一覧へ戻る 平成24年06月14日 既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究(平成23年度調査) - 別添 本文セイヨウワサビ抽出物(234) 1.食品添加物名 セイヨウワサビ抽出物(セイヨウワサビの根から得られた、イソチオシアナートを主成分とするものをいう。)2.基原、製法、本質 アブラナ科セイヨウワサビ(Armoracia rusticana P.GAERTN., B.MEYERet SCHERB.)の根を、粉砕後、水蒸気蒸留で抽出して得られたものである。主成分はイソチオシアナートである。3.主な用途 酸化防止剤、製造用剤4.安全性試験成績の概要(1)反復投与試験 F344系ラットを用いた20、40及び80 mg/kgのセイヨウワサビ抽出物の強制投与による90日反復投与試験を行った。その結果、雌雄の40及び80 mg/kg群において、前胃への直接的な刺激による粘膜上皮の角化症、過角化症、扁平上皮過形成などが認められた。他に観察された体重増加抑制、摂餌量の低値などはその2次的作用によるものと考えられる。無毒性量は前胃の組織変化を根拠とし、20 mg/kgと推定される。1)(2)遺伝毒性試験 細菌を用いた復帰突然変異原性試験はS9mixの有無に関わらず、対照の1.5倍以上のHis+復帰コロニーを誘発し、濃度依存性も認められたことから、疑陽性とした。2) なお、他に、陰性及び陽性の報告あり。3)、4) 哺乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は、直接法及び代謝活性化法ともに染色体異常及び倍数体を誘発した。5)、6) マウスを用いた小核試験はいずれの用量においてもマウス骨髄の小核誘発性は認められなかった。7)以上の結果から生体にとって問題となるような遺伝毒性は認められないと判断された。(3)慢性毒性/発がん性併合試験 F344ラットを用いたチューブを介したノズルでのセイヨウワサビ抽出物の飲水(0.005、0.01及び0.04%)投与による52週間反復投与毒性試験では、対照群雄1例が悪性リンパ腫により、0.04%群雌1例が後肢麻痺を伴う発育不良により死亡したが、偶発的なものと考えられた。体重、摂餌量及び器官重量に異常は認められなかった。血液学的検査では、全ての投与群の雄でSegが低値を示し、Lymphoが高値を示したが、用量反応性は認められなかった。また、WBCに大きな変化は認められず、関連性が示唆される病理組織学的所見もみられなかったことから、毒性学的意義は乏しいとされている。血清生化学的検査では、雄の0.04%群でGlucoseが増加した。投与による影響の可能性は否定できないが、肝臓や膵臓などに関連性が示唆される病理組織学的所見はみられず、原因は明らかでなかった。病理組織学的検査では、雄の0.04%群に前胃のPN過形成が認められ、雌の0.04%群に膀胱のPN過形成が認められた。無毒性量は、Glucoseの増加、前胃あるいは膀胱のPN過形成を根拠に、雌雄とも0.01%(雄、7.0mg/kg体重/日;雌、8.4mg/kg体重/日)と判断された。8) F344ラットを用いたチューブを介したノズルでの飲水(0.005、0.01及び0.04%)投与による104週間発がん性試験では、一般状態及び摂餌量に異常は認められなかった。体重については、雌雄の0.04%群に増加抑制あるいは増加抑制傾向がみられ、器官重量では、雄の0.04%群で肝臓の実重量の減少及び脳の相対重量の増加が認められた。また、雌の0.04%群で脳、肺、心臓及び腎臓の相対重量の増加が認められたが、病理組織学的変化は認められておらず、体重が低値を示したことによるものと判断された。病理組織学的検査では、雌雄の各群の膀胱に単純過形成、PN過形成、乳頭腫、移行上皮癌が散見されたが、用量相関性はみられず、投与に関連した変化はないと判断された。このため、ラットでは発がん性を示さないと判断された。8)(4)短期投与経時試験・二段階発がん性試験 F344ラットの雄を用いた給水瓶での飲水投与(実験開始後5週間は水道水、5週目より0.005、0.01及び0.04%のセイヨウワサビ抽出物の混合飲料水を投与)による短期投与経時試験では、一般状態に異常は認められなかった。