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平成8年02月05日

 

 

(別添) 「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」

 

(別添)
「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」

第1章 総則
第1 目的
第2 用語の定義
第3 適用範囲

第2章 製造過程に関する安全性評価
第1 組換え体の製造方法(施設設備を含む)
第2 組換え体以外の製造原料及び製造器材
第3 生産物の精製

第3章 生産物に関する安全性評価
第1 組換え体を食さない場合の安全性評価
第2 組換え体を食する場合の安全性評価

第4章 厚生大臣の確認
別表1 組換え体を食さない場合の組換え体等の安全性評価に必要な資料
別表2 組換え体を食する場合の組換え体等の安全性評価に必要な資料
・ 付表1 抗生物質耐性マーカーの安全性評価に必要な資料
・ 付表2 アレルギー誘発性に関する安全性評価に必要な資料
別表3


第1章 総則

第1 目的
 本指針は,組換えDNA技術を応用して生産された食品・食品添加物の安全性評価に必要な基本的要件を定め、もってその安全性の確保を図ることを目的とする。

第2 用語の定義
 本指針で用いられる用語を以下のように定義する。
1 組換えDNA技術
 酵素等を用いた切断、再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNAを作製し、それを生細胞に移入し、増殖させる技術
2 宿主
 組換えDNA技術において、DNAが移入される生細胞
3 ベクター
 目的とする遺伝子を宿主に移入し、増殖、発現させるための運搬体DNA
4 挿入DNA(又は遺伝子)
 ベクターに挿入される異種のDNA(又は遺伝子)
5 組換え体
 組換えDNAを含む宿主細胞
6 遺伝子産物
 挿入遺伝子に由来するすべての物質
7 生産物
 組換えDNA技術を応用して生産されるすべての物質

第3 適用範囲
 本指針は、既存のものと同等とみなし得る生産物を、食品・食品添加物として利用する場合に適用する。ただし、組換え体そのものを食する生産物にあっては、組換え体が種子植物の場合に適用することとし、生産物が既存のものと同等とみなし得るかについて、次の(1)~(4)の資料により判定を行う。
(1)遺伝的素材に関する資料
(2)広範囲なヒトの安全な食経験に関する資料
(3)食品の構成成分等に関する資料
(4)既存種と新品種の使用方法の相違に関する資料

第2章 製造過程に関する安全性評価
 組換え体を食さない場合には、生産物の安全性確保のため、製造過程等における安全性の評価を、組換え体の製造方法(作成方法及び施設設備を含む)、製造原料及び製造器材等について行う。

第1 組換え体等の製造方法(作成方法及び施設設備を含む)
 GILSP(good industrial large scale practice)又はカテゴリー1の製造に用い得る非病原性の組換え体を用いることを原則とする。具体的には別表1に規定する組換え体等の安全性評価項目に関する資料により安全性の評価を行う。

第2 組換え体以外の製造原料及び製造器材
 次の(l)及び(2)の資料により安全性の評価を行う。
(1)食品・食品添加物の製造原料又は製造器材としての使用実績に関する資料
(2)食品・食品添加物の製造原料又は製造器材としての安全性に関する資料、又は別表3に規定する試験の成績

第3 生産物の精製
 生産物の精製方法及びその効果により評価を行う。

第3章 生産物に関する安全性評価
 生産物の安全性は,組換えDNA技術により生産物に付加されたすべての因子について評価を行う。

第1 組換え体を食さない場合の安全性評価
1 次の(1)~(4)の資料により安全性の評価を行う。
(1)組換え体の混入を否定する資料
(2)製造に由来する不純物の安全性に関する資料
(3)生産物の精製について第2章の第3に関する資料
(4)含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する資料

2 1により安全性の知見が得られていない場合は、別表3に規定する試験の成績により安全性の評価を行う。

第2 組換え体を食する場合の安全性評価
1 別表2(付表1,2を含む)に規定する組換え体等の安全性評価項目に関する資料により安全性の評価を行う。

2 1により安全性の知見が得られていない場合は、別表3に規定する試験の成績により安全性の評価を行う。必要に応じ栄養試験を行うことがある。

第4章 厚生大臣の確認
 組換えDNA技術応用食品・食品添加物を製造又は輸入しようとする者又は必要と認められる者は、その安全性の確保を期するため、当該生産物が本指針に適合していることの確認を厚生大臣に求めることができる。


