食品規格設定に係る毒性・残留農薬合同部会報告について - テフルトリン
テフルトリン
1.品目名:テフルトリン(TEFLUTHRIN)
2.用 途:殺虫剤(ピレスロイド系)
3.安全性
(1)単回投与試験
急性経口LD50は、マウスで45.6~57.0 mg/kg、SDラットで22.4~25.1 mg/kg、Wistarラットで150~180 mg/kgと考えられる。
(2)反復投与/発がん性試験
マウス(Alpk:AP)を用いた混餌(25、100、400 ppm)投与による104週間の発がん性試験において、400 ppm投与群で摂餌量低下、100 ppm以上の投与群で体重増加抑制が認められる。本試験における無毒性量は25 ppm(3.0 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
Wistar由来ラット(Alpk:AP)を用いた混餌(25、100、400 ppm)投与による104週間の反復投与/発がん性併合試験において、400 ppm投与群で肝重量及び脳の比重量増加等が、100 ppm以上の投与群で異常歩行等の神経症状、体重増加抑制、摂餌量減少等が認められる。本試験における無毒性量は25 ppm(1.2 mg/kg)と考えられる。発がん性は認められない。
ビーグル犬を用いた強制経口(0.1、0.5、2 mg/kg)投与による52週間の反復投与試験において、2 mg/kg投与群で運動失調等の神経症状、体重増加抑制、肝及び腎の比重量増加等が認められる。本試験における無毒性量は0.5 mg/kgと考えられる。
(3)繁殖試験
Wistarラット(Alpk:AP)を用いた混餌(15、50、250 ppm)投与による3世代繁殖試験において、250 ppm投与群の各世代の親動物で歩行異常、F0、F1世代の親動物で体重増加抑制、摂餌量の減少等、各世代の子動物で歩行異常、体重増加抑制、同腹子体重の低値等が認められる。 本試験における無毒性量は50ppm (5.3mg /kg)と考えられる。
(4)催奇形性試験
Wistar由来ラット(Alpk:AP)を用いた強制経口(1、3、5 mg/kg)投与による催奇形性試験において、5 mg/kg投与群母動物で歩行異常、体重増加抑制、摂餌量の減少等、胎児動物で軽度の化骨遅延、 3mg/kg以上の投与群母動物で立毛、体重増加抑制、摂餌量の減少等が認められた。本試験における無毒性量は母動物 1 mg/kg、胎児動物 3 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。
ニュージーランドホワイトウサギを用いた強制経口(3、6、12 mg/kg)投与による催奇形性試験において、いずれの投与群においても母動物で振戦、体重増加抑制、摂餌量減少等が認められた。胎児動物では、検体投与に起因した影響は認められない。本試験における無毒性量は胎児動物 12 mg/kgと考えられる。催奇形性は認められない。なお、妊娠ニュージーランドホワイトウサギを用いた強制経口(2、12 mg/kg)投与による母動物毒性試験において、12 mg/kg投与群で後肢機能低下、躯幹振戦等が認められるが、2 mg/kg投与群では何ら異常は認められず、母動物に対する無毒性量は、2 mg/kgと考えられる。
(5)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験、Rec-assay、マウスリンパ腫細胞を用いた突然変異試験、ラット肝培養細胞を用いた不定期DNA合成試験、マウスを用いた小核試験、ラット骨髄細胞を用いた染色体異常試験、マウスを用いた優性致死試験の結果は、いずれも陰性と認められる。
(6)その他
上記を含め、別添1に示した試験成績が提出されている。
4.ADIの設定
以上の結果を踏まえ、次のように評価する。
無毒性量 0.5 mg/kg/日
動物種 イヌ
投与量/投与経路 0.5 mg/kg/強制経口
試験期間 52週間
試験の種類 反復投与試験
安全係数 100
ADI 0.005 mg/kg/日
5.基準値案
別添2の基準値案のとおりである。基準値案の上限まで本農薬が残留したすべての農作物を摂食すると仮定した場合、国民栄養調査結果に基づき試算すると、摂取される農薬の量(理論最大摂取量)のADIに対する比は、5.1%である。
(別添1)
<毒性試験一覧表>
資料No. |
試験の種類(期間) |
供試生物 |
試 験 機 関 |
1 |
急性毒性試験 14日間観察 |
ラット |
CTL |
2 |
急性毒性試験 14日間観察 |
ラット |
残研 |
3 |
急性毒性試験 14日間観察 |
ラット |
臨医研 |
1 |
急性毒性試験 14日間観察 |
マウス |
CTL |
4 |
急性毒性試験 14日間観察 |
マウス |
安評センター |
1 |
急性毒性試験 14日間観察 |
ラット |
CTL |
5 |
亜急性毒性試験 90日間 |
イヌ |
CTL |
6 |
亜急性毒性試験 90日間 |
ラット |
CTL |
7 |
亜急性毒性試験 21日間観察 |
ラット |
CTL |
8 |
慢性毒性試験 52週間 |
イヌ |
CTL |
9 |
慢性毒性発がん性併合試験 104週間 |
ラット |
CTL |
10 |
発がん性試験 104週間 |
マウス |
CTL |
11 |
3世代繁殖試験 |
ラット |
CTL |
12 |
催奇形性試験 |
ラット |
CTL |
13 |
催奇形性試験 |
ウサギ |
CTL |
参7 |
催奇形性試験 |
ウサギ |
CTL |
14 |
復帰変異試験 |
S.typhi-murium |
CTL |
15 (GLP) |
復帰変異試験 |
E.coli |
CTL |
16 |
細胞遺伝学的試験 |
ラット |
CTL |
17 (GLP) |
DNA修復試験 |
B.subtilis |
安評センター |
18 |
突然変異試験 |
マウスリンパ腫細胞 |
CTL |
19 (GLP) |
小核試験 |
マウス |
CTL |
20 (GLP) |
不定期DNA合成誘発試験 |
ラット肝細胞 |
CTL |
21 |
優性致死試験 |
マウス |
CTL |
22 |
薬理試験 |
ラット ウサギ モルモット マウス |
CTL |
23 |
薬理試験 |
マウス マウス モルモット イヌ マウス ラット ラット |
イナリサーチ |
24 |
解毒試験 |
マウス |
臨医研 |
CTL :Central Toxicology Laboratory, ICI(英国)
残研 :(財)残留農薬研究所
臨医研 :(株)臨床医科学研究所
安評センター :(財)食品農医薬品安全性評価センター
HRC :Huntington Research Centre(英国)
イナリサーチ :(株)イナリサーチ
(別添2)
食 品 規 格 (案)
テフルトリン |
食品規格案 基準値案 pp |
参考基準値 |
登録保留 基 準 値 ppm |
外 国 基準値 ppm |
とうもろこし |
0.1 |
|
0.1(カ) |
らっかせい |
0.1 |
0.1 |
|
かんしょ |
0.1 |
0.1 |
|
さとうきび |
0.1 |
0.1 |
|
だいこん類(含ラディッシュ)(根) だいこん類(含ラディッシュ)(葉) はくさい キャベツ(含芽キャベツ) |
0.1 0.5 0.1 0.1 |
0.1 0.1 0.1 0.1 |
|
いちご |
0.1 |
0.1 |
|
(注)カ:カナダ
登録保留基準値は、国内で適用のある農作物についてのみ記載。