食品規格設定に係る毒性・残留農薬合同部会報告について - エトフェンプロックス
エトフェンプロックス
1.品目名:エトフェンプロックス(ETHOFENPROX)
2.用 途:殺虫剤(ピレスロイド系)
3.安全性
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで107,200 mg/kg超(検体比重量から換算)、ラットで42,880 mg/kg超(検体比重量から換算)、イヌで5,000 mg/kg超と考えられる。
(2)反復投与/発がん性試験
CD-1マウスを用いた混餌(30、100、700、4,900 ppm)投与による108週間の反復投与/発がん性併合試験において、4,900 ppm投与群で肝及び脾重量の増加等、700 ppm以上の投与群で体重増加抑制等が、100 ppm以上の投与群で腎皮質尿細管の拡張等の病理組織学的変化が認められる。本試験における無毒性量は30 ppm(3.1 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
SDラットを用いた混餌(30、100、700、4,900 ppm)投与による110週間の反復投与/発がん性併合試験において、4,900 ppm投与群雄で体重増加抑制、肝重量増加が認められる。また、同投与群雌で体重増加抑制のほか、T3の低下、肝重量増加及び甲状腺濾胞腺腫の増加が認められる。700 ppm以上の投与群では、甲状腺及び腎重量増加等が認められる。本試験における無毒性量は100 ppm(3.7 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
ビーグル犬を用いた混餌(100、1,000、10,000 ppm)投与による52週間の反復投与試験において、10,000 ppm投与群でアルカリホスファターゼの上昇、肝重量の増加等が認められる。本試験における無毒性量は1,000 ppm(32.19 mg/kg)と考えられる。
(3)繁殖試験
SDラットを用いた混餌(100、700、4,900 ppm)投与による2世代繁殖試験において、700 ppm以上のF1、F2子動物で肝及び腎重量の増加等が認められる。本試験の無毒性量は100 ppm(4.3 mg/kg)と考えられる。
(4)催奇形性試験
SDラットを用いた強制経口(12.5、250、5,000 mg/kg)投与による催奇形性試験において、5,000 mg/kg投与群母動物で流涎、口周辺部の赤褐色の着色等が認められる。胎児動物においては、検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は、母動物250 mg/kg、胎児動物5,000 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
ニュージーランドホワイトウサギを用いた強制経口(10、50、250 mg/kg)投与による催奇形性試験において、50 mg/kg以上の母動物体重増加抑制等が認められる。胎児動物においては、検体投与に起因した影響は認められない。本試験による無毒性量は母動物10 mg/kg、胎児動物250 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
(5)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、Rec-assay、CHL培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、いずれも陰性と認められる。
(6)その他
上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。
4.ADIの設定
以上の結果を踏まえ、次のように評価する。
無毒性量 3.1 mg/kg/日
動物種 マウス
投与量/投与経路 30 ppm/混餌
試験期間 108週間
試験の種類 反復投与/発がん性併合試験
安全係数 100
ADI 0.03 mg/kg/日
5.基準値案
別添2の基準値案のとおりである。基準値案の上限まで本農薬が残留したすべての農作物を摂食すると仮定した場合、国民栄養調査結果に基づき試算すると、摂取される農薬の量(理論最大摂取量)のADIに対する比は、55.8%である。
(別添1)
毒性資料一覧表
資料№ |
試験の種類(期間) |
供試生物 |
試 験 機 関 |
Ⅰ-1 |
急性毒性(14日間観察) |
ラット |
食品薬品安全センター |
Ⅰ-2 |
急性毒性(14日間観察、腹腔内のみ 21日間観察) |
