食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律の施行について(施行通知)
近年、食品の安全性に関する問題の複雑多様化、輸入食品の著しい増加及び国民の栄養摂取状況の変化並びに規制の国際的整合化の要請など食品衛生行政を取り巻く環境は大きく変化していることから、これらに対応する食品保健対策を総合的に推進することを目的として、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成7年法律第101号。以下「改正法」という。)が平成7年5月24日をもって公布されたので、その運用に当たっては、次の事項に留意の上、貴管下関係者に対する周知徹底をはじめ、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第1 食品衛生法の一部改正関係
1 添加物に関する事項
(1)人の健康を損なうおそれのない場合として厚生大臣が食品衛生調査会の意見を聴いて定める場合に限り販売又は販売の用に供するための製造、輸入等が認められる添加物の範囲を、化学的合成品たる添加物から、天然香料(動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用されるもの)及び一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものを除く添加物に拡大したこと。
(2)厚生大臣は、この法律の公布の際現に販売又は販売の用に供するための製造、輸入等がされている添加物(改正前の食品衛生法(以下旧食品衛生法」という。)第2条第3項に規定する化学的合成品たる添加物並びに天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものを除く。以下「天然添加物」という。)の名称を記載した表(以下「既存添加物名簿」という。)を公示するものとし、この名簿に記載されている添加物については、この法律による改正後の食品衛生法(以下「新食品衛生法」という。)第6条の規定を適用しないこととし、その具体的範囲及び手続等は次のとおりであること。
① 厚生大臣は、次に掲げる天然添加物の名称を記載した既存添加物名簿を作成し、これを平成7年8月24日までに公示するものであること。
ア 改正法の公布の際現に販売され、又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されている添加物
イ 改正法の公布の際現に販売され、又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されている製剤又は食品に含まれる添加物
なお、ア及びイの「販売」には、不特定又は多数の者に対する販売以外の授与が含まれるものであること。
② 何人も、①により公示された既存添加物名簿に関し、訂正する必要があると認めるときは、厚生省令で定めるところにより、その公示の日から6月以内に限り、その旨を厚生大臣に申し出ることができるものであること。
③ 厚生大臣は、②の申出があった場合において、その申出に理由があると認めるときは、その申出に係る添加物の名称を既存添加物名簿に追加し、又は既存添加物名簿から消除するとともに、その旨をその申出をした者に通知するものであること。
④ 厚生大臣は、③による追加又は消除を行った既存添加物名簿を平成8年4月23日までに公示するものであること。
⑤ ④により厚生大臣が公示した既存添加物名簿に記載されている添加物並びにこれを含む製剤及び食品については、新食品衛生法第6条の規定は、適用しないものとされたこと。(3)(2)の既存添加物名簿に係る告示及びその訂正の申出手続に関する厚生省令は、追って制定する予定であること。
2 残留農薬基準の策定に関する事項
厚生大臣は、食品の成分に係る規格として、食品に残留する農薬の成分である物質の量の限度を定めるため必要があると認めるときは、農林水産大臣に対し、農薬の成分に関する資料の提供その他必要な協力を求めることができるものとしたこと。
3 食品の製造又は加工の方法の基準の特例等に関する事項
(1)厚生大臣は、製造又は加工の方法の基準が定められた食品のうち政令で定めるものについて、総合衛生管理製造過程(製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法について食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造又は加工の過程をいう。以下同じ。)を経てこれを製造し、又は加工しようとする者から申請があった場合において、製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法が厚生省令で定める基準に適合するときは、その総合衛生管理製造過程を経て製造し、又は加工することについての承認を与えることができるものとしたこと。
(2)(1)の承認に係る総合衛生管理製造過程を経た食品の製造又は加工については、製造又は加工の方法の基準に適合した方法による食品の製造又は加工とみなして、食品衛生法又は同法に基づく命令の規定を適用するとともに、(1)の承認に係る施設については、食品衛生管理者の設置を要しないものとしたこと。
4 食品等の輸入手続に関する事項
(1)厚生大臣は、食品等の輸入に係る届出又はその届出に係る食品等の検査の命令等の通知について、電子情報処理組織を使用して行わせ、又は行うことができるものとしたこと。
(2)厚生省令で定める国から輸入する獣畜の肉等であって、衛生に関する事項が当該国の政府機関から電気通信回線を通じて厚生省の使用に係る電子計算機に送信されたものについては、衛生に関する証明書の添付を要しないものとしたこと。
5 輸入食品等の検査に関する事項
政令で定める輸入食品等について、一律に検査を要することとされている従来の検査制度を、厚生大臣が食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めた場合に、生産地の事情等からみて販売等を禁止されている食品等に該当するおそれがあると認められるものを輸入する者に対し、検査を受けることを命ずることができる検査制度に改めたこと。
6 指定検査機関の指定基準に関する事項
指定検査機関の指定基準として、その製品検査の業務の管理に関する事項が厚生省令で定める基準に適合することを加えたこと。