体重では、0.04%群で減少傾向が認められた。摂水量では、投与濃度に依存した摂水量の減少が認められた。病理組織学的変化では、0.04%群の投与3日目で1/5例の単純過形成が、投与1週目で4/5例の単純過形成が、1/5例のPN過形成、2/5例の粘膜下水腫/細胞浸潤が、0.04%群の投与2週目で5/5例の単純過形成及び4/5例のPN過形成が、それぞれ認められた。BudU陽性率は、投与1日目の0.01及び0.04%群の投与1週目及び投与2週目で、有意な上昇が認められた。8) F344ラットの雄を用いた給水瓶での飲水投与(実験開始後4週間は0.05%のN-n-butyl-4-hydroxybutylnitrosamine(BNN)の混合脱イオン水、その後1週間は脱衣イオン水、実験開始後5週目より0.005、0.01及び0.04%群のセイヨウワサビ抽出物の混合飲料水を投与)では、一般状態に異常は認められなかった。体重では、0.04%群で低値を示した。摂餌量では、0.04%群で減少傾向が認められた。摂水量では、投与濃度に依存した摂水量の減少が認められた。病理組織学的変化では、投与13週目の全群でPN過形成が、0.01及び0.04%群で乳頭腫が、0.04%群で移行上皮癌が、それぞれ有意に増加した。投与32週目の0.04%群でPN過形成が、0.01及び0.04%群で乳頭腫及び移行上皮癌が、それぞれ有意に増加した。増殖性病変として、PN過形成、乳頭腫、移行上皮癌に優位な増加が認められたことから、ラットにおいて膀胱発がんプロモーション作用を示すと判断された。8)(5)慢性毒性試験 F344ラット雄を用いた給水瓶でのセイヨウワサビ抽出物の飲水(0.01及び0.04%)投与による104週間反復投与慢性毒性試験では、一般状態に異常は認められなかった。摂水量及び摂餌量が用量依存的に減少したが、セイヨウワサビの強い辛みのために摂水量が減少し、それに伴って摂餌量が減少したと考えられた。また、体重についても、その影響を受け、雄の0.04%群で増加抑制が認められた。器官重量については、0.04%群において体重増加抑制に伴うと考えられる脳、心臓及び肝臓の実重量が減少し、体重の変動による影響を受けづらいとされる脳では、0.04%群において相対重量が増加した。病理組織学的変化は認められず、体重が減少したことによるものと判断された。また、脾臓の相対重量が増加したが、血液学的検査において赤血球系パラメータに変動がみとめられなかったことから、毒性学的意義は乏しいと考えられた。病理組織学的検査については、全投与群において膀胱の単純過形成が認められた。0.04%群でPN過形成、乳頭腫及び移行上皮癌が見られたが、対照群でもPN過形成及び乳頭腫が見られ、統計学的有意差は認められなかった。種々の器官に腫瘍性病変が認められたが、それらの発生状況からは投与に関連した変化ではないと判断された。このため、ラットに発がん性は示さないと判断された。8)5.検討結果 以上の試験成績からみて、特段の問題となるようなヒトの健康影響を示唆する試験結果は認められなかった。(引用文献)1.井上達:平成8年度食品添加物試験検査、国立医薬品食品衛生研究所安全 性生物試験研究センター毒性部2.宮部正樹:平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、名古屋市衛 生研究所3.藤田博:天然食品添加物のAmes試験における変異原性(第2報)、東京 都立衛生研究所研究年報49別冊、19984.林真:厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート(昭和54年 度~平成10年度分)、Environ. Mutagen Res., 22:27-44(2000)5.平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験、横浜市6.吉田誠二:天然食品添加物のチャイニーズハムスターにおける染色体異常 誘発性の検討(2)、東京都立衛生研究所研究年報49別冊、19987.蜂谷紀之:平成8年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、秋田大学8.曺永晩、今井俊夫、高見成昭、広瀬雅雄、西川秋佳:平成13年度食品添加物規 一覧へ戻る