カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取扱いについて
昭和四六年二月二三日環食第九○号をもつて通知した標記について、昭和四六年三月五日その取扱い等につき、食品衛生調査会委員ならびにカビ毒等の専門家より意見を求めたところ食品中からアフラトキシンが検出されることは好ましくない旨の意見が出され、あわせて別紙(1)のような検査方法が示された。
このことに基づき、今後当該検査方法によりアフラトキシンが検出された食品は食品衛生法第四条第二号に違反するものとして取扱うこととしたので御了知ありたい。
〔中略〕
また、今後製造されるピーナッツ含有食品についてはその製造、販売に際し左記(3)の事項を徹底させるよう厳重に指導されたい。
記
(1)・(2) 略
(3) 今後製造されるピーナッツ含有食品に対する対策
1) 原料は選別を厳重に行ない、極力上質のものに限定すること。
2) ピーナッツの倉庫における保管管理を厳重に行ない長期保存をさけること。保管倉庫は極力低温倉庫とすること。
3) 団体もしくは会社における自主検査体制を確立せしめる等により自主検査を実施するよう指導すること。
平成14年3月31日 廃止
別紙(1)
ピーナッツおよびピーナッツ製品中注(1)のアフラトキシンB1の試験法
試薬
メタノール n-ヘキサン クロロホルム エーテル ベンゼン アセトニトリル |
試薬一級品を使用直前に総ガラス器具を用い蒸留する。 (特級品の場合も必ず蒸留する。) |
無水硫酸ナトリウム |
特級品 |
カラムクロマト用シリカゲル (0.05~0.2mm) 注(2) : 105 ℃で 1 時間加熱し、冷後シリカゲル重量の 1w/w %の水を加えてよく撹拌混和し、密閉容器に貯蔵し、 15 時間以内に使用する。
アフラトキシン類標準液: 純アフラトキシン B 1 、 B 2 、 G 1 及び G 2注(3) の各々について、約 1mg を有効数字 2 桁まで精秤し、ベンゼンッアセトニトリル (98 + 2) を用いて 50ml の共栓付メスシリンダー中に洗い込み、これに同一溶媒を加えて、よく振りまぜ正確に40 m g/mlの濃厚標準溶液を調製し、この各 1ml をそれぞれ別に同一溶媒で各 10ml とし、この 4 種の溶液を混合して得た溶液を混合標準溶液とする。
また、 B 1 の濃厚標準溶液 1ml をとり、上記溶媒を加えて 200ml としたものを B 1 標準溶液とする。 注(4)
各標準溶液は適当な共栓フラスコに入れ、 mg 単位まで目方を測つたのち、アルミ箔で蔽い冷蔵庫中に保存する。用時目方の減少がなく従つて濃度変化のないことを確認する。
装置
ブレンダー 遠心分離機 250ml
遠沈管使用のもの 振とう機 ( 分液漏斗用シエーカー及び試験管用ミキサー ) 注(5)
ロータリーエバポレーター
クロマト用カラム: 22ラ300mm のガラス製カラムで下部にコックを有するもの
薄層クロマト用プレート: 厚さ 0.25mm のシリカゲル 注(6) プレートを 80 ℃で 2 時間以上活性化し、デシケーター中に保存する。
紫外線灯: 長波長紫外線 (3650 Å ) を発生するもの。
抽出
ピーナッツ 注(7) あるいはピーナッツ製品 50g をブレンダー中に取り、メタノール 1 %塩化ナトリウム溶液 (55 + 45)250ml およびnッヘキサン 200ml を加え、高速で 5 分間粉砕かく拌して抽出を行なう。
混合物をただちに 250ml の遠沈管に移し、 2,500rpm で 15 分間遠心分離を行ない、メタノールッ水層 50ml を取り 注(8) 、分液ロートに入れ、クロロホルム 50ml を加えて振とう機を用いて 2 分間激しく振り混ぜたのちクロロホルム層を分取する。分液ロート中のメタノールッ水層に再びクロロホルム 50ml を加え、前回と同様の操作を行なう。両クロロホルム層を合し、ロータリーエバポレーターを用いて 50ml まで濃縮し 注(9) 、抽出液とする。
クリーンアップ
クロマト用カラムに少量のガラス綿を詰め、その上に無水硫酸ナトリウム約 5g を入れ、ついでクロロホルムをカラムの約半分の高さまで満たし、これにシリカゲル 10g を常法により徐々に加えたのち管内壁を約 20ml のクロロホルムで洗う。シリカゲルは静かにかく拌して気泡を完全に除き、下部のコックを開いてクロロホルムを流下させ、シリカゲルを沈着させる。クロロホルム層を約 8cm 残し、シリカゲル上面を平らにしたのち注意して無水硫酸ナトリウム 15g を加え、ついでクロロホルムを硫酸ナトリウムの上層にわずかに残るまで流出させる。
