食品規格設定に係る毒性・残留農薬合同部会報告について - シンメチリン
シンメチリン
1.品目名:シンメチリン(CINMETHYLIN)
2.用途:除草剤(シネオール系)
3.安全性
(1)単回投与試験
急性経口LD50は、マウスで 5,000 mg/kg超、ラーット雄で 4,800 mg/kg、雌で 5,000 mg/kg 超と考えられる。
(2)反復投与/発がん性試験
B6C3FIマウスを用いた梶館(30、100、1,000 ppm)投与による24カ月間の発がん性試験において、100ppm以上の投与群で肝胆癌及び肝結節の増加が認められる。100 ppm 以上の投与群の雄、30 ppm及び 1,000 ppm 投与群の雌で肝細胞腫瘍の増加が認められる。変異原性試験成績から遺伝子傷害性はなく、肝酵素誘導試験で酵素誘導作用が認められる。また、本系マウスを用いた28日間反復投与による細胞増殖試験において、1,000 ppm投与群に肝細胞肥大が認められる。さらに、本系マウスには肝細胞腫瘍が自然発生的に高率に発生することが知られていることなどから、本試験における無毒性量は 30 ppm(7.3 mg/kg)と考えられる。
F344ラットを用いた混餌(30、100、3,000 ppm)投与による24カ月の反復投与/発がん性併合試験において、3,000 ppm投与群で摂餌量低下、体重増加抑制、肝重量増加等が認められる。また、精巣間細胞腫の増加が認められるが、変異原性試験成績から遺伝子傷害性はないこと、本系ラットでは本腫瘍が自然発生的に高率に発生することが知られており、今回の発生率と背景データとの関係等から、本試験における無毒性量は 100 ppm(4.48 mg/kg)と考えられる。
ビーグル犬を用いた混餌(2、30、100、200、3,000 ppm)投与による12カ月間の反復投与試験において、3,000ppm投与群で白血球数及び好中球数の増加、甲状腺重量の増加が認められる。また、200ppm投与群雄では好中球数の増加が認められるが、白血球数の増加は認められておらず、本試験における無毒性量は200ppm (4.2 mg/kg)と考えられる。
(3)繁殖試験
SDラットを用いた混餌(200、2,000、20,000 ppm)投与による2世代繁殖試験において、20,000ppm投与群のF1親動物で摂餌量減少、受精率低下等が、2,000ppm以上の投与群のF2世代の子動物で生存率低下、体重増加抑制等が認められる。本試験における無毒性量は200ppm(12.611mg/kg)と考えられる。
(4)催奇形性試験
SDラットを用いた強制経口(30、300、1,000、2,000 mg/kg)投与による催奇形性試験において、2,000 mg/kg 投与群の胎児動物で体重抑制、全身発育遅延に伴う側脳室拡張の発生頻度の増加が、1,000 mg/kg 以上の投与群の胎児動物で発育遅延が認められる。また、300 mg/kg 以上の投与群の母動物で流涙過多の発現が認められる。本試験における無毒性量は、母動物 30 mg/kg、胎児動物300 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
ニュージーランドホワイトウサギを用いた強制経口(30、200、500、750 mg/kg)投与による催奇形性試験において、500 mg/kg 以上の投与群の母動物で体重低下、摂餌量の低下、着床数減少が、胎児動物で生存胎児数の減少が認められる。本試験における無毒性は、母動物、胎児動物とも 200 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
(5)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、Rec‐assay、CHO培養細胞用いた色体異常試験及びラット骨髄細胞を用いた染色体異常試験の結果は、いずれも陰性と認められる。
(6)その他
上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。
4. 分布・代謝・排泄
F344ラット.を用いた経口投与(15 mg/kg)試験において、Tmax は2時間、Cmax は約 1.4μ g eq./ml、T 1/2 は約5.5時間であり、尿中に約60%、他は糞中に排泄される。
主要排泄物は未変化体、水酸化体、グルクロン酸抱合体である。
水稲による標識化合物を用いた植物代謝試験において、モノヒドロキシル体及びジヒドロキシル体を生成し、ほとんどが配糖体を形成するが、玄米における残留量は 0.025 μg/g であった。
上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。
5.ADIの設定
以上の結果を踏まえ、次のように評価する。
無毒性量 4.2 mg/kg/日
動物種 イヌ
投与量/投与経路 1200 ppm/混餌
試験期間 12カ月
試験の種類 反復投与試験
安全係数 100
ADI 0.042 mg/kg/日
6.基準値案
別添2の基準値案のとおりである。基準値案の上限まで本農薬が残留したすべての濃作物を摂食すると仮定した場合、国民栄養調査結果に基づき試算すると、摂取される農薬の量(理論最大摂取量)のADIに対する比は、1.0%である。
(別添)
〈毒性試験一覧表〉
資料No. |
試験の種類・期間 |
供試生物 (系統) |
試験機関 |
1 |
急性毒性 14日間観察 |
ラット (F344) |
ハンティンドンリサーチセンター(英国) |
2 |
急性毒性 14日間観察 |
マウス (B6) |
ハンティンドンリサーチセンター(英国) |
3 |
急性毒性 14日間観察 |
ラット (F344) |
ハンティンドンリサーチセンター(英国) |
4 |
亜急性毒性 90日間 |
ラット (F344) |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
5 |
亜急性毒性 90日間 |
マウス (B6C3F1) |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
6 |
亜急性毒性 90日間 |
イヌ (ビーグル) |
トキシコロジー パソオジー サービス (米国) |
7 |
慢性毒性 12ヶ月間 |
イヌ (ビーグル) |
