一覧へ戻る 平成10年05月26日 食品規格設定に係る毒性･残留農薬合同部会報告 - ヘキシチアゾクス ヘキシチアゾクス 1.品目名：ヘキシチアゾクス（hexythiazox）2.用途：殺ダニ剤（ヘテロ環化合物）3.安全性 （1）単回投与試験 急性経口LD50は、マウス、ラットともに5,000mg/kg超と考えられる。（2）反復投与/発がん性試験 B6C3F1マウスを用いた混餌（40、250、1,500ppm）投与による24カ月間の発がん性試験において、1,500ppm投与群で赤血球数及びヘマトクリット値の低下、肝比重量増加、肝細胞核の大小不同性、肝細胞の結節性増殖等が、250ppm以上の投与群で体重増加抑制、白血球数の低下、副腎比重量増加等が認められる。本試験における無毒性量は40ppm（6.72mg/kg）と考えられる。発がん性は認められない。 F344ラットを用いた混餌（60、430、3,000ppm）投与による24カ月間の反復投与/発がん性併合試験において、3,000ppm投与群で体重増加抑制、肝重量増加等が認められる。本試験における無毒性量は430ppm（23.1mg/kg）と考えられる。発がん性は認められない。 ビーグル犬を用いた混餌（100、500、5,000ppm）投与による12カ月間の反復投与試験において、5,000ppm投与群でアルカリホスファターゼ値の増加、ALT値の増加、肝及び副腎の比重量増加、肝細胞肥大等が、500ppm以上の投与群で副腎皮質肥大が認められる。本試験における無毒性量は100ppm（2.87mg/kg）と考えられる。（3）繁殖試験 Wistarラットを用いた混餌（60、400、2,400ppm）投与による2世代繁殖試験において、2,400ppm投与群のF0、F1及びF2親動物で体重増加抑制、摂餌量低下、F1親動物で肝及び腎の比重量増加、F1子動物で体重増加抑制等が、400ppm以上の投与群のF0及びF2親動物で肝及び腎の比重量増加、F2子動物で体重増加抑制等が認められる。本試験における無毒性量は60ppm（4.22mg/kg）と考えられる。本試験と併合して行われた催奇形性試験において、催奇形性は認められない。（4）催奇形性試験 SDラットを用いた強制経口（240、720、2,160mg/kg）投与による催奇形性試験において、720mg/kg以上の投与群で母動物の体重増加抑制、摂餌量低下、卵巣比重量増加、胎児動物の中足骨の骨化遅延等が認められる。本試験における無毒性量は、母動物、胎児動物とも240mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。 ニュージーランドホワイトウサギを用いた強制経口（120、360、1,080mg/kg）投与による催奇形性試験において、検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は、母動物、胎児動物とも1,080mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。（5）変異原性試験 細菌を用いた復帰変異試験、Rec-assay、酵母を用いた遺伝子転換試験、ラット肝初代培養細胞を用いた不定期DNA合成試験、CHO培養細胞を用いた染色体異常試験、マウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と認められる。（6）その他 上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。 4.吸収･分布･代謝･排泄 F344ラットを用いた経口（10mg/kg）投与による試験において、Tmaxは4～6時間、Cmaxは2.2μg eq./g、T1/2は9.2時間と考えられる。投与後3日までに投与量の30%が尿中に、60～67%が糞中に排泄される。糞中の主要排泄物は未変化体である。主要な代謝反応はシクロヘキサン環の水酸化である。投与後Tmax時における組織内濃度は副腎、脂肪、肝等が血漿中に比べ高濃度である。 ミカン、ナシ及びリンゴを用いた試験において、葉面及び果皮に塗布処理約60日後において、処理葉から未処理部位への移行量及び処理果皮から果肉への移行量はわずかである。主要残留物は未変化体である。 上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。 5.ADIの設定 以上の結果を踏まえ、次のように評価する。 無毒性量 2.87mg/kg/日 動物種 イヌ 投与量/投与経路 100ppm/混餌 試験期間 12カ月間 試験の種類 反復投与試験 安全係数 100 ADI 0.028mg/kg/日 6.基準値案 別添2の基準値案のとおりである。基準値案の上限まで本農薬が残留したすべての農作物を摂食すると仮定した場合、国民栄養調査結果に基づき試算すると、摂取される農薬の量（理論最大摂取量）のADIに対する比は、23.2%である。 （別添1） <毒性試験一覧表> 資料No. 