乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年厚生省令第52号。以下「乳等省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号。以下「告示」という。)の一部が、それぞれ平成7年12月26日厚生省令第62号及び同日厚生省告示第218号をもって改正され、その内容については同日衛乳第265号をもって厚生省生活衛生局長より各都道府県知事、政令市市長及び特別区区長あて通知されたところであるが、さらに下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第1 試験法
今回残留基準を設定する動物用医薬品試験法については、次に掲げる各項目の注意事項に留意されたいこと。
1 イベルメクチン試験法
操作法において、標準品を試験する場合は、標準品をメタノールに逓減希釈し、試験溶液と同様の方法によりジメチルホルムアミド、無水酢酸及びメチルイミダゾールの混液(9:3:2)で誘導体化し、精製したものを用いること。
2 オキシテトラサイクリン試験法
(1) 試験溶液の調製
① 遠心分離中の温度は室温に保持すること。
② 吸引ろ過後ろ液が濁っている場合は、再度ろ液について遠心分離を行うこと。
③ スチレンジビニルベンゼン共重合体カラムクロマトグラフにおいて、試験溶液を注入後、水30mlを数回に分けて、効率よくカラム中に残留するエチレンジアミン四酢酸を洗浄すること。
(2) その他
同時に多数の検体の試験を行う等スクリ一ニング試験法を併用した方が効率的と判断される場合には、別添1の試験法を用いて陽性と判断されたものについてのみ、本試験法による試験を実施しても差し支えない。
3 クロサンテル試験法
(1) 試験溶液の調製
抽出及び精製に用いるガラス器は全て褐色のものを用いること。
(2) 操作法
① 検体が腎臓又は脂肪の場合は、試験溶液を水及びメタノールの混液(2:7)で3倍に希釈した溶液で実施すること。
② 羊の組織が検体の場合には、保持時間約60分のところに検体に由来するピークが認められることがあるので、2回目以降に注入する試験溶液中のクロサンテルの位置に重ならないよぅに配慮すること。
(3) その他
本試験法によりクロサンテルが検出された場合には、紫外可視多波長検出器を用いて確認することが望ましいこと。
4 ゼラノール、α-トレンボロン及びβ-トレンボロン試験法
(1) 試験溶液の調製
カラムクロマトグラフィー用弱塩基性陰イオン交換樹脂は、ロットにより活性度が異なるので、事前に回収率のチェックを行うこと。
(2) 操作法
検体が肝臓の場合は、試験溶液をアセトニトリル及び水の混液(1:1)で5倍に対希釈した溶液で実施すること。
(3) その他
高速液体クロマトグラフィーにおいて、夾雑物のピークによりゼラノールの測定が困難な場合には、別添2の方法による試験を実施しても差し支えないこと。
5 フルベンダゾール試験法
本試験法によりフルベンダゾールが検出された場合には、紫外可視多波長検出器を用い確認することが望ましいこと。
第2 試験法の定量下限
今回残留基準を設定した各試験法の定量下限を以下に示すので、試験を行う際に留意すること。
試験法の種類
|
対象食品
|
定量下限
|
イベルメクチン試験法 |
肝臓、脂肪 |
0.005ppm |
オキシテトラサイクリン試験法 |
筋肉、魚介類、乳 |
0.02ppm |
肝臓、腎臓、鶏卵 |
0.04ppm |
脂肪 |
0.002ppm |
クロサンテル試験法 |
肝臓、筋肉 |
0.1ppm |
腎臓、脂肪 |
0.3ppm |
ゼラノール、α-トレンボロン及びβ-トレンボロン試験法 |
肝臓 |
0.01ppm |
筋肉 |
0.002ppm |
フルベンダゾール試験法 |
肝臓、筋肉 |
0.002ppm |
鶏卵 |
0.04ppm |
(別添1)
オキシテトラサイクリンのスクリーニング法
1 試験菌液の調製
継代保存した試験菌株(Bacillus mycoides ATCC 11778を用いる。以下試験菌株という。)を継代保存用培地に塗抹し、30度で1週間培養して芽胞を形成させる。なお、この場合、芽胞染色して顕微鏡で確認し、1視野に80%以上の芽胞が形成していることを確認すること。芽胞形成が悪い場合は、さらに10日間以上培養し、改善が認められない場合には、試験菌の変異等が考えられるので、このような試験菌は使用しないこと。
次いで継体保存用培地上に発育した菌苔をかきとって滅菌生理食塩水に浮遊させた後、65度で30分間加熱する。これを毎分3,000回転で20分間遠心分離し、沈殿を滅菌生理食塩水に再び浮遊させ、これを芽胞原液とする。この芽胞原液を用いて逓減希釈液を作り、これらの希釈液を約50度に保温した種層用培地に1%の割合で混和し、それぞれの8mlをペトリ皿(内径80~90mmの滅菌したペトリ皿を用いる。以下ペトリ皿という。)に流して平板とする。各平板上にオキシテトラサイクリン0.2μg力価/mlを含ませたペーパーディスク(直径10mm、厚さ1.1~1.2mmのペーパーディスクを121度で15分間高圧滅菌し、十分乾燥させたものを用いる。以下ペーパーディスクという。)を置いたもの又は各平板上に置いた円筒(外径8mm、内径6mm、高さ10mmの乾熱滅菌した円筒を用いる。以下円筒という。)にオキシテトラサイクリン0.2μg力価/mlを250μl注入したものを30度で17±1時間培養し、阻止円の直径が14±1mmを示す平板を見いだし、それに相当する希釈液を試験菌液とする。このときの芽胞数は106~107/mlとなっている。