ヘービントン ラボラトリーズ アメリカ(米国) トキシコロジー パソオジー サービス (米国) |
8 |
慢性毒性 12ヶ月間 |
イヌ (ビーグル) |
トキシコロジー パソオジー サービス (米国) エクスペリメンタル パソロジー ラボラトリーズ(米国) |
9 |
慢性毒性 12ヶ月間 及び回復6ヶ月間 |
イヌ (ビーグル) |
トキシコロジー パソオジー サービス (米国) エクスペリメンタル パソロジー ラボラトリーズ(米国) |
10 |
慢性毒性・発癌性 24ヶ月間 |
ラット (F344) |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
11 |
発癌性 24ヶ月間 |
マウス (B6C3F1) |
タージェリース ラボラトリーズ(米国) |
12 |
細胞増殖活性 (PCNA法、BrdU法) 28日間 |
マウス (B6C3F1) |
食品農医薬品安全性評価センター |
13 |
混合機能酸化酵素誘導 7週間 |
ラット (F344) |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
14 |
混合機能酸化酵素誘導 7週間 |
マウス (B6C3F1) |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
15 |
2世代繁殖 |
ラット (Sprague Dawley) |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
16 |
催奇形性 (妊娠6-15日投与) |
ラット (Crl:COBS CD) |
アーガス リサーチラボラトリーズ (米国) |
17 |
催奇形性 (妊娠7-19日投与) |
ウサギ (Hra:NZWSPF) |
デュポン社ハスケル研究所(米国) |
18 |
変異原性 |
復帰変異 |
細菌 |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
19 |
染色体異常 |
チャイニーズハムスター CHO細胞 |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
20 |
ラット 骨髄細胞 |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
21 |
DNA修復 |
細菌 |
ハンティンドンリサーチセンター(英国) |
22
|
生体の機能に及ぼす影響 (一般薬理) ①中枢神経系に対する作用 (1)一般症状(Irwin用量検査) |
ラット (Wister) |
ハンティンドンリサーチセンター(英国) |
(2)ヘキソバルビタール睡眠時間に対する作用 |
マウス (CD-1) |
(3)協調運動に対する作用 |
マウス (CD-1) |
(4)自発運動に対する作用 |
マウス (CD-1) |
(5)体温に対する作用 |
ウサギ (ニュージーランド白色種) |
②呼吸・循環器系に対する作用 血圧、心拍数、心電図、呼吸、大腿血流量、末梢抵抗 |
イヌ (ビーグル) |
③消化器に対する作用 (1)腸管輸送能に対する作用 |
マウス (CD-1) |
(2)胃液分泌に対する作用 |
ラット (Wister) |
④自律神経系に対する作用 摘出回腸のアゴニストによる収縮に対する作用 |
モルモット (Dunkin Hartley) |
⑤泌尿器系に対する作用 尿量、尿中電解質排泄に対する作用 |
ラット (COBSWister) |
⑥血液に対する作用 (1)血液凝固に対する作用 |
ラット (Wister) |
(2)溶血作用 |
ヒト |
23 |
原体混在物 SD205655 急性毒性 14日間観察 |
ラット (F344) |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
24 |
原体混在物 SD201290 急性毒性 14日間観察 |
ラット (F344) |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
25 |
原体混在物 SD205655 変異原性 復帰変異 |
細菌 |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
26 |
原体混在物 SD201290 変異原性 復帰変異 |
細菌 |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
27 |
代謝物 SD205588 急性毒性 14日間観察 |
ラット (F344) |
ウエストハロー リサーチセンター (米国) |
〈動植物及び土壌等における代謝分解)
資料No. |
試験の種類 |
供試動物 |
試験場所(報告年) |
M 1 M 2 M 3 M 4 |
動物体内における代謝 |
ラット |
シェル ディベロックメント社 生物科学研究所(米国) |
M 5 |
動物体内における代謝 |
ラット雄 |
第一化学薬品 |
M 6 |
植物における代謝 |
水稲 |
シッティングボーン リサーチセンター(英国) |
M 7 |
植物における代謝 |
大豆 |
シェルディベロックメント社 生物科学研究所(米国) |
M 8 |
植物における代謝 |
落花生 |
|
M 9 |
植物におけ.る代謝 |
ハツカダイコン |
シェル ディベロックメント社 生物科学研究所(米国) |
M 10 M 11 |
土壌における運命 畑地土壌 好気的条件 |
1) 砂壌土 2) 壌土 3) 微砂質埴壌土 |
シェル ディベロックメント社 生物科学研究所(米国) |
M 12 |
土壌における運命 畑地土壌 好気的及び嫌気的条件 |
砂壌土 |
シェル ディベロックメント社 生物科学研究所(米国) |
M 13 M 14 |
土壌における運命 水田土壌 |
水田土壌 |
ヘーゼルトンUK(英国) |
M 15 M 16 M 17 |
加水分解 光分解 -水中 -土壌表面 |
緩衝液 緩衝液 砂壌土 |
シェル ディベロックメント社 生物科学研究所(米国) |
(別添2)
食品規格(案)
シンメチリン |
食品規格案 基準値案 ppm |
参考基準値 |
登録保留 基準値 ppm |
米(玄米) |
0.1 |
0.1 |