試験の種類･期間 供試生物 試験機関 1 急性毒性（14日間観察） ラット 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 2 急性毒性（14日間観察） マウス 3 急性毒性（14日間観察） ラット 4 亜急性毒性（3ヶ月間投与） ラット 日本曹達（株）生物科学研究所1) 5 亜急性毒性（4週間投与） マウス 日本曹達（株）生物科学研究所1) 6 慢性毒性/発ガン性予備試験（4週間投与） マウス 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 7 慢性毒性予備試験（4週間投与） 犬 IRDC（米国）2) 8 慢性毒性（12ヶ月間投与） 犬 IRDC（米国）2) 9 慢性毒性/発ガン性（24ヶ月間投与） ラット 10 慢性毒性/発ガン性（24ヶ月間投与） マウス 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 11 肝がんプロモーション（6ヶ月間投与） マウス 日本曹達（株）安全性研究所3) 12 肝がんプロモーション（6ヶ月間投与） ラット 日本曹達（株）安全性研究所3) 資料No. 試験の種類期間 供試生物 試験機関 13 累代繁殖/催奇形性各世代交配前13週間投与、計18ヶ月間投与 ラット 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 14 催奇形性（11日間投与） ラット 日本曹達（株）生物科学研究所1) 15 催奇形性（13日間投与） ウサギ 16 突然変異性（Rec-Assay） 枯草菌 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 17 突然変異性（復帰変異性） 大腸菌サルモネラ菌 18 突然変異性（UDS試験） ラット肝細胞 LBI（米国）4) 19 突然変異性（小核試験） マウス LBI（米国）4) 20 突然変異性（染色体異常/CHO細胞） CHO細胞 21 突然変異性（遺伝子転換誘発性） 酵母 22 生体の機能に及ぼす影響 中枢神経系 一般症状 マウス（多元観察法） 日本曹達（株）生物科学研究所1) 麻酔作用 ペントパルビタール睡眠時間 マウス 抗痙攣作用 ペンテトラゾール痙攣 マウス ストリキニーネ痙攣 マウス 体温 ウサギ ラット 自発運動 マウス 自発脳波 ウサギ麻酔下 血圧・心拍数呼吸への作用 マウス 体性神経系 ラット 坐骨神経と腓骨筋 平滑筋臓器への作用 モルモット摘出回腸 モルモット摘出輸精管 モルモット摘出気管 小腸輸送能 マウス 胃液分泌への作用 ラット 血液 凝固作用 ラット 溶血作用 ウサギ血液（10%血液浮？生理食塩水溶液） 23 代謝物急性毒性（14日間観察） ラット 日本曹達（株）生物科学研究所1) 24 代謝物突然変異性（復帰変異性） 大腸菌サルモネラ菌 1)日本曹達（株）生物科学研究所： 現在の名称は日本曹達（株）小田原研究所・安全性研究部 2)IRDC：International Research and Development Corporation. Mattawan,Michigan 49071, U.S.A. 現在の名称は MPI。 3)日本曹達（株）安全性研究所： 現在の名称は日本曹達（株）小田原研究所・安全性研究部 4)LBI：Litton Bionetics Inc. 5516 Nicholson Lane, kensington, Maryland 20895, U.S.A. 現在の名称は Corning Hazleton Inc. <代謝分解試験一覧表> 資料No. 試験の種類 供試動植物等 試験機関 25 動物代謝 ラット 日本曹達（株）生物科学研究所 26 動物代謝 ラット 27 動物代謝 ラット 日本曹達（株）安全性研究所 28 動物代謝 乳牛 財団法人畜産生物科学安全研究所 29 生体内運命（植物） みかんなしりんご 日本曹達（株）生物科学研究所 みかんなしりんご 日本曹達（株）生物科学研究所 30 作物残留実態 りんご、温州みかん、夏みかん、もも、ぶどう、いちご、すいか、きゅうり、ピーマン、茶 日本曹達（株）ファインケミカル研究所 31 環境中における挙動 土壌 小田原 大磯水系 蒸留水 河川水 川底汚泥 日本曹達（株）ファインケミカル研究所： 現在の名称は日本曹達（株）小田原研究所・安全性研究部 （別添2）食品規格（案） ヘキシチアゾクス 食品規格案基準値案ppm 参考基準値 登録保留基準値ppm 外国基準値ppm 大豆 0.5 0.5 小豆類（含インゲン、ササゲ、レンズ） 0.5 0.5 さといも類（含やつがしら） 0.5 0.5 やまいも（長いも） 0.5 0.5 てんさい 0.2 0.2 ピーマン 2 2 なす 2 2 きゅうり（含ガーキン） 1 2 スイカ（果実） 0.5 2 メロン類（果実） 0.5 2 未成熟えんどう 2 2 未成熟いんげん 2 2 上記以外の野菜 2 2 みかん 0.5 2 なつみかんの果実全体 2 2 レモン 2 2 オレンジ（含ネーブルオレンジ） 2 2 グレープフルーツ 2 2 ライム 2 2 上記以外のかんきつ類果実 2 2 りんご 1 2 1（オ） 日本なし 1 2 1（オ） 西洋なし 1 2 1（オ） マルメロ 1 1（オ） びわ 1 2 1（オ） もも 1 2 1（オ） ネクタリン 1 1（オ） あんず（含アプリコット） 1 1（オ） すもも（含プルーン） 1 1（オ） うめ 2 2 おうとう（含チェリー） 2 2 いちご 2 2 ラズベリー 1 1（オ） ブラックベリー 1 1（オ） ブルーベリー 1 1（オ） クランベリー 1 1（オ） ハックルベリー 1 1（オ） 上記以外のベリー類果実 1 1（オ） ぶどう 2 2 かき 1 2 上記以外の果実 2 2 茶 35 35 ホップ 30 30 注）オ：オーストラリア 一覧へ戻る