このカラムに前記の抽出液 50ml を入れ、溶媒をほとんど流出させたのち、n-ヘキサン 150ml 、ついでエーテル 150ml を流してカラムを洗滌し、流出液は捨てる。つぎにメタノールックロロホルム (3 + 97)200ml を約 10 ~ 15ml / min の速度で流し、溶離液を濃縮し、 15ml の共せん目盛付遠沈管に移し、溶媒を除去する。これに正確に500 m lのベンゼンッアセトニトリル (98 + 2) を加え、せんをしたのち、振とう機 注(5) を用いて激しく混和し、完全に溶解させ、試験溶液とする。
分離検出
薄層クロマト用プレートに試験溶液およびアフラトキシン混合標準液各10 m l及び B1 標準溶液10 m lをスポットし、展開溶媒としてクロロホルムッアセトン (9 + 1) を入れ、直ちに展開槽にプレートを入れ蓋をして、約 10cm を展開させる 注(10) 。
展開後プレートを取り出し、室温で乾燥し紫外線灯下で薄層クロマトグラムを検する。 以上の試験において、アフラトキシン B 1 を検出してはならない。
ただし、紫外線灯の光源の強さ、光源とプレートとの間隔は10 m l量以上の標準アフラトキシン B 1 をスポットした時 B 1 が明らかに認められるような条件に設定する。
注)
(1) ピーナッツ製品とはピーナッツバター、ピーナッツフラワー等をさす。
(2) カラムクロマト用シリカゲルは、メルク製 Kieselgel 0.05~0.2mmを使用すること。
(3) アフラトキシン類標準品は、 Makor Chemicals Limited,P.O.B.6570.Jerusalem,Israel で販売している。 B 1 、 B 2 、 G 1 及び G 2 の 4 種を標準に用いると、これらが星座の如く並ぶので検体中のアフラトキシン類の存在を認めるのに便利である。 ただし、 B1 及び B2 のみを産生する真菌株の例も知られている。
(4) 混合標準溶液は 10ng / m l B 1 標準溶液は 0.2ng / m l
(5) Thermomixer( いりえ商会 ) の類 必ずしもこの様な装置を用いる必要はなく、手でよくふつても溶解する。
(6) 薄層用シリカゲルは、 Machery‐Nagel の MN-KieselgelG-HR あるいは Mallinckrodt の Silic ARTLC-4G を使用する。
(7) ピーナッツの場合はサンプリングの意義から見て多量とる事が望ましい。検体 100g 採取の場合は溶媒類も倍量加えて抽出する。但し、クロロホルム転溶に供するメタノールッ水層は 50ml を用いる。 (8) メタノール水層を採取するために、上層のヘキサン層及びピーナッツ粕層を、中間に安全びんをおいて水流ポンプにつないだ先端の比較的太いキャピラリーで吸引除去しておくと便利である。ヘキサン層あるいはピーナッツ粕がメタノール水層にはいることは好ましくない。 透明なメタノール水層が得られない場合には 2 回遠心分離するか、かるく脱脂綿をつめたロートで濾過するとピーナッツ粕は除去出来る。 メタノール―水層を集め、その中から 50ml を採取する。脂肪等の不純物のためクリーンアップが困難な場合には遠沈管よりメタノール―水層 100ml をとりこれをn-ヘキサン 100ml で洗浄後、その 50ml をクロロホルム抽出に供す。
(9) 予じめ、 50ml の位置に劃線をほどこしたナス型コルヘンを使用すると良い。クテルナダーニッシュエハポレーターを用いても良い。
(10) 急ぐ場合、 1 時間 105 ℃で活性化したシリカゲル薄層を用いても良いが、この際は、展開槽に溶媒を入れた後、ふたをして約 10 分放置してから、スポットした薄槽を入れた方が遥かに再現性が優っていた。 薄層クロマトは、温度その他の諸条件で再現性に問題が多く、充分予備的検討を行つた後に試験することが望ましい。 おおむね、 40 ~ 45 分間で、 10cm 展開する様な条件を選ぶと分離、再現性共に優れている様に思われる。 AOAC 法においては 80 ℃で 2 時間以上乾燥した薄層を用い 23 ~ 25 ℃で 40 分間展開するか又はアフラトキシン類が Rf 0.4 ~ 0.7 に達するまで展開する旨記されている。
別紙(2)・(3) 略