    
(別表1)組換え体を食さない場合における組換え体等の安全性評価に必要な資料

① 組換え体の利用目的及び利用方法

② 宿主
a 分類学上の位置付け(学名及び株名)に関する資料
b 病原性,有害生理活性物質の生産に関する資料(非病原性であること。)
c 寄生性・定着性に関する資料
d 外来因子(ウイルス等)に関する資料(病原性の外来因子に汚染されていないこと。)
e 自然環境を反映する実験条件下での生存・増殖能力に関する資料
f 有性又は無性生殖周期と交雑性に関する資料
g 食品に利用された歴史に関する資料
h 生存・増殖能力を制限する条件に関する資料
i 宿主の類縁株の病原性、有害生理活性物質の生産に関する資料

③ ベクター
a 名称
b 由来に関する資料
c 性質に関する資料
ア DNAの分子量
イ 制限酵素による切断地図
ウ 有害塩基配列等の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
d 薬剤耐性に関する資料
e 伝達性に関する資料
f 宿主依存性に関する資料
g 発現ベクターの作成方法に関する資料
h 発現ベクターの宿主への挿入方法・位置に関する資料

④ 挿入遺伝子関連
1)供与体
a 名称、分類に関する資料
2)挿入遺伝子
a 構造に関する資料
ア 有害塩基配列等の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
b 性質に関する資料
ア 挿入DNAの機能に関する資料
イ 制限酵素による切断地図
ウ 分子量

⑤ 組換え体
a 組換えDNA操作により新たに獲得された性質に関する資料(非病原性であること。)
b 外界における生存・増殖性に関する資料
c 組換え体の生存・増殖能力の制限に関する資料*1
d 組換え体の不活化法に関する資料
e 宿主との差異に関する資料*2


1.「組換えDNA実験指針」の表2又は表3に掲げられているものにあっては上記項目のうち既知のものは省略することができる。
2.GILSP又はカテゴリー1の製造に用い得る組換え体の備えるべき性質基準についてはOECD「工業、農業及び環境で組換え体を利用する際の安全性の考察に関する勧告」(1986年)を基礎とする。
*1:工業的利用の場においては、宿主と同程度に安全であり、外界においては限られた増殖能力しか示さず環境に悪い影響を及ぼさないこと。
*2:宿主との比較による組換え体の非病原性、有害生理活性物質の非生産に関する資料を添付すること。



(別表2)組換え体を食する場合における組換え体等の安全性評価に必要な資料

① 組換え体の利用目的及び利用方法

② 宿主
a 分類学上の位置付け(学名、品種、系統名等)に関する資料
b 遺伝的先祖に関する資料
c 有害生理活性物質の生産に関する資料
d アレルギー誘発性に関する資料
e 寄生性・定着性に関する資料
f 外来因子(ウイルス等)に関する資料(病原性の外来因子に汚染されていないこと。)
g 自然環境を反映する実験条件下での生存・増殖能力に関する資料
h 有性生殖周期と交雑性に関する資料
i 食品に利用された歴史に関する資料
j 安全な摂取に関する資料
k 生存・増殖能力を制限する条件に関する資料
l 宿主の近縁種の有害生理活性物質の生産に関する資料

③ ベクター
a 名称
b 由来に関する資料
c 性質に関する資料
ア DNAの分子量
イ 制限酵素による切断地図
ウ 有害塩基配列等の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
d 薬剤耐性に関する資料
e 伝達性に関する資料
f 宿主依存性に関する資料
g 発現ベクターの作成方法に関する資料
h 発現ベクターの宿主への挿入方法・位置に関する資料