マウス |
Ⅰ-3 |
急性毒性(14日間観察) |
イヌ |
Huntingdon(英国) |
Ⅱ-1 |
亜急性毒性(13週間) |
ラット |
Huntingdon(英国) |
Ⅱ-2 |
亜急性毒性(3ヶ月) |
ラット |
動物繁殖研究所 |
Ⅱ-3 |
亜急性毒性(13週間) |
マウス |
Huntingdon(英国) |
Ⅲ-1 |
慢性毒性・発がん性(110週間) |
ラット |
Huntingdon(英国) |
Ⅲ-2 |
慢性毒性・発がん性(108週間) |
マウス |
Huntingdon(英国) |
Ⅲ-3 |
慢性毒性(52週間+8週間回復) |
イヌ |
Huntingdon(英国) |
Ⅳ |
繁殖性(2世代) |
ラット |
Huntingdon(英国) |
Ⅴ-1 |
催奇形性 |
ラット |
Ⅴ-2 |
ウサギ |
Ⅵ-1 |
変異原性(復帰変異性) |
微生物 |
残留農薬研究所 |
|
(DNA損傷) |
|
|
Ⅵ-2 |
変異原性(染色体異常) |
チャイニーズハムスター肺細胞 |
|
Ⅶ |
薬 理 |
自発運動量に対する作用 |
マウス |
三井製薬(株)生物化学研究所 |
Thiopental睡眠に及ぼす作用 |
抗痙攣作用 |
傾斜板順応試験 |
体温に対する作用 |
骨髄反射電位に対する作用 |
ネコ |
脳波に対する作用 |
ラット |
資料№ |
試験の種類(期間) |
供試生物 |
試 験 機 関 |
Ⅶ |
薬 理 |
呼吸、血圧、心電図に対する作用 |
イヌ |
三井製薬(株)生物化学研究 |
摘出心房に対する作用 |
モルモット |
摘出回腸に対する作用 |
モルモット ウサギ |
炭末輸送能に対する作用 |
マウス |
輸精管に対する作用 |
ラット |
摘出子宮に対する作用 |
ラット |
体性神経系に対する作用 |
ラット |
自律神経節に及ぼす影響 |
ネコ |
尿量及び尿中電解質に及ぼす影響 |
ラット |
血清生化学的検査 |
ラット |
血液凝固に及ぼす影響 |
ラット |
Ⅷ-1 |
急性毒性〔代謝分解物-酸化体〕 (15日間観察) |
ラット |
Life Science(英国) |
Ⅷ-2 |
変異原性(復帰変異性) 〔代謝分解物-酸化体〕 |
微生物 |
Ⅷ-3 |
変異原性(DNA復帰) 〔代謝分解物-酸化体〕 |
微生物 |
Ⅷ-4 |
急性毒性〔代謝分解物-脱エチル体〕 (14日間観察) |
ラット |
日本実験医学研究所 |
Ⅷ-5 |
変異原性(復帰変異性) 〔代謝分解物-脱エチル体〕 |
微生物 |
食品農医薬品安全性評価センター |
Ⅷ-6 |
変異原性(DNA復帰) 〔代謝分解物-脱エチル体〕 |
微生物 |
(別添2)
食 品 規 格 (案)
エトフェンプロックス |
食品規格案基準値案 ppm |
参考基準値 登録保留基準値 ppm |
米(玄米) 小麦 大麦 ライ麦 とうもろこし |
0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 |
0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 |
大豆 小豆類(含インゲン、ササゲ、レンズ) |
0.2 0.2 |
0.1 0.1 |
ばれいしょ さといも類(含やつがしら) かんしょ やまいも(長いも) |
0.1 0.1 0.1 0.1 |
0.1 0.1 0.1 0.1 |
てんさい さとうきび |
0.5 0.1 |
0.5 0.1 |
だいこん類(含ラディッシュ)(根) だいこん類(含ラディッシュ)(葉) かぶ類(根) かぶ類(葉) はくさい キャベツ(含芽キャベツ) |
2 10 2 10 5 2 |
2 2 2 2 2 2 |
レタス(含チシャ、サラダナ) 上記以外のきく科野菜 |
2 2 |
2 2 |
ねぎ(含リーキ) わけぎ |
2 2 |
2 2 |
トマト なす |
2 2 |
2 2 |
きゅうり(含ガーキン) |
2 |
2 |
スイカ(果実) メロン類(果実) まくわうり(果実) |
2 2 2 |
2 2 2 |
しょうが 未成熟えんどう えだまめ |
2 2 5 |
2 2 2 |
みかん なつみかんの果実全体 レモン オレンジ(含ネーブルオレンジ) グレープフルーツ ライム 上記以外のかんきつ類果実 |
2 5 5 5 5 5 5 |
2 2 2 2 2 2 2 |
りんご 日本なし 西洋なし |
2 2 2 |
2 2 2 |
もも |
2 |
2 |
かき |
2 |
2 |
くり |
2 |
2 |
茶 |
10 |
10 |