薬事・食品衛生審議会資料

 

平成13年01月11日

 

 

「遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む食品に関する表示」 及び「指定検査機関の在り方」に関する食品衛生調査会の意見具申について - 別添1 遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む食品に関する表示について

 
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(別添1
    遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む
    食品に関する表示について

    報告書

    平成12年7月13
    食品衛生調査会表示特別部会


    遺伝子組換え食品の表示の義務化について

    1 表示義務化の必要性

    ○ 遺伝子組換え食品については、従来、「安全性評価指針」(生活衛生長通知)に基づき、厚生大臣が個別に安全性審査を行ってきたが、法律に基づかない任意の仕組みとなっていた。
     しかしながら、遺伝子組換え食品は国際的にも広がってきており、今後さらに新しい食品の開発が進むことも予想され、未審査のものは安全とはいえないことから、安全性未審査のものが国内で流通しないよう、食品衛生法の規格基準に規定を設けることにより、平成134月から安全性審査を法的に義務化することとしたところ。

    ○ 安全性審査の義務化を着実に実施するため、食品等輸入届けにおい安全性未審査のものが輸入されないよう適切な届出をさせるほか、輸入又は国内流通する遺伝子組換え食品のモニタリング検査(抜き取り検査)を実施することとしているが、表示制度も、食品の内容を明らかにすものであり、安全性審査の義務化と一体のものとして必要となるものである。

    2 表示の考え方

    ○ 義務的な安全性審査制度においては、食品は、①審査済みの遺伝子組換え食品、②未審査の遺伝子組換え食品、③非遺伝子組換え食品の三つに分類できる。
     食品監視を徹底する観点からは、上記三種類すべての表示を義務付け、市場に流通している食品がその表示通りとなっているか否かをチェックするという方法も考えられるが、未審査の組換え食品を輸入、販売等してはならないとする義務的な審査制度の下では、未審査のものの表示を義務化する必要性はなく、また、「審査済み」である旨の表示も当然のことであり義務化する必要性はない。

    ○ そこで、食品衛生法においては、次のような考え方から、遺伝子組換え食品であるか、非組換え食品であるかの区分について、表示を行う必要がある。

    ・遺伝子組換え食品である旨表示を義務付けると、これに着目した食品監視の対象となるほか、未審査のものを何の表示もせずに販売等した場合には、義務的な審査制度の下で規格基準違反となるだけでなく表示基準違反ともなる。
    ・食品衛生法では、食品添加物の表示を義務付けているが、これも安全性審査を経たものであり、その上で、食品の内容を明らかに示すための表示を義務付けて消費者に食品の内容を理解できるようにしているところであり、安全性審査を義務付ける遺伝子組換え食品においても同様とするもの。

    分別生産流通管理が行われていない場合でも、遺伝子組換え食品が含まれていたとしても審査済みのものである必要があるが、遺伝子組換え食品が含まれている場合といない場合があるので、遺伝子組換え食品と非遺伝子組換え食品が分別されていない旨表示させる必要がある。
    非遺伝子組換え食品について、全て表示を義務付けることは必要がなく、事業者の事務負担も大きいので、義務表示とはしないが、その旨の表示があっても特段支障はないので、任意に表示することは禁止しない。

    3 表示の具体的な在り方

    1)表示内容
     上記2の考え方からすると、食品衛生法上必要な表示は次のとおり。
    分別生産流通管理が行われた遺伝子組換え食品の場合
    →「遺伝子組換え食品」である旨(義務表示)
    遺伝子組換え食品及び非遺伝子組換え食品が分別されていない場合
    →「遺伝子組換え不分別」である旨(義務表示)

    (参考) 分別生産流通管理が行われた非遺伝子組換え食品の場合
    →「非遺伝子組換え食品」 である旨(任意表示)

    (2)義務表示の対象
     表示の義務化には相当の準備が必要であり、関係業界が既に JAS 法に基づく遺伝子組換え食品の表示の準備を進めているという実態を踏まえ、関係業界が対応可能なものからスタートするという観点から、食品衛生法の表示制度としては、平成134月から、当面、次のものを義務表示の対象とする。

    遺伝子組換え農産物が存在する種類の農産物である食品及びこれを原材料とする加工食品

    ただし、次の加工食品については、それぞれ次のような問題があることから、当面義務表示とはしないものの任意に表示することを禁止しないこととし、今後、検証技術の向上、国際的議論の推移等をみるとともに、関係者の意見を聴いた上で、具体的内容、実施時期を検討し、状況が整えば表示義務化を実施していくこととする。