継代保存用培地 |
培地1,000ml中、ペプトン10.0g、肉エキス5.0g、塩化ナトリウム2.5g及び寒天15.0gを含むもの。滅菌後のpHを6.5±0.1に調整する。 |
種層用培地 |
培地1,000ml中、ペプトン6.0g、肉エキス1.5g、酵母エキス3.0g及び寒天15.0gを含むもの。滅菌後のpHを5.8±0.1に調整する。 |
2 試験溶液の調製
(1) 検体が脂肪の場合
試験溶液の調製は、乳等省令及び告示に示されたオキシテトラサイクリン試験法の精製法中1.36%リン酸一カリウム溶液2.5mlを1.36%リン酸一カリウム溶液1mlに読み替えて実施する。
(2) 検体が脂肪以外の場合
試験溶液の調製は、乳等省令及び告示に示されたオキシテトラサイクリン試験法にしたがって実施する。
3 操作法
滅菌後、菌の生育を阻害しない温度まで冷却した種層用培地に、試験菌液を1mlあたり104~105個になるよう添加し、十分に混和した後、その8mlをペトリ皿に流して水平に静置して固化させ検査用平板とし、以下に示す(1)又は(2)の方法を用いて操作する。
(1) ペーパーディスクを用いる方法
検査用平坂上に、試験溶液及び0.2μg力価/mlの標準品溶液を浸したペーパーディスクを、約10分間風乾した後、各ペーパーディスクを正方形の各頂点の対角になるよう配置し、ピンセットの先で軽く固着させる。これを30分間以上冷蔵放置後、30±1度で17±1時間培養する。培養後、形成された阻止円の直径を測定し、それぞれ2箇所の平均値を求める。
試験溶液から得られた阻止円直径(平均値)が、0.2μg力価/mlの標準品溶液から得られた阻止円直径(平均値)以上のものを陽性と判断する。なお、この場合の阻止円直径は14mm程度である。
(2) 円筒平板を用いる方法
検査用平板上に4個の円筒をそれぞれ正方形の各頂点となるよう配置し、対角になる2個の円筒に試験溶液及び0.2μg力価/mlの標準品溶液をそれぞれ250μlを注入し、30±1度で17±1時間培養する。培養後、形成された阻止円の直径を測定し、それぞれ2箇所の平均値を求める。
試験溶液から得られた阻止円直径(平均値)が、0.2μg力価/mlの標準品溶液から得られた阻止円直径(平均値)以上のものを陽性と判断する。なお、この場合の阻止円直径は18mm程度である。
4 その他
本法による検出限界は、0.2μg力価/ml標準品溶液と同等の阻止円を形成した場合、肝臓、腎臓及び鶏卵において0.2ppm、筋肉、乳及び魚介類において0.1ppm、脂肪において0.01ppmである。
(別添2)
ガスクロマトグラフ―質量分析計を用いるゼラノールの試験法
1 装置
ガスクロマトグラフ―質量分析計を用いる。
2 試験溶液の調製
告示に示されたゼラノール、α‐トレンボロン及びβ-トレンボロン試験法にしたがって調製した試験溶液100μlを小試験管中に正確に量り採り、それぞれ内部標準物質としてジエチル-1,1,1',1'-d4-スチルベストロール-3,3',5,5'-d4(以下DES-d8という。)0.01μg/mlの酢酸エチル溶液100μlを加え、窒素ガス気流下、40度で濃縮乾固する。この残留物に酢酸エチル25μlを加えて溶かし、これを本法の試験溶液とする。
3 操作法
(1) 操作は、シリル化剤(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド及びN-トリメチルシリルアミドの混液(98:2))2μl、空気1μl及び試験溶液2μl又は以下の方法により調製した標準品溶液2μlの順に同一のマイクロシリンジに採り、ガスクロマトグラフ―質量分析計に注入して実施する。
標準品溶液 |
0.1μg/mlのゼラノール標準品溶液20、50及び100μlを小試験管中に正確に量り採り、DES-d80.01μg/ml酢酸エチル溶液100μlを加え、窒素ガス気流下、40度で濃縮乾固する。この残留物に酢酸エチル25μlを加えて溶かし、これを標準品溶液とする。 |
(2) 次の操作条件で試験を行う。
カラム |
内径0.2mm、長さ25mのケイ酸ガラス製の細管に、ガスクロマトグラフィー用5%フェニルメチルシリコンを0.11μmの厚さで被覆したもの。 |
カラム温度 |
130度で1分間保持し、その後毎分30度で昇温し、250度に到達後、毎分6度で昇温し、295度に到達後2.5分保持する。 |
試験溶液注入口温度 |
260度 |
注入方式 |
スプリットレス |
イオン源温度 |
180度 |
イオン化電圧 |
70eV |
イオン化法 |
EI |
キャリアガス圧力 |
キャリアガスとしてヘリウムを用いる。ガス圧力を34kPaに調整する。 |
設定質量数 |
m/z433、307(ゼラノール)、m/z420(内部標準物質) |
4 その他
本法による定量下限は、肝臓において0.01ppm、筋肉において0.002ppmである。