食品衛生調査会残留農薬・毒性合同部会議事要旨
日時:平成8年2月20日(火)l4:00~17:30
場所:厚生省特別第1会議室
出席者:池上幸江、伊藤康江、江角浩安、大石幸子、黒川雄二、鈴木啓介、高仲正(残留農薬部会長)、戸部満寿夫(毒性部会長、座長)、豊川裕之、長尾美奈子、林裕造 各委員(敬称略)
厚生省:小林生活衛生局長、山本食品化学課長、他課長補佐以下6名
オブザーバー:農水省、環境庁
(議題)残留農薬基準の設定について
(議事要旨)
1.審議概要
平成7年10月に厚生大臣から諮問され、平成8年1月30日の本部会で審議した17農薬の残留基準の設定に関する部会報告案、及び平成6年12月に諮問した15農薬の残留基準の設定に関する分科会における各農薬の安全性評価結果・基準値案について、事務局から説明があり、その後、審議が行われた。
その結果、フルフェノクスロンについては新たな資料の入手を待って審議することとし、これを除く31農薬について、安全性評価概要、基準値案を委員長あて報告することとされた。
2.主要な意見等
(委 員) 報告書案に「反復投与試験」という用語があるが、連日検体を投与しているので、「連続投与試験」とすべきではないか。
(委 員) 本試験はOECDガイドライン等でいう「repeated dose study」に相当し、我が国では、通例、「反復投与試験」と呼ばれている。
(委 員) 報告書案の無毒性量の単位が「mg/kg」とされているが、正確にはADIの項と同様、「mg/kg/日」とすべきではないか。
(座 長) 正確にはご指摘のとおりであるが、省略して「mg/kg」とする場合も多く、このような表現としたものである。
(委 員) 「マウスにはこれらの腫瘍が自然発生的に高率に発生することが知られている」という表現があるが、マウス一般についてではなく、この系のマウスというように限定すべきではないか。
(委 員) マウス一般について言っているものではないので、「本系マウス」等の表現に変更するべきである。
(委 員) 農薬の植物体内における代謝物の安全性について、報告書案では記載されていないが、試験はされているのか。
(委 員) 一般的に、植物、土壌中に特有な代謝物については、急性毒性、変異原性のレベルまでは試験が行われている。具体的には資料一覧のとおりである。
(事務局) フルフェノクスロンについては、本年夏を目途に追加資料が提出されることから、これを待って具体的な評価をいただくことでよろしいか。
(座 長) 特にご意見もないので、フルフェノクスロンについては今回の報告から省くことする。
(委 員) ブタミホスのADI設定について、ICRマウスを用いた亜急性毒性試験における無毒性量は0.663mg/kgであるが、ADIの設定根拠とした無毒性量はイヌを用いた慢性毒性試験の2.5mg/kgであるのはなぜか。
(委 員) ADIの設定については、一生涯にわたる摂取の影響を評価するという観点から、国際的にも、我が国においても、長期の毒性試験の結果に基づくことを基本としている。従って、長期の試験のうち無毒性量が最も小さいイヌの試験をもとに、亜急性毒性や遅発性神経毒性を考慮して、安全係数を300として、分科会ではADIを設定した。
〈委 員) 亜急性毒性試験の無毒性量の方がより小さく、一方、遅発性神経毒性が見られる用量はかなりの高用量であるので、亜急性毒性試験のデータを採って安全係数を100とすることはできないか。
(座 長) 残留農薬も食品添加物も、生涯摂取する可能性があるということから、長期の試験結果に基づくということが全般的な合意の基本にあり、安全係数は別にして、この場合も、慢性毒性試験結果に基づきADIを設定することでどうか。
(委 員) 亜急性毒性試験結果をもとにADIを設定することは、この場合、適切とは言えない。
〈委 員) 慢性毒性試験結果に基づいてADIを設定するという基本線に則るべきと思う。
(座 長) 慢性毒性試験のデータをもとにADIを決めることとし、安全係数は亜急性毒性試験の無毒性量をもカバーできるよう、安全サイドに立って500としたい。