食品規格設定に係る毒性・残留農薬合同部会報告について - ホスチアゼ―ト
ホスチアゼ―ト
1.品目名:ホスチアゼート(FOSTHIAZATE)
2.用 途:殺虫剤(リン酸アミド系)
3.安全性
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで91~104 mg/kg、ラットで57~73 mg/kgと考えられる。
(2)反復投与/発がん性試験
ICRマウスを用いた混餌(10、30、100、300 ppm)投与による102週間の発がん性試験において、300 ppm投与群で死亡率の増加、体重増加抑制、腎臓乳頭部の石灰化、100 ppm以上の投与群で副腎皮髄境界部の色素沈着等が認められる。本試験における無毒性量は30 ppm(3.32 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
SDラットを用いた混餌(1、10、50、200 ppm)投与による104週間の反復投与/発がん性併合試験において、50 ppm以上投与群で脳コリンエステラーゼ活性の低下、赤血球数及びヘモグロビン値の低下、卵巣に泡沫間質細胞等が認められる。本試験における無毒性量は10 ppm(0.41 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
ビーグル犬を用いた強制経口(0.05、0.1、0.5、5 mg/kg)投与による12ヶ月間の反復投与試験において、5 mg/kg投与群で赤血球数、ヘマトクリット値及びヘモグロビン値の低下、副腎皮質細胞の淡明化及び肥大、0.5 mg/kg以上の投与群でアラニンアミノトランスフェラーゼ(GPT)の上昇等が認められる。本試験における無毒性量は0.1 mg/kgと考えられる。
(3)繁殖試験
SDラットを用いた混餌(3、10、30、100 ppm)投与による2世代繁殖試験において、30 ppm以上の投与群F1世代子動物で成長抑制、生存率低下、10 ppm以上の投与群F0世代親動物の雌で異常発情周期の増加等が認められる。本試験の無毒性量は3 ppm(0.21 mg/kg)と考えられる。
(4)催奇形性試験
SDラットを用いた強制経口(3、50、10 mg/kg)投与による催奇形性試験において、10 mg/kg投与群の母動物で体重増加抑制が認められる。胎児動物においては、検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は母動物5 mg/kg、胎児動物10 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
ニュージーランドホワイトウサギを用いた強制経口(0.5、1、1.5、2 mg/kg)投与による催奇形性試験において、2 mg/kg投与群の胎児動物で体重低値等が認められる。母動物においては、検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は母動物2 mg/kg、胎児動物1.5 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
(5)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、Rec-assay、CHL培養細胞を用いた染色体異常試験、マウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と認められる。
(6)その他
上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。
4.ADIの設定
以上の結果を踏まえ、次のように評価する。
無毒性量 0.1 mg/kg/日
動物種 イヌ
投与量/投与経路 0.1 mg/kg/強制経口
試験期間 12ヶ月
試験の種類 反復投与試験
安全係数 100
ADI 0.001 mg/kg/日
6.基準値案
別添2の基準値案のとおりである。基準値案の上限まで本農薬が残留したすべての農作物を摂食すると仮定した場合、国民栄養調査結果に基づき試算すると、摂取される農薬の量(理論最大摂取量)のADIに対する比は、42.2%である。
(別添1)
<毒性試験一覧表>
資料№ |
試験の種類(期間)
|
供試生物 |
試 験 機 関 |
1 |
急性毒性 14日間観察 |
ラット |
LSR |
2 |
急性毒性 14日間観察 |
マウス |
LSR |
3 |
急性毒性 14日間観察 |
ラット |
LSR |
4 |
亜急性毒性 13週間(10週間回復) |
ラット |
LSR |
5 |
亜急性毒性 13週間 |
イヌ |
LSR |
6 |
慢性毒性 12ヶ月(52週間) |
イヌ |
動繁研 |
7 |
慢性毒性/発がん性 24ヶ月(104週間) |
ラット |
LSR |
8 |
発がん性 24ヶ月(102週間) |
マウス |
LSR |
9 |
繁殖 2世代 |
ラット |
LSR |
10 |
催奇形性 |
ラット |
LSR |
11 |
催奇形性 |
ウサギ |
LSR |
12 |
変異原性 復帰変異 |
サルモネラ菌: TA100,TA98, TA1535,TA1537 大腸菌:WP2 uvrA |
残研 |
13 |
変異原性 染色体異常 |
CHL細胞 |
残研 |
14 |
変異原性 DNA修復 |
枯草菌 Bacillus subtilis |
残研 |
15 |
変異原性 小核試験 |
マウス |
残研 |
16 |
生体の機能に及ぼす影響 |
中枢神経系 |
行動 |
マウス |
環保研 |
一般症状 |
ウサギ |
麻酔強化 |
マウス |
脳波 |
ウサギ |
呼吸、循環器系 |
イヌ |
自律神経系 |
回腸 |
ウサギ |
|
モルモット |
輸精管 |
ラット |
消化管 |
胃液 |
ラット |
輸送 |
マウス |
末梢神経系 |
ラット |
血液 |
凝固 |
ラット |
溶血 |
ウサギ |
資料№ |
試験の種類(期間) |
供試生物 |
試 験 機 関 |
17 |
代謝物 DETO 急性毒性 14日間観察 |
マウス |
残研 |
18 |
代謝物 DETO 変異原性 復帰変異 |
サルモネラ菌: TA100,TA98,TA1535,TA1537 大腸菌:WP2 uvrA |
残研 |
19 |
代謝物 DTTO 急性毒性 14日間観察 |
マウス |
残研 |
20 |
代謝物 DTTO 変異原性 復帰変異 |
サルモネラ菌: TA100,TA98,TA1535,TA1537 大腸菌:WP2 uvrA |
残研 |
21 |
代謝物 DBTS 急性毒性 14日間観察 |
マウス |
残研 |
22 |
代謝物 DBTS 変異原性 復帰変異 |
サルモネラ菌: TA100,TA98,TA1535,TA1537 大腸菌:WP2 uvrA |
残研 |
23 |
代謝物 DBTO 急性毒性 14日間観察 |
マウス |
残研 |
24 |
代謝物 DBTO 変異原性 復帰変異 |
サルモネラ菌: TA100,TA98,TA1535,TA1537 大腸菌:WP2 uvrA |
残研 |
25 |
代謝物 TZO 急性毒性 14日間観察 |
マウス |
残研 |
26 |
代謝物 TZO 変異原性 復帰変異 |
サルモネラ菌: TA100,TA98,TA1535,TA1537 大腸菌:WP2 uvrA |
BML |
LSR Life Science Research Ltd.
化検協 財団法人 化学品検査協会 化学品安全センター 日田研究所
動繁研 財団法人 動物繁殖研究所 安全性試験研究センター
残 研 財団法人 残留農薬研究所
環保研 株式会社 環境保健生物研究センター
石原研 石原産業株式会社 中央研究所
BML 株式会社 ビー・エム・エル
(別添2)
食品規格(案)
ホスチアゼート |
食品規格案 基準値案 ppm |
参考基準値 |
登録保留基準値
ppm
|
小豆類(含インゲン、ササゲ、レンズ) |
0.02 |
0.02 |
ばれいしょ かんしょ |
0.03 0.03 |
0.03 0.03 |
だいこん類(含ラディッシュ)(根) だいこん類(含ラディッシュ)(葉) |
0.2 0.2 |
0.05 0.05 |
にんじん |
0.2 |
0.02 |
トマト なす |
0.2 0.2 |
0.02 0.02 |
きゅうり(含ガーキン) |
0.2 |
0.02 |