7 営業許可に関する事項
(1)都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長(以下「都道府県知事等」という。)は、食品衛生法に違反して刑に処せられた日から起算して2年を経過しない者等については営業の許可を与えないことができるものとするとともに、営業者が食品衛生法に違反して刑に処せられた場合等については営業の許可を取り消すことができるものとしたこと。
(2)都道府県知事等の営業の許可の条件として付することができる有効期間について、2年を下らない期間から4年を下らない期間に改めたこと。
(3)営業の許可を受けた者について相続又は合併があったときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人は、その者の地位を承継するものとしたこと。
8 地域における食品衛生の向上に関する事項
(1)都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、食中毒の発生を防止するとともに、地域における食品衛生の向上を図るため、飲食店営業者等に対し、必要な助言その他の援助を行うように努めるものとしたこと。
(2)都道府県等は、飲食店営業等の食品衛生の向上に関する自主的な活動を促進するため、社会的信望があり、かつ、食品衛生の向上に熱意と識見を有する者のうちから食品衛生推進員を委嘱することができるものとしたこと。
第2 栄養改善法の一部改正関係
1 栄養表示基準に関する事項
(1)販売に供する食品(特別用途食品を除く。)について、厚生省令で定める栄養成分又は熱量に関する表示をしようとする者等は、厚生大臣の定める栄養表示基準に従い、必要な表示を行うべきものとしたこと。
(2)栄養表示基準においては、次に掲げる事項を定めるものとしたこと。
① 食品の栄養成分量及び熱量に関し表示すべき事項並びにその表示の方法
② 栄養成分のうち、国民の栄養摂取の状況からみてその欠乏が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして厚生省令で定めるものについて、その補給ができる旨を表示しようとする者等が遵守すべき事項
③ 栄養成分のうち国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして厚生省令で定めるもの又は熱量について、その適切な摂取ができる旨を表示しようとする者等が遵守すべき事項(3)厚生大臣は、栄養表示基準に従った表示をしない者に対して、栄養表示基準に従い必要な表示をすべき旨の指示をし、これに従わない場合は、その旨を公表できるものとしたこと。
2 特殊栄養食品の表示に関する事項
栄養表示基準制度の創設に伴い、栄養成分の補給ができる旨の標示の許可制度の廃止、特別用途食品に係る表示の方法の改正を行ったこと。なお、栄養成分の補給ができる旨の標示の許可制度の廃止に伴い、特殊栄養食品の名称が廃止されたこと。
第3 その他
1 施行期日
残留農薬基準の策定に関する規定及び既存添加物名簿の作成に関する規定については公布日から、営業許可に関する規定は平成7年11月24日から、食品等の輸入手続に関する規定及び輸入食品等の検査に関する規定は公布の日から起算して9月を超えない範囲内において政令で定める日から、その他の規定については平成8年5月24日から、それぞれ施行されること。
2 経過措置
第1の1の添加物に関する事項のほか、次のような経過措置が定められたこと。
(1)指定検査機関に関する経過措置
公布の日から起算して9月を超えない範囲内において現に旧食品衛生法第14条第1項又は第15条第1項若しくは第2項の指定を受けている者及び平成8年5月24日において現に新食品衛生法第14条第1項又は第15条第1項から第3項までの指定を受けている者に対する新食品衛生法第19条の12による措置命令に関する規定は、平成9年5月23日までは、新食品衛生法第19条の4第3号に適合しなくなったと認めるときについては適用しないものとしたこと。
(2)営業の許可に関する経過措置
平成7年11月24日において現に有効期間が付された営業の許可を受けている者に対する当該許可に係る新食品衛生法第23条による営業の禁停止等に関する規定は、当該有効期間が経過するまでの間は、新食品衛生法第21条第2項第1号若しくは第3号に該当するに至った場合については適用しないものとしたこと。
(3)特殊栄養食品に関する経過措置
① 平成8年5月24日において現に乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用等の特別の用途に適する旨の標示の許可等を受けている者は、改正後の栄養改善法(以下「新栄養改善法」という。)第12条第1項又は第15条第1項の規定による許可等を受けた者とみなすものとしたこと。
② 栄養成分の補給ができる旨の標示の許可等に係る食品については、平成9年5月23日までは、引き続き改正前の栄養改善法の規定に適合する標示がされている限り、新栄養改善法第17条第1項の栄養表示基準に適合する表示がされているものとみなすものとしたこと。
(4)罰則に関する経過措置施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によるものとしたこと。
3 その他
(1)第1の8の地域における食品衛生の向上に関する事項に係る規定は、最近における食中毒の発生状況等にかんがみ、営業者や従業者に対し、食品衛生に関する継続的な普及啓発活動等を行うことが重要となってきていることから、従来から都道府県等が地域の実情に応じて行っている普及啓発等の施策を、改めて法律に明確に位置付けることにより、その推進を図ろうとするものであり、都道府県等に新たな事務及び財政負担を課そうとするものでないこと。また、食品衛生推進員は∴幅広い食品関係者を委嘱の対象とし、地域における食品衛生の向上のための活動を広く行う者として都道府県等が民間人に対する協力を依頼するものであって、地方公務員として位置付けるものではなく、その設置及び内容は都道府県等の自主性に委ねられるものであること。
(2)第1の1の添加物に関する事項のほか、新食品衛生法及び新栄養改善法に基づく政令、厚生省令及び告示は、それぞれの規定の施行までに順次、制定する予定であること。