毒性部会 部会長 戸部満寿夫
添加物部会 部会長 山中 和
食品添加物の使用基準の改正に関する食品衛生調査会毒性部会及び添加物合同部会報告について
平成6年12月21日食調第59号及び食調第60号をもって付議された食品添加物の使用基準改正について、毒性部会及び添加物部会合同部会で審議した結果、下記のとおりとりまとめたので報告する。
記
亜塩素酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、着色料(化学的合成品を除く。)、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及び没食子酸プロピルについては、別添のとおり使用基準を改正することが適当である。
(別添)
食品添加物名 |
亜塩素酸ナトリウム |
○亜塩素酸ナトリウム(下線部分が改正事項。) 亜塩素酸ナトリウムは、柑橘類果皮(菓子製造に用いるものに限る。)、さくらんぼ、生食用野菜類、ふき、ぶどう、もも及び卵類(卵殻の部分に限る。以下この目において同じ。)、以外の食品に使用してはならない。また、使用した亜塩素酸ナトリウムは、最終食品の完成前に分解し、又は除去しなければならない。 亜塩素酸ナトリウムの使用量は、生食用野菜類及び卵類にあっては、浸漬液1kgに付つき、0.50g以下でなければならない。
1.亜塩素酸ナトリウムの安全性に関する知見 亜塩素酸ナトリウムの安全性に関する文献検索から安全性を疑わせる新たな知見は得られていない。なお、本品は最終食品の完成前に分解または除去しなければならないとされており、摂取量の考察を要しない。
2.要請のあった食品に対する有効性に関する知見 柑橘類果皮の漂白について、亜塩素酸ナトリウムは漂白作用を有するほか、果皮の組織軟化がないこと等が示された。生食用野菜類の殺菌効果については、カットキャベツにおいて、亜塩素酸ナトリウムは次亜塩素酸ナトリウムより低濃度で生菌数を抑制すること、また、鶏卵の表面に付着しているサルモネラ菌の殺菌効果について、次亜塩素酸ナトリウムと同等の効果があることが示された。なお、浸漬液1kgにつき亜塩素酸ナトリウム0.50g以下の使用であれば、生食用野菜類に対する漂白作用はみられていない。 |
食品添加物名 |
亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム及びピロ亜硫酸ナトリウム |
○亜硫酸ナトリウム(下線部分が改正事項。) 亜硫酸ナトリウムは、ごま、豆類及び野菜に使用してはならない。ごま、豆類及び野菜以外の食品に使用する場合は、食品中に二酸化硫黄として、乾燥果実(干しぶどうを除く。)にあってはその1kgにつき2.0g以上、乾燥マッシュポテト及びゼラチンにあってはその1kgにつき0.50g以上、かんぴょうにあってはその1kgにつき5.0g以上、糖蜜及びキャンデットチェリー(除核したさくらんぼを砂糖漬にしたもの又はこれに砂糖の結晶を付けたもの若しくはこれをシロップ漬にしたものをいう。以下この目において同じ。)にあってはその1kgにつき0.30g以上、果実酒(果実酒の製造に用いる酒精分1容量パーセント以上を含有する果実搾汁及びこれを濃縮したものを除く。)及び雑酒にあってはその1kgにつき0.35g以上、5倍以上に希釈して飲用に供する天然果汁にあってはその1kgにつき0.15g以上、甘納豆及び煮豆にあってはその1kgにつき0.10g以上、えび及び冷凍生かににあってはそのむき身の1kgにつき0.10g以上、コンニャク粉にあってはその1kgにつき0.90g以上、糖化用タピオカでんぷんにあってはその1kgにつき0.25g以上、水あめにあってはそのlkgにつき0.20g以上、その他の食品(キャンデットチェリーの製造に用いるさくらんぼ、ビールの製造に用いるホップ並びに果実酒の製造に用いる果汁、酒精分1容量パーセント以上を含有する果実搾汁及びこれを濃縮したものを除く。)にあってはその1kgにつき0.030g(第2添加物 の部F使用基準 添加物一般の表の亜硫酸塩等の項に掲げる場合であって、かつ、同表の第3欄に掲げる食品(コンニャクを除く。)1kg中に同表の第1欄に掲げる添加物が、二酸化硫黄として、0.030g以上残存する場合は、その残存量)以上残存しないように使用しなければならない。 (注)次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムについても同様である。