    ・組換えDNA及びたんぱく質が除去、分解されているもの
     ex.醤油、大豆油、コーン油、コーンフレーク、マッシュポテト等(組換えか否かを検査する技術的な検証が困難であることや、組換えDNA及びたんぱく質が除去、分解されている場合まで表示させる必要性があるかという考え方もあることから、当面JAS法と同様の整理で義務表示としないこととする。)

    ・主な原材料となっていないもの
    (含有量がごく少量な場合まで表示させることは現実的でなく、何らかの線引きが必要であるが、当面 JAS 法と同様の整理で、全原材料中重量が上位3品目で、かつ、食品中に占める重量が5%以上のものに限り義務表示とする。)

    表示例

    分別された遺伝子組換え食品の場合(義務表示)
    品名        大豆加工食品
    原材料名     大豆(遺伝子組換え)
    内容量       50グラム
    品質保持期限   2000.6.1
    保存方法      10度以下で保存
    製造者       ABC株式会社 東京都千代田区××町

    遺伝子組換え食品及び非遺伝子組換え食品が分別されていない場合(義務表示)
    品名        大豆加工食品
    原材料名     大豆(遺伝子組換え不分別)
    内容量       50グラム
    品質保持期限   2000.6.1
    保存方法      10度以下で保存
    製造者       ABC株式会社 東京都千代田区××町

    (参考) 分別された非遺伝子組換え食品の場合(任意表示)
    品名        大豆加工食品
    原材料名     大豆(遺伝子組換えでない)
    内容量       50グラム
    品質保持期限   2000.6.1
    保存方法      10度以下で保存
    製造者       ABC株式会社 東京都千代田区××町

    (参考) 食品衛生法の表示の基本的考え方

     食品衛生法案11条においては、公衆衛生の見地から表示につき必要な基準を定めることができることとされているが、食品に関する適正な表示は、消費者や関係事業者に対し的確な情報を与え、合理的な認識や選択に資するものであり、さらには、行政庁の迅速かつ効果的な取締りのためにも不可欠のものであり、公衆衛生の見地からの表示の機能は、主に次のように整理できる。

    消費者への情報伝達機能
    表示事項に留意しなければ健康危害が生じるおそれがある場合の表示(ex,品質保持期限、保存方法等)
    公衆衛生の見地から、消費者が食品の内容を理解し、選択するための表示(ex.添加物)

    流通事業者事への情報伝達機能
    販売し、又は営業上使用する際に留意すべき情報(ex.品質保持期限、保存方法等)
    製造者が付けた表示により、販売者が容易に消費者に情報提供できるようにする機能

    基準遵守促進機能
    表示させることによる事業者に対する心理的効果
    (ex.使用した食品添加物をすべて表示させることにより、規格基準外の添加物を使用することに心理的な障壁となる。)
    行政当局等が規格基準遵守の確認の際に利用する情報
    (ex.表示されている食品添加物について、その使用量を試験して、規格基準への適合を確認する。)

    食品衛生法の表示とJAS 法の表示との関係については、JAS法が消費者の選択に資するための表示であるのに対し、食品衛生法は上記のように公衆衛生の見地からの表示(ex.表示事項に留意しなければ健康危害が生じるおそれがある場合の表示、公衆衛生の見地から消費者が食品の内容を理解し選択するための表示等)であり、法目的が異なる。

    .アレルギー物質を含む食品に関する表示について

    1.表示義務化の必要性

    近年、アレルギーをはじめとした過敏症(以下「アレルギー疾患」という。)を惹起することが知られている物質(以下「アレルギー物質」という。)を含む食品に起因する健康危害が散見されている。こうした危害を未然に防止するため、表示を通じた消費者への情報提供の重要性が高まっているが、現行の食品に関する表示制度は、含有量などによってその原材料の表示義務が課されない場合などがあり、食品中のアレルギー物質の有無を知るには不十分であると考えられる。

    ○ このようなことから、平成1135日の食品衛生調査会表示特別部会「食品の表示のあり方に関する検討報告書(平成10年度)」において、「食品中のアレルギー物質については、健康危害の発生防止の観点から、これらを有する食品に対し、表示を義務づける必要がある。」とされたところである。

