(別 紙)
アセスルファムカリウム
Acesulfame Potassium
別名: アセスルファムK
C4H4KNO4S: 201.24
1.試験法の概要
食品中のアセスルファムカリウムは、透析法により抽出した後、オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラム及び強陰イオン交換型カートリッジカラムでクリーンアップし、液体クロマトグラフィーにより測定する。
2.試験法(液体クロマトグラフィー)
(1)検体の採取と試料の調製
一般試料採取法を準用する。
(2)試料液の調製
①液状試料
試料約約20gを精密に20 gを精密に量り、透析内液用溶液1)20 mlを用いてセロハンチューブ透析膜チューブ1)に移した後、セロハンチューブの上端を密封し、200 mlのメスシリンダーに入れる。次いでメスシリンダー内に透析外液用溶液1)でを加えて全量2)を200 mlとする。ときどき揺り動かしながら室温で24~48時間透析3)を行う。透析液20 mlを正確に採り、25 mlのメスフラスコに入れ、0.1 mol/l臭化テトラ-n-プロピルアンモニウム溶液2 mlを加え、水を加えて正確に25 mlとする。この液5 mlを正確に採り、オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラム4)に負荷し5)、水10 mlを通して洗浄する。次いで、オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラムの溶出口に強陰イオン交換型カートリッジカラム6)を接続し、メタノール・水混液(4:6) 10 mlを負荷5)後、オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラムを除去する取り外す。強陰イオン交換型カートリッジカラムに0.3w/v %リン酸リン酸5 ml、次いで水5 mlを通して洗浄した後、0.3 mol/l塩酸で溶出し、溶出液の全量を正確に5 mlとし、試料液とする。
②固形試料
試料を細切あるいは粉砕した後、約約20gを精密に20 gを精密に量り、透析内液用溶液20 mlを用いてセロハンチューブ透析膜チューブに移した後、液状試料と同様に操作する。
(3)検量線用標準液の調製
アセスルファムカリウム0.100 g0.100gを正確に量り、水に溶解して正確に100 mlとする。その10 mlを正確に採り、水を加えて正確に100 mlとしたものをアセスルファムカリウム標準液とする(本液1mlはアセスルファムカリウム100mgを含む)。アセスルファムカリウム標準液0、1、2、4、6 ml及び10 mlを正確に採り、水を加えてそれぞれ正確に10 mlとし、検量線用アセスルファムカリウム標準液とする(これらの液1 mlは、それぞれアセスルファムカリウム0、10、20、40、60 mg及び100 mgを含む)。
(4)測定法
①測定条件
紫外部吸収検出器付液体クロマトグラフにより、次の条件によって測定する7、8)。
カラム充てん剤:シリカゲルNH
29)
カラム管:内径4.6 mm、長さ250 mm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル・1vol%リン酸リン酸混液(6:4)
流速:1.0 ml/分
測定検出波長:230 nm
②検量線
検量線用アセスルファムカリウム標準液それぞれ10 lずつを正確に採り、液体クロマトグラフに注入し、ピーク面積からアセスルファムカリウムの検量線を作成する。
③定量
試料液10mlを正確に採り、液体クロマトグラフに注入し、得られたピーク面積と検量線によって試料液中のアセスルファムカリウム濃度(mg/ml)を求め、次式によって検体中のアセスルファムカリウム含量C(g/kkg)を計算する10)。
A:試料液中のアセスルファムカリウム濃度(g/ml)
W:試料の採取量(g)(g)
④アセスルファムカリウムの確認
フォトダイオードアレイ検出器でUVスペクトルを確認する11、12)。
lmax:227 nm、e:1.0762×104 (出典:Merck Index 13版)
試薬・試液
1. 透析内液用溶液:塩化ナトリウム100 gを0.01mol/l塩酸に溶解して1,000 mlとする。
2. 透析外液用溶液:0.01 mol/l塩酸
3. 臭化テトラ-n-プロピルアンモニウム:[特級]
4. メタノール:[特級]
5. リン酸:[特級]
6. 0.3w/v%リン酸:リン酸3 gに水を加えて1,000 mlとする。
7. アセトニトリル:[特級高速液体クロマトグラフィー用]
8. 1vol%リン酸リン酸:85%リン酸11.8gリン酸10 mlに水を加えて1,000 mlとする。
9. オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラム:使用前にメタノール5 ml、次いで水10 mlで順次洗浄する。
10.強陰イオン交換型カートリッジカラム:使用前にメタノール5 ml、次いで水10 mlで順次洗浄する。
[注]
1) 透析膜チューブ(透析用セルロースチューブ)としては、透析膜36/32(平面幅43 mm、直径27 mm、膜厚0.0203 mm、Viskase社製)などがある。
2) 試料、透析内液、透析外液の合計量。
3) アセスルファムカリウムは水分含量の高い食品では24時間で十分透析されるが、穀類の調整品や魚介乾製品などの水分含量の低い食品及びはっ酵乳などの乳製品では透析率が低下する傾向があるため、48時間透析を行う。
4) オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラムとしては、Sep-Pak Vac C18(充てん剤量1 g、Waters社製)やMega Bond Elut C18(充てん剤量1 g、Varian社製)などがある。
5) 毎分3~4 mlの流速で流す。
6) 強陰イオン交換型カートリッジカラムとしては、Bond Elut SAX(充てん剤量500 mg、Varian社製)などがある。
7) 本法の透析抽出法及びHPLC測定法はサッカリン及びアスパルテームの分析にも使用できる。なお、サッカリン及びアスパルテームのHPLC測定における検出波長は230 nmよりも210 nmの方が感度がよい。
8) アセスルファムカリウムの高速液体クロマトグラム例を図1に示す。
9) HPLC分析に用いるシリカゲルNH2カラムは、シリカゲルにアミノプロピル基が化学結合した順相系カラムであり、製品としては、Cosmosil 5 NH2-MS(ナカライテスク(株)製)、LiChrosorb NH2(Merck社製)、YMC-Pack NH2(ワイエムシイ(株)製)等がある。なお、シリカゲルNH2カラムは移動相を水に変えて洗浄すると再現性が悪くなるので洗浄は移動相で行うとよい。
10) 本法による定量限界は、試料中0.01 g/kgである。
11) アセスルファムカリウムのUVスペクトルを図2に示す。
12) UVスペクトルによる確認で疑義がある場合には、ジアゾメタンによるメチル化誘導体をGC-MSで分析する方法が報告されている。(参考文献:守安貴子ら、食品衛生学雑誌、34(4), 277-282 (1993))
図1 アセスルファムカリウムの液体クロマトグラム
カラム:LiChrosorb NH2(Merck社製)。測定条件は、(4)測定法①測定条件の通り。検出波長 太線:230 nm、細線:210 nm
アセスルファムカリウム標準液 1 mg/ml の分析。参考に、アスパルテーム 1 mg/ml、サッカリンナトリウム 1 mg/ml をアセスルファムカリウム標準液に加えた。
APM:アスパルテーム、SA:サッカリンナトリウム、AK:アセスルファムカリウム
図2 アセスルファムカリウム(100 mg/ml)のUVスペクトル