1.亜硫酸塩類の安全性に関する知見 本品は、FA0/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)において評価され、一日摂取許容量(ADI)が二酸化硫黄として0-0.7mg/kg体重・日と設定されている。また、亜硫酸塩類の安全性に関する文献検索から安全性を疑わせる新たな知見は得られていない。
2.亜硫酸塩類の一日摂取量 乾燥マッシュポテトからの亜硫酸塩類の摂取について、亜硫酸塩類が使用基準案の上限まで使用されたと仮定した場合の理論最大摂取量及びそのADIに対する比は次のとおり試算される。
なお、食品からの二酸化硫黄の摂取については、添加物のみでなく食品に由来するものもあるが、その摂取量は21mg/人・日、対ADI比は60.0%と報告されている。
3.要請のあった食品に対する有効性に関する知見 乾燥マッシュポテトに対して亜硫酸塩類を添加し、不飽和脂肪酸の酸化により生じるヘキサナールを指標とする試験において、0.045%の亜硫酸塩類を添加した場合、50週目においても、酸化防止効果が示された。
4.その他 (1)諸外国での使用状況
(注)GMP:Good Manufacturing Practice |
食品添加物名 |
ソルビン酸、ソルビン酸カリウム |
○ソルビン酸(下線部分が改正事項。) ソルビン酸は、魚介乾製品、魚肉練り製品(魚肉すり身を除く。以下この目において同じ。)、鯨肉製品、食肉製品、うに、チーズ、マーガリン、フラワーペースト類(小麦粉、でん粉、ナッツ類若しくはその加工品、ココア、チョコレート、コーヒー、果肉、果汁、いも類、豆類又は野菜類を主要原料とし、これに砂糖、油脂、粉乳、卵、小麦粉等を加え、加熱殺菌してぺ一スト状とし、パン又は菓子に充てん又は塗布して食用に供するものをいう。)、煮豆、あん類、つくだ煮、スープ(ただしポタージュスープを除く。以下この目において同じ。)、たれ、つゆ、キャンデットチェリー(除核したさくらんぼを砂糖漬にしたもの又はこれに砂糖の結晶を付けたもの若しくはこれをシロップ漬にしたものをいう。以下この目において同じ。)、ジャム、シロップ、ニョッキ、ケチャップ、甘酒(3倍以上に希釈して飲用するものに限る。以下この目において同じ。)、果実酒、雑酒、みそ、干しすもも、はっ酵乳(乳酸菌飲料の原料に供するものに限る。以下この目において同じ。)、乳酸菌飲料(殺菌したものを除く。以下この目において同じ。)、たくあん潰(生大根又は干し大根を塩漬にした後、これを調味料、香辛料、色素などを加えたぬか又はふすまで漬けたものをいう。ただし、一丁潰たくあん及び早漬たくあんを除く。)並びにかす漬、こうじ漬、塩漬、しょう油漬、酢漬及びみそ漬の漬物以外の食品に使用してはならない。 ソルビン酸の使用量は、ソルビン酸として、チーズにあってはその1kgにつき3.0g(プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム又はプロピオン酸ナトリウムを併用する場合は、ソルビン酸としての使用量及びプロピオン酸としての使用量の合計量が3.0g)以下、魚肉ねり製品、鯨肉製品、食肉製品及びうににあってはその1kgにつき2.0g以下、いかくん製品及びたこくん製品にあってはその1kgにつき1.5g以下、魚介乾製品(いかくん製品及びたこくん製品を除く。)