食品、添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第370号)の一部が平成4年10月27日厚生省告示第239号をもって改正され、その運用については平成4年10月27日衛化第七四号をもって厚生省生活衛生局長より各都道府県知事、政令市市長及び特別区区長あて通知されたところであるが、更に左記の点に留意の上、その取扱いに遺憾のないようにされたい。
記
第一 残留基準
1 今回残留基準を設定するアミトラズとは、アミトラズ及びその代謝物であるN-2,4-ジメチルフェニル-N'-メチルホルムアミジンをアミトラズ含量に換算したものの和をいうこと。
2 今回残留基準を設定するピレトリンとは、ピレトリン成分中のピレトリンI及びピレトリンⅡの和をいうこと。
第二 農産物分類
1 農産物の中分類における核果果実とは、もも、あんず、おうとう等の子房壁が肥大した部分を食用とするバラ科の木本の果実をいうこと。かんきつ類果実とは、ミカン科の木本の果実をいうこと。仁果果実とは、りんご、なし、びわ等の花托が肥大した部分を食用とするバラ科の木本の果実をいうこと。熱帯産果実とは、パイナップル、パパイヤ、マンゴー等の熱帯産の果実をいうこと。ベリー類果実とは、ツツジ科及びグミ科の多年性草本又は落葉潅木の果実をいうこと。イモ類とは、かんしょ、さといも、ばれいしょ、やまいも等のヒルガオ科、サトイモ科、ナス科、ヤマノイモ科の1年生草本の地下茎又は根が肥大したものをいうこと。きのこ類とは、しいたけ、マッシュルーム等の担子菌類又は嚢子菌類の子実体をいうこと。オイルシードとは、草本の種子のうち油脂含有率が高く、食用油の採油用として用いられるもの(大豆を除く。)をいうこと。ナッツ類とは、ぎんなん、くり、くるみ等の子房壁が固い殻となる木本の種子で食用に供されるものをいうこと。
2 農産物の小分類における小豆類とは、成分規格の表に例示したものの他、マメ科インゲンマメ属等に属する草本の種子をいうこと。メロン類とは、すいか、まくわうりを除くウリ科の甘味を有する果実をいうこと。かぶ類とは、かぶ、スウェーデンかぶ等をいうこと。国際機関等でターニップに分類されているものはこの分類に属すると解すること。だいこん類とは、だいこん、はつかだいこん等をいうこと。国際機関等でラディッシュに分類されているものはこの分類に属すると解すること。さといも類とは、さといも、やつがしら、たろいも等のサトイモ科の草本の地下茎又は根が肥大したものをいうこと。
第三 試験法
今回設定される残留農薬の試験法については、次に掲げる各項目の注意事項に留意されたいこと。
1 アルジカルブ、エチオフェンカルブ、オキサミル、ピリミカーブ及びベンダイオカルブ試験法
かんきつ類の果肉等酸性の強い検体を対象としてピリミカーブを同時に抽出するときは、炭酸水素ナトリウム約5gを加えることにより抽出率が向上できること。
2 エディフェンホス、パラチオンメチル及びフェンスルホチオン試験法
(1) たまねぎ、にんにく等に含有されている多くの有機硫黄化合物が炎光光度型検出器に感応して定性定量を妨害するときは、アルカリ熱イオン化検出器または高感度窒素.リン検出器で行うと妨害がほとんどなくなること。
(2) ガスクロマトグラフィーはカラムが長いと吸着が起こり検出が妨げられることがあること。
3 エトキシキン試験法
濃縮する際は、すり合わせ減圧濃縮器で弱く吸引しながら、乾固させないように気を付けること。
4 酸化フェンブタスズ試験法
灰化時に酸化フェンブタスズが揮散するおそれがあるときは塩化パラジウム等の添加剤により揮散抑制を行う必要があること。
5 ダミノジッド試験法
キャベツにおける試験では0.1%トリナトリウムペンタシアノアミンフェロエート溶液(TPF溶液)5mlを加えた時点でTPF溶液の退色が見られ、測定が不可能となることがあるため、この場合は0.5%TPF溶液5mlを用いること。
6 クロフェンテジン試験法
クロフェンテジンは熱分解を受けやすいので、ガスクロマトグラフの試験溶液注入口温度は220℃~260℃の範囲とすること。また、キャリヤーガスは多めに流す必要があること。
7 ピレトリン試験法
たまねぎ、にんにく等に含有されている多くの有機硫黄化合物が電子捕獲型検出器に感応して定性、定量を妨害することがあるため、この場合は有機硫黄化合物を10%硝酸銀コーティング合成ケイ酸マグネシウムカラムクロマトグラフィーを行い除去しておく必要があること。
第四 ガスクロマトグラフィー用カラム
ガスクロマトグラフィー用キャピラリー等のカラム、ガスクロマトグラフィー用パックドカラム充填剤及びカラムクロマトグラフィー用充填剤等は安定した品質の市販品があるので、それらを用いることができること。
第五 高速液体クロマトグラフィー用カラム
高速液体クロマトグラフィー用カラムは安定した品質の市販品があるので、それらを用いることができること。
第六 ガスクロマトグラフ.質量分析計の取扱い
ガスクロマトグラフ.質量分析計で確認試験を行う農薬については以下の点に留意すること。
1 保持時間により定性試験を行うときは、分子イオン及び当該農薬に特有のフラグメントイオンの中で夾雑物の影響を受けない複数のフラグメントイオンを用いること。
2 定量分析を行うときは、定性分析に用いたフラグメントイオンの中でm/eの強度が強いフラグメントイオン又は分子イオンを用いること。
第七 検出限界
今回残留基準を設定した各農薬の検出限界を以下に示すので、試験を行う際に留意すること。
農薬名
|
検出限界濃度
|
アミトラズ |
0.01ppm |
アルジカルブ |
0.005ppm |
エチオフェンカルブ |
0.005ppm |
エディフェンホス |
0.01ppm |
エトキシキン |
0.05ppm |
オキサミル |
0.005ppm |
キノメチオネート |
0.01ppm |
グリホサート |
0.01ppm |
クロフェンテジン |
0.02ppm |
クロルピリホス |
0.01ppm |
クロルプロファム |
0.001ppm |
クロルベンジレート |
0.02ppm |
クロルメコート |
0.1ppm |
酸化フェンブタスズ |
0.05ppm |
ジクロフルアニド |
0.001ppm |
シハロトリン |
0.02ppm |
ジフルベンズロン |
0.01ppm |
シペルメトリン |
0.01ppm |
臭素 |
1ppm |
ダミノジッド |
0.5ppm |
デルタメトリン |
0.01ppm |
トリクロルホン |
0.005ppm |
バミドチオン |
0.02ppm |
パラチオンメチル |
0.01ppm |
ピリミカーブ |
0.005ppm |
ピレトリン |
0.2ppm |
フェニトロチオン |
0.01ppm |
フェンスルホチオン |
0.02ppm |
フルシトリネート |
0.005ppm |
ペルメトリン |
0.02ppm |
ベンダイオカルブ |
0.005ppm |
マラチオン |
0.01ppm |
マレイン酸ヒドラジド |
0.2ppm |
メトプレン |
0.02ppm |