食品衛生法の一部を改正する法律(平成14年法律第104号)の施行について
平成14年8月7日付けで公布された「食品衛生法の一部を改正する法律(平成14年法律第104号。以下「改正法」という。)」が、平成14年9月7日付けで施行される。
また、改正法の施行のため、地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う特別区の事務等の経過措置に関する政令の一部を改正する政令(平成14年政令第293号。以下「改正政令」という。)が同年9月4日に、食品衛生法施行規則の一部を改正する省令(平成14年厚生労働省第118号。以下「改正省令」という。)が同月6日に公布され、それぞれ同月7日に施行される。
今回、改正法により新たに設けられる食品衛生法(昭和22年法律第233号。以下「法」という。)第4条の3及び第9条の2の規定(これらの規定を法第29条第1項において準用する場合を含む。以下「新設規定」という。)並びに改正省令の趣旨並びに内容並びに施行に当たり留意すべき事項は、下記のとおりであるので、ご了知頂くとともに、管内市町村、関係団体、関係機関等への周知をお願いする。
また、新設規定の運用指針及びその考え方の詳細について、別添のとおり「食品衛生法第4条の3第1項及び第9条の2第1項等に基づく特定食品等の販売、輸入等禁止処分の取扱い指針(ガイドライン)」として整理したので、併せて内容をご了知頂くとともに、管内市町村、関係団体、関係機関等への周知をお願いする。
記
第一 改正法の趣旨等
1 改正法の趣旨
BSE問題、偽装表示事件等を契機に、食の安全に対する国民の不安と不信がますます高まる中で、厚生労働省においては、国民の食に対する安心と信頼を回復するため、法改正をはじめ、食品の安全確保に関する従来の施策を抜本的に見直すこととしているところである。
このような中で、一部の輸入食品について、法に基づき定める残留農薬基準値を超えるものが相次いで発見され、検疫所における検査を順次強化したにもかかわらず、高い頻度で基準違反が発見されたことに加え、検疫所の全輸入届出検査で違反が発見されずに、国内流通段階においてこれが判明したものが出るなど、国民への健康影響が懸念されることとなった。
この事例を通じて、残留農薬など分布の不均質性が高い危害物質を含むものについては、命令検査等によりすべての貨物(全ロット)を検査対象としても、検体については抽出(サンプリング)に依らざるを得ない改正前の法に基づく検査制度のみでは、食品衛生上の危害発生防止に自ずと限界があることが再認織された。
国産の食品については、違反が発見されるたびごとに、採取、製造、加工等の段階で食品衛生上の規制措置を個別に講ずることができるものの、原因不明等により、既存の法第4条等に基づく規制措置のみでは対応困難な違反食品等が出現する可能性も否定できない。
このようなことから、輸入品であるか国産品であるかを問わず、厚生労働大臣が食品衛生上の危害の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、特定の国若しくは地域において製造等がなされ、又は特定の者により製造等がなされた特定の食品等について、検査を要せずに販売、輸入等を禁止できる仕組みを創設することとされ、このための食品衛生法の一部を改正する法律案が、平成14年7月19日に衆議院厚生労働委員長により提案され、同月23日の衆議院本会議での可決を経て、同月31日に参議院本会議にて可決・成立し、同年8月7日に公布されたものである。
2 改正政令の趣旨及び内容並びに改正省令の趣旨
改正政令は、改正法の施行に伴う条ずれの形式的改正を行うものである。
また、改正省令は、新設規定に基づき厚生労働大臣が禁止処分を行うに当たって勘案する事由等について、食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「施行規則」という。)において必要となる規定の整備を行うものである。
第二 改正法及び改正省令の概要
Ⅰ 食品又は添加物の販売、輸入等の禁止及びその解除
1 食品又は添加物の販売、輸入等の禁止
(1) 厚生労働大臣は、特定の国若しくは地域において製造等がなされ、又は特定の者により製造等がなされた食品又は添加物(以下、第二において「食品等」という。)について、
①法違反の食品等が相当程度あり、
②食品衛生上の危害発生の防止のために特に必要があると認める場合に
薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売、輸入等を告示をもって禁止することができることとされた。(法第4条の3第1項関係)
