MΩ・cm以上まで精製した水).
3. クリーンアップ用カートリッジカラム3):メタノール5ml,続いて水10mlでコンディショニングしたもの.
4. 1 mol/l 炭酸ナトリウム溶液:イオンクロマトグラフィー用.
5. 9 mmol/l 炭酸ナトリウム溶液:1 mol/lイオンクロマトグラフィー用炭酸ナトリウム溶液9 mlに水を加え1 Lとする.
6. ディスポーザブルフィルター:孔径0.2 mm, 水系.
7. 銀カラム:スチレン系銀型の陽イオン交換樹脂.
8. 陽イオン交換カートリッジ: スルフォニルプロピル基系陽イオン交換樹脂.
9. 限外ろ過カートリッジ:分画分子量10,000のもの.
[注]
1) 生食用野菜類,卵殻等を対象とする.
2) 電気伝導度検出器でも測定可能であるが,UV検出器を用いるとCl-ピークが出現しないため良好なクロマトグラムが得られる.
3) クリーンアップ用カートリッジカラムとしては,Sep-Pak Plus C18などがある.
4) 亜塩素酸ナトリウム(試薬)の含量は,通常,80%以上である.亜塩素酸ナトリウムの標定は「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」の第2 添加物 D成分規格・保存基準各条「亜塩素酸ナトリウム」の号の「定量法」を準用する.
(あるいは,本品約1gを精密に量り,水に溶かし,正確に250mlとする。この液20 mlを正確に量り,ヨウ素瓶に入れ,3%硫酸12 ml, 水20 ml及びヨウ化カリウム4 gを加え,直ちに密栓して暗所に15分間放置し,遊離したヨウ素を0.1 mol/l チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(指示薬:デンプン溶液).別に空試験を行い補正する.
0.1 mol/l チオ硫酸ナトリウム溶液1 ml=2.261 mg 亜塩素酸ナトリウム)
5) カラムとしては,TSKgel IC-Anion-PWXLPEEK(東ソー(株)製),又は同等のものを用いる.
6) 本法の添加回収率は90~100%,CV値5%である.また,検出限界は1mg/kgである.
7) しょう油漬け,味付けカズノコ(ただし、いわゆる塩カズノコは含まない。)等を対象とする.
8) ろ液 2.5 ml を正確に25 ml にしてもよい.
9) Dionex 社製OnGuardⅡAg Cartridge 1 ccが使用できる.
10) Varian社製,陽イオン交換カートリッジBond Elut PRS 100 mgが使用できる.
11) 市販の充填カラムとしてDionex社製,IonPac AS 9-HC 4 mm x 250 mm ,及びガードカラム AG 9-HC 4mm×50mmが使用できる.
12) 本法における検出限界は5 mg/kgである.
参考情報
亜塩素酸ナトリウム(試験法B)の確認試験法
1. 試験法の概要:カズノコ調味加工品中の亜塩素酸ナトリウムは9 mmol/l炭酸ナトリウム溶液で抽出し,限外ろ過による除タンパク後の試験液を用い,N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD)との発色反応により行う1).
2. 試験法
(1) 検体の採取と試料の調製
一般試料採取法を準用する.
(2) 試料液の調製
亜塩素酸ナトリウムの試験法Bを準用する.限外ろ過のろ液1 mlに10 w/v%グリシン溶液0.1 mlを加え,よく混和する. DPD錠2)を1錠及び硫酸(1+99) 0.1 ml加え,5秒間激しく撹拌する.
(3) 測定法
反応液を10分間放置後,色調表に より比色する.5μg/kg以上の亜塩素酸ナトリウムがあれば,塩素(Cl)として0.2 mg/l以上の呈色が見られる3).
試薬,試液等
1. DPD錠:残留塩素測定用(1錠中にDPD 0.002g及び硫酸ナトリウム0.048gを含む)
2. グリシン:[特級]
3. 硫酸:[特級]
[注]
1. 本法は亜塩素酸ナトリウムの確認試験法であり,定量分析は目的としない.
2. 残留塩素測定用のキットが市販されており,和光純薬工業㈱の残留塩素測定用活性塩素―DPDテストワコーが使用できる.
3. 添付の色調表により判別ができる.