、マーガリン、フラワーペースト類、煮豆、あん類、つくだ煮、キャンデットチェリー、ジャム、シロップ、ニョッキ、みそ、たくあん漬並びにかす漬、こうじ漬、塩漬、しょう油漬及びみそ漬の漬物にあってはその1kgにつき1.0g(マーガリンにあっては、安息香酸又は安息香酸ナトリウムを併用する場合は、安息香酸としての使用量及びソルビン酸としての使用量の合計量が1.0g)以下、ケチャップ、スープ、たれ、つゆ、干しすもも及び酢漬の漬物にあってはその1kgにつき0.50g以下、甘酒及びはつ酵乳にあってはその1kgにつき0.30g以下、果実酒及び雑酒にあってはその1kgにつき0.20g以下、乳酸菌飲料にあってはその1kgにつき0.050g(乳酸菌飲料の原料に供するものにあっては、0.30g)以下でなければならない。
○ソルビン酸カリウム(下線部分が改正事項。) ソルビン酸カリウムは、甘酒(3倍以上に希釈して飲用するものに限る。以下この目において同じ。)、あん類、うに、果実酒、菓子の製造に用いる果実ペースト(果実をすり潰し、又は裏ごししてぺ一スト状としたものをいう。以下この目において同じ。)及び果汁(濃縮果汁を含む。以下この目において同じ。)、かす漬、こうじ漬、塩漬、しょう油漬、酢漬及びみそ漬の漬物、キャンデットチェリー(除核したさくらんぼを砂糖漬にしたもの又はこれに砂糖の結晶を付けたもの若しくはこれをシロップ漬にしたものをいう。以下この目において同じ。)、魚介乾製品、魚肉ねり製品(魚肉すり身を除く。以下この目において同じ。)、鯨肉製品、ケチャップ、雑酒、ジャム、食肉製品、シロップ、スープ(ただしポタージュスープを除く。以下この目において同じ。)、たくあん漬(生大根又は干し大根を塩漬にした後、これを調味料、香辛料、色素などを加えたぬか又はふすまで漬けたものをいう。ただし、一丁漬たくあん及び早漬たくあんを除く。以下この目において同じ。)、たれ、チーズ、つくだ煮、つゆ、煮豆、乳酸菌飲料(殺菌したものを除く。)、ニョッキ、はっ酵乳(乳酸菌飲料の原料に供するものに限る。以下この目において同じ。)、フラワーペースト類(小麦粉、でん粉、ナッツ類若しくはその加工品、ココア、チョコレート、コーヒー、果肉、果汁、いも類、豆類又は野菜類を主要原料とし、これに砂糖、油脂、粉乳、卵、小麦粉等を加え、加熱殺菌してぺ一スト状とし、パン又は菓子に充てん又は塗布して食用に供するものをいう。以下この目において同じ。)、干しすもも、マーガリン並びにみそ以外の食品に使用してはならない。 ソルビン酸カリウムの使用量は、ソルビン酸として、チーズにあってはその1kgにつき3.0g(プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム又はプロピオン酸ナトリウムを併用する場合は、ソルビン酸としての使用量及びプロピオン酸としての使用量の合計量が3.0g)以下、うに、魚肉ねり製品、鯨肉製品及び食肉製品にあってはその1kgにつき2.0g以下、いかくん製品及びたこくん製品にあってはその1kgにつき1.5g以下、あん類、菓子の製造に用いる果実ぺ一スト及び果汁、かす漬、こうじ漬、塩漬、しょう油漬及びみそ漬の漬物、キャンデットチェリー、魚介乾製品(いかくん製品及びたこくん製品を除く。)ジャム、シロップ、たくあん漬、つくだ煮、煮豆、ニョッキ、フラワーぺ一スト類、マーガリン並びにみそにあってはその1kgにつき1.0g(マーガリンにあっては、安息香酸又は安息香酸ナトリウムを併用する場合は、安息香酸としての使用量及びソルビン酸としての使用量の合計量が1.0g)以下、ケチャップ、酢漬の漬物、スープ、たれ、つゆ、及び干しすももにあってはその1kgにつき0.50g以下、甘酒及びはっ酵乳にあってはその1kgにつき0.30g以下、果実酒及び雑酒にあってはその1kgにつき0.20g以下、乳酸菌飲料にあってはその1kgにつき0.050g(乳酸菌飲料の原料に供するものにあっては、0.30g)以下でなければならない。