(2) (1)①の認定に当たっては、以下の事由からみて、法違反の食品等が相当程度あるか否かを判断することとした。(施行規則第1条の2第1項関係)
ア 検査命令、収去検査及び国、都道府県等の行政指導に基づく自主検査の結果、法違反の食品等の総数の当該食品等の検査件数全体に対する割合がおおむね5%以上であること
イ 当該食品等が製造等される国又は地域における食品衛生に関する規制及び措置の内容、当該食品等に係る検査体制、検査結果等の食品衛生上の管理の状況
ウ 当該食品等を原因とする食中毒その他当該食品等に起因し、又は起因すると疑われる健康被害が生じたこと
エ 当該食品等を汚染し、又は汚染するおそれがある事態が発生したこと
(3) (1)②の認定に当たっては、以下の事項を総合的に勘案することとした。(施行規則第1条の3関係第1項)
ア 当該食品等が人の健康を損なうおそれの程度
イ (1)①の認定に当たって勘案した(2)のアからエまでに掲げる事項
ウ 当該食品等で法違反のものが引き続き販売、輸入等される可能性
エ 当該食品等による食品衛生上の危害発生防止について、販売、輸入等禁止以外の方法により期待できる効果
2 関係行政機関の長への協議
厚生労働大臣は、法第4条の3第1項の規定による販売、輸入等を禁止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならないこととされた。(法第4条の3第2項関係)
3 禁止の解除
(1) 法第4条の3第3項の販売、輸入等の禁止が行われた場合において、厚生労働大臣は、当該処分に利害関係を有する者の申請に基づき、又は必要に応じ、当該処分に係る特定の食品等に起因する食品衛生上の危害発生のおそれがないと認めるときは薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、当該処分の全部又は一部を告示をもって解除するものとされた。(法第4条の3第3項関係)
(2) 当該特定の食品等に起因する食品衛生上の危害発生のおそれがないと認めるに当たっては、解除しようとする禁止処分の対象とされている特定の食品等について、1の(3)に掲げる事項を勘案しなければならないこととした。(施行規則第1条の4第1項)
(3) また、法第4条の3第3項の規定による解除の申請は、
① 申請者の住所及び氏名(法人の場合は、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名)
② 解除を申請する食品等の範囲
③ その他厚生労働大臣が必要と認める事項
を記載した申請書に、解除を申請する食品等に起因する食品衛生上の危害発生のおそれがなくなったことを証する書類を添えて、厚生労働大臣に提出することによって行うこととした。(施行規則第1条の5第1項関係)
Ⅱ 器具又は容器包装に係る販売、輸入等の禁止処分及びおもちゃに関する準用
1 器具又は容器包装について、改正法によりⅠと同様の改正が行われるとともに(法第9条の2等閑係)、改正省令により施行規則においてⅠと同様の規定整備を行うこととした。(施行規則第4条の4から第4条の7まで)
2 また、法第29条の規定に基づき厚生労働大臣が指定するおもちやについて、改正法により法第4条の3及び法第9条の2の規定が準用され、Ⅰ及びⅡ1と同様の改正が行われるとともに、改正省令により施行規則においてもⅠ及びⅡ1と同様の規定整備を行うこととした。(法第29条第1項等関係)
Ⅲ その他
1 新設規定による禁止に違反した場合の行政処分及び罰則の規定の整備(法第22条及び第23条関係)
営業者が新設規定による禁止に違反して販売、輸入等した食品等又は器具等について、厚生労働大臣又は都道府県知事等が廃棄させ、又はその他営業者に対し、食品衛生上の危害を除去するために必要な措置をとることを命ずることができることとするとともに、営業者が新設規定による禁止に違反して販売、輸入等を行った場合に、営業許可の取消し、営業禁止又は営業停止の処分の対象となることとされた。
また、新設規定による禁止に違反した者については、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することとされた。
2 罰則の引上げ
法第30条から第32条の2までにおいて規定されている罰則について、罰金の額が20万円以下とされていたものは200万円以下に、10万円以下とされていたものは100万円以下に、3万円以下とされていたものは30万円以下に改正された。(法第30条から第32条の2まで関係)
