食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法
食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第1食品の部A 食品一般の成分規格の 6 の (1) の表の第1欄に掲げる農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含む。)の試験法(同表第3欄に「不検出」と定めているものに係るものを除く。)について、次のとおり定める。
第1章 総則
第2章 試験法
*「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年4月27日付け食安発第0427004号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)別添
第1章 総則(略)
第2章 試験法
(追加:シアゾファミド試験法、トルフェンピラド試験法)
シアゾファミド試験法
1. 分析対象化合物
シアゾファミド
2. 装置
紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ (HPLC(UV)
液体クロマトグラフ・質量分析計 (LC/MS)
3. 試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の 2 に示すものを用いる。
シアゾファミド標準品 本品はシアゾファミド 99% 以上を含み、融点は 152 ~ 153 ℃である。
4. 試験溶液の調製
1) 抽出
穀類及び種実類の場合は、試料 10.0g を量り採り、水 20mL を加え、 2 時間放置する。果実及び野菜の場合は、試料 20.0g を量り探る。
これにアセトニトリル 100 mL を加え、 3 分間ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトニトリル 50mL を加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、 40 ℃以下で約 30mL に濃縮する。これに 10% 塩化ナトリウム溶液 100 mL を加え、 n- へキサン 100 mL 及び 50mL で 2 回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物に n- ヘキサン 5mL を加えて溶かす。
2) 精製
① 合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィー
クロマトグラフ管 ( 内径 15mm) に、カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム 5g を n- へキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム 5g を積層する。このカラムに 1) で得られた溶液を注入した後、アセトン・ n- へキサン混液 (1:19)50mL を注入し、流出液は捨てる。次いで、アセトン・ n- へキサン混液 (3:17)50mL を注入し、溶出液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン 5mL を加えて溶かす。
② 活性炭カラムクロマトグラフィー
活性炭ミニカラム (500 mg) にアセトン 10mL を注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入した後、アセトン 5mL を注入する。全溶出液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にエーテル・ n- へキサン混液 (3:17)5mL を加えて溶かす。
③ シリカゲルカラムクロマトグラフィー
シリカゲルミニカラム (690 mg) にエーテル・ n- へキサン混液 (3:17)10mL を注入し、流出液は捨てる。このカラムに②で得られた溶液を注入した後、さらに、エーテル・ n- へキサン混液 (3:17)10mL を注入し、流出液は捨てる。次いで、エーテル・ n- へキサン混液 (3:7)20mL を注入し、溶出液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリルに溶解し、穀類及び種実額の場合は正確に 2mL 、果実及び野菜の場合は正確に 4mL としたものを試験溶液とする。
5. 検量線の作成
シアゾファミド標準品の 0.06 ~ 1mg/L アセトニトリル溶液を数点調製し、それぞれ 20 μ L を HPLC に注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6. 定量
試験溶液 20 μ L を HPLC に注入し、 5 の検量線でシアゾファミドの含量を求める。
7. 測定条件
1)HPLC 検出器 :UV( 波長 280 nm) カラム : オクタデシルシリル化シリカゲル ( 粒径 5 μ m) 、内径 4 ~ 4.6mm 、長さ 250 mm カラム温度 :40 ℃ 移動相 : アセトニトリル・水混液 (3:2) 保持時間の目安 : 約 12 分
2)LC/MS カラム : オクタデシルシリル化シリカゲル ( 粒径 5 μ m) 、内径 2mm 、長さ 150 mm 移動相 :0.002 mol/L 酢酸アンモニウム溶液・メタノール混液 (7:3) から (1:9) までの濃度勾配を 8 分間で行い、 (1:9) で 6 分間保持する。 イオン化モード :ESI 主なイオン (m/z): 正イオンモード 325 、負イオンモード 216 注入量 :1 μ L 保持時間の目安 : 約 14 分
8. 定量限界
0.01mg/kg
9. 留意事項
1) 試験法の概要 シアゾファミドを試料からアセトニトリルで抽出し、 n- へキサンに転溶する。合成ケイ酸マグネシウムカラム、活性炭ミニカラム及びシリカゲルミニカラムにより精製した後、 HPLC(UV) で測定し、 LC/MS で確認する方法である。
2) 注意点
① 標準溶液及び試料溶液中のシアゾファミド、室温で徐々に分解するため、冷蔵で保存する。
② HPLC 測定時において試料由来の夾雑成分のピークが、シアゾファミドの溶出位置に認められた場合、 HPLC のカラムを変更することにより、シアゾファミドを試料由来の夾雑成分のピークから分離することができる。通常用いているオクタデシルシリル化シリカゲルからトリアコンチルシリル化シリカゲル (C30) あるいはフェニルシリル化シリカゲル (Ph) などの充てん剤を用いたカラムに変更することが有効である。
③ 活性炭ミニカラムクロマトグラフィーは、夾雑物の少ない試料では、省略することもできる。