④ 挿入遺伝子関連
1)供与体
a 名称、由来及び分類に関する資料
b 安全な摂取に関する資料
2)挿入遺伝子
a 構造に関する資料
ア プロモーター
イ ターミネーター
ウ 有害塩基配列の有無(既知の有害塩基配列を含まないこと。)
b 性質に関する資料
ア 挿入DNAの機能に関する資料
イ 制限酵素による切断地図
ウ 分子量
c 純度に関する資料
d 安定性に関する資料*1
e コピー数に関する資料*1
f 発現部位、発現時期、発現量に関する資料*1
g 抗生物質耐性マーカーの安全性に関する資料*1*2
h 外来のオープンリーディングフレームの有無とその転写や発現の可能性に関する資料*1

⑤ 組換え体
a 組換えDNA操作により新たに獲得された性質に関する資料
b 遺伝子産物のアレルギー誘発性に関する資料*3
c 遺伝子産物の毒性影響に関する資料(アレルギー誘発性に関する資料を除く)
d 遺伝子産物の代謝経路への影響に関する資料*4
e 宿主との差異に関する資料*5
f 外界における生存・増殖能力に関する資料
g 組換え体の生存・増殖能力の制限に関する資料
h 組換え体の不活化法に関する資料
i 諸外国における認可・食用等に関する資料
j 作出・育種・栽培方法に関する資料
k 種子の製法及び管理方法
*1:組換え体内における変化等に関する考察も行うこと。
*2:付表lに従い資料を準備すること。
*3:付表2に従い資料を準備すること。
*4:在来種中の基質と反応する可能性に関する資料を準備すること。
*5:栄養・抗栄養素に関する資料及び,含有量の変動により有害性が示唆される成分の変動に関する資料は必ず含むこと。



(別表2 付表1)抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性評価に必要な資料

 抗生物質耐性マーカー遺伝子に関する安全性は,次の(1)~(2)の資料により評価する。
(1)遺伝子及び遺伝子産物の特性に関する資料
・構造及び機能
・耐性発現のメカニズムと使用方法,関連代謝産物
・同定及び定量方法
・調理又は加工による変化(熱や物理的圧力に対する安定性)
・消化管内環境における変化(酸や消化酵素に対する安定性)

(2)遺伝子及び遺伝子産物の摂取に関する資料
・予想摂取量
・耐性の対象となる抗生物質の使用状況
・通常存在する抗生物質耐性菌との比較
・経口投与した抗生物質の不活化推定量とそれに伴って問題が生ずる可能性

(別表2 付表2)アレルギー誘発性に関する安全性評価に必要な資料

 アレルギー誘発性に関する安全性は、次の(1)~(6)の資料により評価する。
(1)供与体の生物の食経験に関する資料
(2)遺伝子産物がアレルゲンとして知られているかに関する資料
(3)遺伝子産物の物理化学処理に対する感受性に関する資料*1
(4)遺伝子産物の摂取量を有意に変えるかに関する資料
(5)遺伝子産物と既知の食物アレルゲンとの構造相同性に関する資料
(6)遺伝子産物が一日蛋白摂取量の有意な量を占めるかに関する資料

1.合理的な理由があれば、一部を省略することができる。

2.(1)~(6)により安全性が確認されない場合は、
・構造相同性が認められたアレルゲンに対する患者IgE抗体と遺伝子産物との結合能に関する資料*2
・主要アレルゲンに対する患者IgE抗体と遺伝子産物との結合能に関する資料*2*3を提出し、厚生省と協議を行う。
*1:人工胃液、人工腸液による処理および加熱処理に対する感受性を蛋白質電気泳動法及びウエスタンブロット法により調べる。
*2:ウエスタンブロット法及びELISA法によるアレルギー患者のIgE抗体結合能の評価を行う。
*3:卵、ミルク、大豆、米、小麦、ソバに対するアレルギー患者血清を用いて検査する。



(別表3)

(1)急性毒性に関する試験
(2)亜急性毒性に関する試験
(3)慢性毒性に関する試験
(4)生殖に及ぼす影響に関する試験
(5)変異原性に関する試験
(6)がん原性に関する試験
(7)その他必要な試験(腸管毒性試験等)
1 試験成績は,GLP(Good Laboratory Practice)適合施設でCLPに従って行われたものであり、かつ、その試験成績のうち主要な部分が公表されたものであることを必要とする。
2 合理的な理由があれば全部又は一部を省略することができる。


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