    さらに平成116月には、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)総会において、アレルギー物質として知られている8種の原材料を含む食品にあっては、それを含む旨を表示することで合意され、今後、加盟国において各国の制度に適した具体的な表示方法を検討することが求められることとなった。

    したがって、これらの国際的な動向も踏まえ、消費者の健康危害の発生を防止する観点から、食品衛生法(昭和22年法律第233)においてもアレルギー物質を含む食品にあっては、それを含む旨の表示を義務付けることが必要であると考える。

    2.表示の対象範囲と表示方法

    (1)対象範囲

    未加工食品にあっては、過去からの食経験によりアレルギー物質を含む食品であるか否か消費者自身が判断することが可能であるが、加工食品にのっては、外見上からは食品中のアレルギー物質の有無を判断しにくいことから、表示の対象範囲は「容器包装された加工食品」とすることが望ましい。

    (2)表示方法

    原理的には、多くの食品の原材料はアレルギー疾患の原因となりうるが、厚生科学研究費補助金による研究により、重篤なアレルギー症状を惹起した症例を検討した結果、重篤なアレルギー症状を惹起した原材料はいくつかの特定の原材料に限られていた。
     このことから、表示の方法は、過去の健康障害などの程度、頻度を考慮して重篤なアレルギー症状を起因する実績のあった食品について、その原材料を表示させる「特定原材料名表示」方式とすることが適当である。

    また、特定原材料に指定された原材料を用いて食品を製造若しくは加工した場合には、それら製造された食品の原材料に必ず当該原材料名を表示しなければならない。

    なお、アレルギー疾患を有する者は、一般に自らどのような物質で症状を誘発するか認識しており、原材料表示をもって食品中のアレルギー物質の有無を判断できることが多いことから、「アレルギーを誘発する恐れのある材料が含まれています。」などのアレルギーに関する警告表示まで表示する必然性は少ないと考えられる。

    (3)含有量との関係

    ○ 食物アレルギーについては、人によっては舐める程度でアナフィラキシー症状が惹起されるなど、極微量のアレルギー物質によって症状が生じることがあることに鑑み、アレルギー物質を含む食品にあっては、その含有量にかかわらず当該原材料を含む旨を表示する必要がある。

    ○ ただし、高価な原材料が特定原材料である場合、含有量等の表示がないと、ごく微量が含有されているだけでも、あたかも多く含まれ高価な食品であるかのような誤認を消費者に与えるおそれもあることから、表示に当たっては、例えば5%未満、エキス含有など、それらの含有量、形態に着目した表示も併せて記載されることが望ましい。

    3.特定原材料

    我が国における過去の健康危害の実情を調査し、過去に一定の頻度で血圧低下、呼吸困難又は意識障害等の重罵な健康危害が見られた淀例から、その際に食した食品の原材料の中で明らかに特定された原材料を、特定原材料とする。

    特定原材料は以下のとおりとする。
    あわび、イ力、いくら、エビ、オレンジ、力ニ、キウイフルーツ、牛肉、牛乳、くるみ、小麦、さけ、さば、そば、大豆、卵、チーズ、鶏肉、ピーナッツ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、リンゴ

    なお、特定原材料の指定に当たっては、コーデツクス委員会においてアレルギー物質として以下の8種の原材料(及びそれを含む食品)を表示対象品目として表示することが昨年の7月合意されたところであり、その整合性にも配慮することが望ましい。.

    1)グルテンを含む穀類及びその製品
    2)甲穀類及びその製品
    3)卵及ひ卵製品
    4)魚及び魚製品
    5)ピーナッツ、大豆及びその製品、
    6)乳・乳製品(ラクトースを含むもの)
    7)木の実及びその製品、
    8)亜硫酸塩を10mg/kg以上含む食品

    しかし、コーデックスの表示対象品目は、分類の概念というべきものであり、食品の原材料の個々別に表示を行ったとしても、矛盾しないと考えられる。
     なお、この度の調査により特定原材料に指定する食品原材料は、結果的にコーデックスの表示対象品目のうち、1)~7)に該当した原材料になっている。
     8)については、調査設計が2年以上も前ということもあり、必ずしも十分な調査ができなかったため、今後は、十分な調査を行うことが必要である。

    今後は、国内の健康危害に係る実態調査及び文献調査結果並びにコーデックス委員会での表示対象品目の改正に応じ、適宜特定原材料の見直しを行うことが望まれる。





        

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