なお、罰則の見直し、強化については、今後、更に検討を行う予定としている。
第三 国産食品等の取扱いについて
国産の食品等については、原因不明等により、法の他条項及び他の食品衛生規制に関する法律の規定に基づく食品衛生上の危害発生防止措置を講ずることができない違反食品等が発見された場合に、厚生労働省は、当該食品等の生産地又は製造所等を所管する都道府県等と協議しながら、新設規定に基づく禁止処分の発動に向けた検討を開始することとするので、このような違反食品等を発見した都道府県等においては、速やかに厚生労働省に報告されたい。
なお、国産の食品等については、各都道府県、政令市(保健所を設置する市)及び特別区において、引き続き、違反率の多寡にかかわらず、違反食品等が発見されるたびごとに、当該食品等の生産地又は製造所等を所管する都道府県等との連携を図りながら、食品衛生法等に基づく採取、製造、加工等の段階での食品衛生上の規制措置を個別に講ずるようお願いする。
第四 法違反者等の名称等の公表
改正法により、厚生労働大臣並びに都道府県知事、政令市長及び特別区長は、食品衛生上の危害の発生を防止するため、法又は法に基づく処分に違反した者の名称等を公表し、食品衛生上の危害の状況を明らかにするよう努めることとされた。(法第29条の2関係)
本条の規定に基づく公表対象、時期、方法等については、以下をご参考の上、適切な運用を図られるようお願いする。
1 「法又は法に基づく処分に違反した者」の意義
「法又は法に基づく処分に違反した者」とは、次の(1)から(3)までの者をいうものとする。
なお、違反が軽微なもの(当該者の故意、重大な過失等によるものか否か、当該違反による健康影響の程度、当該違反に対する社会的な関心の程度等を勘案して判断する。)であって、当該違反について直ちに改善が図られたもの以外の法違反については、原則として、書面による行政指導(行政手続法(平成5年法律第88号)第2条第6号に規定する行政指導をいう。以下同じ。)の対象である。
(1) 次に掲げる規定に違反した営業者で、法第22条、第23条若しくは第24条の規定による処分をされ、又は書面による行政指導を受けたもの
- 法第4条(不衛生食品等の販売等の禁止)
- 法第4条の2(新開発食品の販売禁止)
- 法第4条の3第1項(食品等の包括的輸入禁止)
- 法第5条(病肉等の販売等の制限)
- 法第6条(添加物等の販売等の制限)
- 法第7条第2項(規格及び基準に合わない食品等の販売等の禁止)
- 法第9条(有毒器具等の販売等の禁止)
- 法第9条の2第1項(器具等の包括的輸入禁止)
- 法第10条第2項(規格及び基準に合わない器具等の販売等の禁止)
- 法第11条第2項(表示がない食品等の販売禁止)
- 法第12条(虚偽の又は誇大な表示又は広告の禁止)
- 法第14条第1項(食品等の検査に不合格添加物等の販売等の禁止)
- 法第15条第4項(検査結果の通知を受ける以前の販売等の禁止)
- 法第19条の17第1項(食品衛生管理者の非配置)
- 法第19条の18第3項(有毒物質の混入防止等の措置基準の非遵守)
(2) 次に掲げる規定に違反した指定検査機関であって、法第19条の13の規定による処分をされ、又は書面による行政指導を受けたもの
- 法第19条の3第1号、第3号(指定を受けることができないもの)
- 法第19条の4第1号(指定の適格要件)
- 法第19条の6第1項、第3項(業務規程)
- 法第19条の10(役員等の解任命令)
- 法第19条の12(適合措置命令)
(3) 次に掲げる規定による基準又は条件に違反した営業者であって、法第23条又は第24条の規定による処分をされ、又は書面による行政指導を受けたもの
- 法第20条(営業施設の業種別基準の非遵守)
- 法第21条第2項第1号又は第3号(営業許可の欠格)
- 法第21条第3項(営業許可条件の不適合)
2 公表時期
処分又は書面による行政指導を行った後、速やかに公表するものとする。
3 公表内容
(1) 処分又は書面による行政指導を受けた営業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)
(2) 処分又は書面による行政指導の対象となった食品等
(3) 処分又は書面による行政指導の対象のとなった施設等
(4) 処分又は書面による行政指導を行った理由
(5) 処分又は書面による行政指導の内容
(6) 処分又は書面による行政指導指導を行った措置状況
4 公表方法
報道記者発表、ホームページに掲載すること等により公表するものとする。