*ニョッキ:ゆでたじゃが芋を主原料とし、これをすりつぶして団子状にした後、再度ゆでたものである。
1.ソルビン酸(ソルビン酸カリウムを含む。以下同じ。)の安全性に関する知見 本品は、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)において評価され、ー日摂取許容量(ADI)がソルビン酸として0‐25mg/kg体重・日と設定されている。また、ソルビン酸の安全性に関する文献検索から安全性を疑わせる新たな知見は得られていない。
2.ソルビン酸の一日摂取量 使用基準改正対象食品からのソルビン酸の摂取について、ソルビン酸が使用基準案の上限まで使用されたと仮定した場合の理論最大摂取量及びそのADIに対する比は次のとおり試算される。
なお、食品からのソルビン酸の摂取について、現行の使用基準に基づき試算すると、理論最大摂取量は99.5mg/人・日、対ADI比は8.0%である。
3.要請のあった食品に対する有効性に関する知見 スープに対してソルビン酸を添加し、細菌及び酵母の生菌数を指標とする試験において、0.05%以上添加した場合に14日間以上の保存効果が示されたほか、それぞれの食品について要請のあった使用量で保存料としての有効性が示された。 4.その他 (1)諸外国での基準設定状況
(注)GMP:Good Manufacturing Practice |
食品添加物名 |
金 |
○着色料(化学的合成品を除く。)(下線部分が改正事項。) 着色料は、こんぶ類、食肉、鮮魚介類(鯨肉を含む。)、茶、のり類、豆類、野菜及びわかめ類に使用してはならない。ただし、金をのり類に使用する場合は、この限りではない。 1.金の安全性に関する知見 金については、FA0/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)において評価され、一日許容摂取量(ADI)の設定が毒性学上必要ないとされている。また、金の安全性に関する文献検索から安全性を疑わせる新たな知見は得られていない。なお、ADIの設定が毒性学上必要ないと評価されているので、摂取量の考察を要しないが、のりに対する金の標準的な使用量は、のり3gに金0.7mgとされている。 |
食品添加物名 |
没食子酸プロピル |
○没食子酸プロピル(下線部分が改正事項。) 没食子酸プロピルは、油脂及びバター以外に食品に使用してはならない。 没食子酸プロピルの使用量は、没食子酸プロピルとして、油脂にあってはその1kgにつき0.20g以下、バターにあってはその1kgにつき0.10g以下でなくてはならない。 1.没食子酸プロピルの安全性に関する知見 本品は、FA0/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)において評価され、一日摂取許容量(ADI)が0‐1.4mg/kg体重・日と設定されている。また、没食子酸プロピルの安全性に関する文献検索から安全性を疑わせる新たな知見は得られていない。 2.没食子酸プロピルの一日摂取量 油脂からの没食子酸プロピルの摂取について、没食子酸プロピルが使用基準案の上限まで使用されたと仮定した場合の理論最大摂取量及びそのADIに対する比は次のとおり試算される。
なお、食品からの没食子酸プロピルの摂取について、現行の使用基準に基づき試算すると、理論最大摂取量は2.0mg/人・日、対ADI比は2.9%である。 3.要請のあった食品に対する有効性に関する知見 油脂に対して没食子酸プロピルを添加し、過酸化物価を指標とする試験において、BHT又はBHAと同等以上の酸化防止効果が示された。 4.その他
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