④ 精製が不十分な場合、アミノプロピルシリル化シリカゲルミニカヲム (360 mg) による追加精製が可能である。 酢酸・ n- へキサン混液 (0.1:100)10mL で予備洗浄を行う。試料溶液を酢酸・ n- へキサン混液 (0.1:100)10mL で負荷し、流出液を捨てた後、エーテル・酢酸・ n- へキサン混液 (10:0.1:90)30mL で溶出させる。
⑤ シアゾファミドは LC/MS での測定において正イオン m/z:325[M+H]+ または負イオン m/z = 216[M-SO2N(CH3)2] -で測定が可能であるが、後者の方が感度も良く、選択性に優れている。
10. 参考文献
平成 13 年環境省告示第 31 号「シアゾファミド試験法」
11. 類型
C
トルフェンピラド試験法
1. 分析対象化合物
トルフェンピラド
2. 装置
アルカリ熱イオン化検出器付きガスクロマトグラフ (GC(FTD)) 又は高感度窒素・リン検出器付きガスクロマトグラフ (GC(NPD))
ガスクロマトグラフ・質量分析計 (GC/MS)
3. 試薬、試液
次に示すもの以外は、総則の 2 に示すものを用いる
。 トルフェンピラド標準品 本品はトルフェンピラド 99% 以上を含み、融点は 87 ~ 89 ℃である。
4. 試験溶液の調製
1) 抽出
① 果実及び野菜の場合 試料 20.0 g を量り探り、アセトン 100 mL を加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン 50mL を加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、 40 ℃以下で約 30mL に濃縮する。これに 10% 塩化ナトリウム溶液 100 mL を加え、 n- ヘキサン 100 mL 及び 50mL で 2 回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトンを加えて溶解し、正確に 20mL とする。
② 茶の場合 試料 5.0g を量り採り、水 20mL を加え、 2 時間放置する。これにアセトン 100 mL を加え、 3 分間ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物に、アセトン 50mL を加えてホモジナイズし、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、 40 ℃以下で約 30mL に濃縮する。これに 10% 塩化ナトリウム溶液 100 mL を加え、 n- ヘキサン 100mL 及び 50mL で 2 回振とう抽出する。抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトンを加えて溶解し、正確に 10mL とする。
2) 精製
① 活性炭カラムクロマトグラフィー一
活性炭ミニカラム (250mg) にアセトン 10mL を注入し、流出液は捨てる。このカラムに 1) で得られた溶液 ( 果実及び野菜の場合は 2 ml 、茶の場合は 4 ml) を注入した後、アセトン 35mL を注入する。全溶出液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン・ n- へキサン混液 (1:99)5mL を加えて溶かす。
② 合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィー
クロマトグラフ管 ( 内径 15mm) に、カラムクロマトグラフィー用合成ケイ酸マグネシウム 5g を n- へキサンに懸濁させて充てんし、上に無水硫酸ナトリウム 6g を積層する。このカラムに、①で得られた溶液を注入した後、アセトン .n- へキサン混液 (1:99)100 mL を注入し、流出液は捨てる。次いでアセトン・n - へキサン混液 (1:19)100 mL を注入し、溶出液を 40 ℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶解し、正確に 2mL としたものを試験溶液とする。
5. 検量線の作成
トルフェンピラド標準品の 0.01 ~ 0.5mg/L アセトン溶液を数点調製し、それぞれ 2 μ L を GC に注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6. 定量
試験溶液 2 μ L を GC に注入し、 5 の検量線でトルフェンピラドの含量を求める。
7. 測定条件
1)GC 検出器 :FTD 又は NPD カラム :5% フェニル-メチルシリコン、内径 0.25mm 、長さ 30m 、膜厚 0.25 μ m カラム温度 :100 ℃ (1 分 ) - 30 ℃ / 分- 300 ℃ (10 分 ) 注入口温度 :250 ℃、検出器温度 :280 ℃ キャリヤーガス : ヘリウム 保持時間の目安 : 約 11 分
2)GC/MS カラム :5% フェニル-メチルシリコン、内径 0.25mm 、長さ 30m 、膜厚 0.25 μ m カラム温度 :80 ℃ (1 分 ) - 20 ℃ / 分- 300 ℃ (10 分 ) 注入口温度 :240 ℃ キャリヤーガス : ヘリウム イオン化モード ( 電圧 ):EI(70eV) 主なイオン (m/z):383 、 197 注入量 :2 μ L 保持時間の目安 : 約 15 分
8. 定量限界
0.01mg/kg
9. 留意事項
1) 試験法の概要
トルフェンピラドを試料からアセトンで抽出し、 n- へキサンに転溶する。活性炭ミニカラム及び合成ケイ酸マグネシウムカラムで精製した後、 GC(FTD) 又は GC(NPD) で測定し、 GC/MS で確認する方法である。
2) 注意点
① 精製が不十分な場合はアセトニトリル / へキサン分配 [n- へキサン 30mL に溶解し、 n- へキサン飽和アセトニトリル 30mL で 2 回抽出 ] やシリカゲルミニカラム (690 mg)[ エーテル / n - へキサン (1:9)5mL で負荷、同混液 5mL で洗浄、エーテル /n- へキサン (3:7)20mL で溶出 ] による精製を追加するとよい。
② トルフェンピラドの感度が試料の注入の前後で大幅に変動する場合がある。試料を数本注入し、感度を十分に安定させてから標準溶液を注入する等の措置が必要である。
10. 参考文献
1) 平成 13 年厚生労働省告示第 56 号「アラクロール、イソプロカルブ、クレソキシムメチル、ジエトフェンカルブ、テニルクロール、テブフェンピラド、パクロブトラゾール、ビテルタノール、ピリプロキシフェン、ピリミノバツクメチル、フェナリモル、ブタクロール、フルトラニル、プレチラクロール、メトラクロール、メフェナセツト、メプロニル及びレナシル試験法」
2) 平成 14 年厚生労働省告示第 94 号「カフェンストロール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、シメトリン、チフルザミド、テトラコナゾール、テブコナゾール、トリアジメノール、フルジオキソニル、プロピコナゾール、ヘキサコナゾール及びペンコナゾール試験法」
11. 類型
C