食品中に残留する農薬等の成分である物質の試験法について
食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(平成16年厚生労働省告示第413号)が本日公布され、その内容については、本日付け食安発第1126001号本職通知をもって通知しているところである。
これに関連して、今般、畜水産食品に係る残留基準値を設定する飼料添加物カンタキサンチンに係る試験法について別添のとおり定めたので、関係者への周知方よろしくお願いする。
(別添)
食品中に残留する農薬等の成分である物質の試験法について
平成16年11月
厚生労働省医薬食品局食品安全部
食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の試験法について、次のとおり定める。
カンタキサンチン試験法
(注)用語の定義等
1 「定量限界」とは、一般に、試料に含まれる分析対象物の定量が可能な最低の量又は濃度のこと。おおむねS/N=10となる分析対象物質の量を試料中の農薬濃度として示した。なお、Sは分析対象物のピーク高さ、Nはベースラインノイズを指す。
2 「類型」については、当該試験法の由来を示すものであり、以下のように分類した。
A:日本国内の公定分析法(環境省告示試験法など)
B:諸外国の公定分析法、マニュアル等(米、独、オランダ、EUなど)
C:厚生労働省試験法検討班作成の試験法
D:文献等から引用した試験法
カンタキサンチン試験法
1.分析対象化合物
カンタキサンチン
2.装置
可視分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC(VIS))又は多波長検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC(DAD))
液体クロマトグラフ・質量分析計(LC/MS)
3.試薬、試液
次に示すもの以外は、第2 添加物の部C 試薬・試液の項に示すものを用いる。
水 液体クロマトグラフ用に製造したものを用いる。
メタノール 液体クロマトグラフ用に製造したものを用いる。
カンタキサンチン標準品 本品はカンタキサンチン 96%以上を含み、融点は 207~212℃(分解)である。
4.試験溶液の調製
細切均一化した検体 5.0 gを量り採り、アセトニトリル 30 mL、アセトニトリル飽和 n-ヘキサン 20 mLおよび無水硫酸ナトリウム 10 gを加えてホモジナイズした後、3,000 rpmで 5分間遠心分離する。アセトニトリル層および n-ヘキサン層を分液ロートに移し、アセトニトリル層を採る。n-ヘキサン層を、遠心分離した残留物に加え、さらにアセトニトリル 20 mLを加えて激しく振り混ぜた後、3,000 rpmで 5分間遠心分離する。n-ヘキサン層を捨て、アセトニトリル層を先のアセトニトリル層に合わせ、n-プロパノール 10 mLを加えて、40℃以下で5 mLになるまで濃縮する。これにメタノールを加えて、正確に 10 mLとしたものを試験溶液とする。
5.検量線の作成
カンタキサンチン標準品の 100 mg/L N,N-ジメチルホルムアミド溶液をメタノールで希釈して、 0.05~20 mg/L溶液を数点調製し、それぞれHPLCに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。
6.定量
試験溶液をHPLCに注入し、5.の検量線でカンタキサンチンの含量を求める。
7.測定条件
1) HPLC
検出器: VIS又はDAD(波長 470 nm付近の極大波長)
カラム: オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径 2~5 mm)、内径 2.0~6.0 mm、長さ 100~250 mm
カラム温度: 40℃
移動相: 0.05%トリフルオロ酢酸及びメタノールの混液(3:97)
保持時間の目安: 7~10分
2) LC/MS
カラム: オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径 2~5 mm)、内径 2.0~6.0 mm、長さ 100~250 mm
カラム温度: 40℃
移動相: 0.05%トリフルオロ酢酸及びメタノールの混液(3:97)
主なイオン (m/z): ESI+において 565
保持時間の目安: 7~10分
8.定量限界
0.1 mg/kg
9.留意事項
1) 試験法の概要
カンタキサンチンを試料からアセトニトリルで抽出し、アセトニトリル/ヘキサン分配により脱脂した後、HPLC(VIS又はDAD)により測定し、LC/MSで確認する方法である。
2) 注意点
① 試験溶液の調製において、濃縮、溶媒除去後の残留物に液状の脂質が残存する場合は、アセトニトリル 20 mL、アセトニトリル飽和n-ヘキサン 10 mLを加えて激しく振り混ぜて、3,000 rpmで 5分間遠心分離後、アセトニトリル層を 40℃以下で濃縮し、溶媒を除去して、残留物をメタノールに溶解し、正確に 10 mLとしたものを試験溶液とすること。
② カンタキサンチンにはトランス体の他、シス体が存在する。定量に際しては、トランス体及びシス体のピーク高又はピーク面積の和をとり計算すること。
トランス体の極大波長は 475 nm付近、シス体の極大波長は 465 nm付近である。
10.参考文献
なし
11.類型
C
12.その他
(1)平成16年11月26日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課事務連絡「「食品中の残留農薬等試験法に係る分析上の注意事項」の改正について」の別添を参考にすること。
(2)通知に示す以外の方法により試験を実施する場合は、通知に示す試験法と同等以上の性能を有する試験法によること。