食品化学行政の円滑な遂行につきましては、日頃よりご協力を賜りありがとうございます。
残留農薬迅速分析法案について、ご質問等をお寄せいただき、ありがとうございました。
今般、ご連絡いただいたご意見等及びそれに対する回答を、委員会の協力を得て、別添のとおりとりまとめましたので送付いたします。
なお、残留農薬迅速分析法については、所要の修正を行った上で、本日付で通知しました。また、解説については食品衛生研究(5、6月号)に投稿される予定です。
事務局
食品化学課(担当:山口、今井)
電話:03-3595-2341
内線:2488、2487
FAX:03-3503-7964
(1)前文について
今後、各地研で行われているスクリーニング法について、全ての農薬と農産物の組みあわせについて本法を実施するのは非常に困難。
本法の実施は義務付られるものではないが、本法を用いる際にはあらかじめ所定の方法により検証することが必要である。 |
(2)迅速法導入時の評価について
①回収率、検出限界が確認できれば検査対象農薬としてよいか。
今後告示される農薬も含めて所定の条件を満たす農薬を検査対象として差し支えない。 |
②告示法で「検出限界」=「基準値」のものがあるが、これを対象とする場合でも基準値の50%以下となるよう濃縮等の操作が必要か。
濃縮等の操作によって、基準値の概ね50%以下となるようにすることが必要である。 |
③予め、全ての農薬と農産物の組み合わせについて添加回収試験を実施して回収率、RSDを確保することは必要と思うが不可能である。農産物分類の中分類から1種を選んでの添加回収試験ではどうか。RSDを算出する検体数(n)はいくつか。
導入時には各農作物毎に確認する必要がある。n=3が最低数である。 |
④導入時といえども全ての農作物に添加回収実験をするのは負担が大きいので類似農産物でまとめられないか。
⑤告示法で検出された農薬が迅速法では検出限界以下になる可能性がある。既に通知された検出限界を無視してよいか。
本法の検出限界は基準値の概ね50%以下であることを確保することを求めているが、基準値がN.D.のものを除き、この条件を満たすのであれば、検出限界が既に通知されたものと異なっていても差し支えない。 |
(3)日常の添加回収試験(精度管理)について
①導入時に検討した農作物の内、回収率が変動しやすかったものだけでよいのではないか。
この項は変更し、具体的な方法は解説に記載することとした。どの農作物を選択するかは各担当者によって科学的に検討されるべきものであるが、内部精度管理の観点から、回収率が安定な農作物であっても一定の頻度で添加回収試験と検出限界の確認を行う必要があると考える。 |
②「回収率が変動しやすい農薬を含む数農薬について添加回収試験を実施して-」とあるが、解説の表4に「回収率が変動しやすい農薬の例」として挙げられている農薬の数は全部で20を超える。20の中から数農薬をピックアップしてよいのか。また、ピックアップの仕方を示してほしい。
この項は変更し、具体的な方法は解説に記載することとした。表4に固有名を挙げた農薬は分析操作が適切に実施されたことを保証するための農薬の例であるが表4の農薬と回収率が安定している農薬の中からできるだけ多くの農薬を選んで添加することが望ましい。なお、本法は定量にGC/MSを採用していないので、表4に挙げた農薬の全てを一つの試料に添加して測定することは困難である。 |
(4)告示法での再試験について
①残留基準値の70%以上として、RSDを考慮しないことにしてはだめか。
本法の実施にあたっては、所定の条件を満たすことが必要である。なお、一般に試験室内のRSDを確認することが必要であり、また、試験室内RSDが20%以上となるような試験法は信頼性が低いと考えられる。 |
②立て前として仕方ないのかも知れないが、残留基準への判定を告示法による再分析としている点に反対。
(5)分析法について
①分析法の概略にある「測定を妨害する物質を含む試料については、上記以外の各種ミニカラムによる精製を追加する。」は、応用的な操作なので、フローシートの脚注に「追加してもよい」「追加することができる」程度に加えてはどうか。
②回収率、検出限界が保証できれば、固相抽出の代わりに溶媒転落を用いてもよいか。
固相抽出の代わりに溶媒転溶を使うことは、本法の開発にあたり想定していない。また、一般に、固相抽出では極性農薬の回収率が低いという問題がある。 |
③抽出液B(4ml)から2mlを分取した残りは正確に2mlとみなしてよいか。よいのであれば、抽出液Aの残り1mlを有効に利用できないか。
科学的に正確に2mlとみなすことは、ピペットへの付着等のため、困難であるが、本法の実施上、2mlとみなすことは差し支えない。 |
④アリウム属野菜はどの程度適用可能か。
電子レンジ加熱法の結果を解説に追加する予定である。 |
(6)GC/MSによる確認について
①GC/MSによる確認は、基準を超えて検出された場合と理解してよいか。
農薬が検出された場合は、正確を期すため、その値にかかわらずGC/MSで確認することが望ましいが試験溶液を精製、濃縮するなどしても技術的に困難な場合は、異なるGC条件による測定やHPLCによる測定などで確認を行うことも考えられる。 |
②検出限界付近濃度でGC/MSによる確認が可能か。
③GC/MSで確認できないと定量値になり得ないのであれば、告示法の検出限界の多くは残留基準値を上回ってしまう。
(7)その他
①塩析アセトニトリル法などを採用して行程を短縮すべき。
②定性及び定量試験にGC/MS法の採用を検討してほしい。
(8)今後に対する要望、提案等
①残農分析法検討斑を存続し、検討項目の拡大と細部にわたる指針を示してほしい。また、新しい分析法や機器を、併記でもよいから取り入れてほしい。
②特に柑橘類のN-メチルカーバメイトの確認にLC/MSの導入が必要である。
③GPCからの溶出画分を2つに分けて前の画分だけ精製する方法もある。
④GPCでトルエン/アセトン系を用いればメトプレンをクロロフィル、脂肪と分離できる
⑤検査項目が増え、ホモジナイズ段階で処理が必要な農薬もいくつかあることから、サンプリング量を1Kgより減らしてもらえないか。
⑥市販のミニカラムに依存しすぎている。
(9)解説について
①ケイソウ土カラム、シリカゲル及びフロリジルミニカラムのメーカーを示してほしい。
試験法の試薬 試液の記載内容から理解できるものと考えている。 |
②GPCカラムの寿命についての情報がほしい。
試料や使用頻度、使用間隔等によって異なるので、一概に回答することは困難である。なお、定期的に溶出パターンを確認して使用することが必要である。 |
③SAX/PSAの使用方法の解説がほしい。
④作物によってはカラム処理の省略に加えてGPCも省略してよいか。
分析を直接妨害する成分は認められなくても、共存成分がGC注入口、カラム等を汚染することによって分析精度が低下する恐れがあることに留意することが必要であり、GPCの省略は本法の開発にあたり想定していない。 |