食品規格設定に係る毒性・残留農薬合同部会報告について - トリシクラゾール
トリシクラゾール
1.品目名:トリシクラゾール(TRICYCLAZOLE)
2.用 途:除草剤(ベンゾチアゾール系)
3.安全性
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで500~545 mg/kg、ラットで223~358 mg/kgと考えられる。
(2)反復投与/発がん性試験
ICRマウスを用いた混餌(25、75、250、1,000 ppm)投与による22ヶ月間の反復投与/発がん性併合試験において、1,000 ppm投与群で脾臓の結節・腫瘤、肝臓の点状変色が、250 ppm以上投与群で肝重量増加、小葉周辺性肝細胞脂肪変性及び小葉周辺性肝細胞好酸性化等が認められる。本試験における無毒性量は75 ppm(6.67 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
Wistarラットを用いた混餌(100、275、620 ppm)投与による24ヶ月間の反復投与/発がん性併合試験において、620 ppm投与群で体重増加抑制、摂餌量減少、肝比重量の増加等が認められる。本試験における無毒性量は275 ppm(9.6 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
ビーグル犬を用いた強制経口(5.0、15、45 mg/kg)投与による52週間の反復投与試験において、45 mg/kg投与群で肝及び腎重量の増加、15 mg/kg以上の投与群雄でp-ニトロアニソール-o-デメチラーゼ活性低下、肝チトクローム P-450含量減少等が認められる。本試験における無毒性量は5 mg/kgと考えられる。
(3)繁殖試験
Wisatarラットを用いた混餌(50、275 ppm)投与による3世代繁殖試験(催奇形性試験と併合)において、275 ppm投与群F3世代子動物で体重増加抑制が認められる。本試験における無毒性量は50 ppm(3 mg/kg)と考えられる。
(4)催奇形性試験
Wisatarラットを用いた混餌(50、275 ppm)投与による催奇形性試験(繁殖試験と併合)において、母動物、胎児動物とも検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は母動物、胎児動物とも275 ppm(16.2 mg/kg)と考えられる。
催奇形性は認められない。
ダッチベルトウサギを用いた強制経口(2.0、10、50 mg/kg)投与による催奇形性試験において、母動物、胎児動物とも検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は母動物、胎児動物とも50 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
(5)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、Rec-assay、チャイニーズハムスター骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験及びマウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と認められる。CHL培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、陽性と認められるが、上述の他の試験成績等から、生体内における変異原性は有しないものと考えられる。
(6)その他
上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。
4.ADIの設定
以上の結果を踏まえ、次のように評価する。
無毒性量 3 mg/kg/日
動物種 ラット
投与量/投与経路 50 ppm/混餌
試験期間 3世代
試験の種類 繁殖試験
安全係数 100
ADI 0.03 mg/kg/日
5.基準値案
別添2の基準値案のとおりである。基準値案の上限まで本農薬が残留したすべての農作物を摂食すると仮定した場合、国民栄養調査結果に基づき試算すると、摂取される農薬の量(理論最大摂取量)のADIに対する比は、41.8%である。
(別添1)
<毒性試験一覧表>
資料No. |
試験の種類(期間) |
供試生物 |
試 験 機 関 |
1 |
急性毒性(14日観察) |
ラット |
残留農薬研究所 |
マウス |
2 |
急性毒性(14日観察) |
ラット |
リリー研究所 |
3 |
急性毒性(14日観察) |
マウス |
4 |
急性毒性(14日観察) |
ラット |
リリー研究所 |
5 |
亜急性毒性(3ヶ月) |
ラット |
6 |
亜急性毒性(3ヶ月) |
マウス |
残留農薬研究所 |
7 |
亜急性毒性(3ヶ月) |
マウス |
リリー研究所 |
8 |
慢性毒性(10ヶ月) |
マウス |
リリー研究所 |
9 |
慢性毒性(12ヶ月) |
マウス |
10 |
慢性毒性(12ヶ月) |
ラット |
リリー研究所 |
11 |
慢性毒性(12ヶ月) |
イヌ |
リリー研究所 |
12 |
慢性毒性・発がん性 (24ヶ月,M9045) |
マウス |
リリー研究所 |
13 |
慢性毒性・発がん性 (24ヶ月,M9045) |
マウス |
14 |
慢性毒性・発がん性 (24ヶ月,R764) |
ラット |
リリー研究所 |
15 |
慢性毒性・発がん性 (24ヶ月,R774) |
ラット |
16 |
慢性毒性・発がん性 (22ヶ月) |
マウス |
残留農薬研究所 |
17 |
繁殖性(3世代) |
ラット |
リリー研究所 |
18 |
催奇形性 |
ラット |
資料No. |
試験の種類(期間) |
供試生物 |
試 験 機 関 |
19 |
催奇形性(投与13日間) |
ウサギ |
リリー研究所 |
20 |
変異原性(復帰変異及びDNA修復) |
微生物 |
残留農薬研究所 |
21 |
変異原性(姉妹染色分体交換) |
チャイニーズハムスター |
リリー研究所 |
22 |
変異原性(染色体異常) |
チャイニーズハムスター肺腺維芽細胞 |
化学品検査協会 |
23 |
小核試験 |
マウス |
リリー研究所 |
24 |
小核試験 |
マウス |
残留農薬研究所 |
25 |
生態の機能に及ぼす影響: 全身症状(14日間) 呼吸、血圧、心電図(4時間) |
ウサギ ウサギ |
残留農薬研究所 |
26 |
薬理作用と治療 |
AChE BuChE |
金沢医科大学 |
マウス |
ウサギ |
27 |
一般薬理試験 |
マウス(一般症状) |
臨床医科学研究所 |
マウス (運動協調性) |
マウス(睡眠作用) |
モルモット(摘出回腸) |
ラット(骨格筋) |
マウス(コリンエステラーゼ) |
28 |
コリンエステラーゼ阻害作用と解毒試験 |
マウス |
29 |
代謝物Dの急性毒性(14日観察) |
マウス |
リリー研究所 |
30 |
不純物の急性毒性(7日観察) |
マウス |
リリー研究所 |
31 |
代謝物Dの変異原性 (姉妹染色分体交換) |
チャイニーズハムスター |
リリー研究所 |
32 |
代謝物Dの変異原性 (復帰変異及びDNA修復) |
微生物 |
残留農薬研究所 |
(別添2)
食 品 規 格 (案)
トリシクラゾール |
食品規格案 基準値案 ppm |
参考基準値 |
登録保留 基 準 値 ppm |
米(玄米) |
3 |
2 |