食品中に残留する農薬等の暫定基準(第1次案)-別添
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別添
食品中に残留する農薬等の暫定基準(第1次案)(案)
I 経緯
「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成15年法律第55号、平成15年5月30日公布)により、農薬、動物用医薬品及び飼料添加物(以下、「農薬等」という。)について、いわゆるポジティブリスト制(基準が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度、参考:改正食品衛生法第11条第3項)を導入することとしている。
(参考) |
改正法第11条第3項(新設) (1)農薬(農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)第一条の二第一項に規定する農薬をいう。次条において同じ。)、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和二十八年法律第三十五号)第二条第三項の規定に基づく農林水産省令で定める用途に供することを目的として(2)飼料(同条第二項に規定する飼料をいう。)に添加、混和、浸潤その他の方法によつて用いられる物及び薬事法第二条第一項に規定する(3)医薬品であつて動物のために使用されることが目的とされているものの成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含み、(4)人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質を除く。)が、(5)人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量を超えて残留する(6)食品は、これを販売の用に供するために製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、又は販売してはならない。ただし、(7)当該物質の当該食品に残留する量の限度について第一項の食品の成分に係る規格が定められている場合については、この限りでない。 (1)~(3):ポジティブリスト制の対象物質(農薬、飼料添加物、動物用医薬品) (4):ポジティブリスト制の対象外物質、(5):一律基準値、(6):対象範囲(加工食品の取扱い) (7):残留基準(暫定基準を含む) |
同制度が導入されると、残留基準が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通が原則禁止されることとなる。しかしながら、現在設定されている残留基準のままでポジティブリスト制を導入した場合、不必要に食品の流通が妨げられることも想定されることから、農薬取締法により使用が認められている農薬や国際基準であるコーデックス基準等科学的な評価に基づき残留残留基準が設定されている農薬等については、それらの基準を参考に暫定的な基準(以下、「暫定基準」という。)を設定することが必要である。
暫定基準の設定については、本年6月27日から3回にわたり薬事・食品衛生審議会の担当部会において審議し、次の方法により暫定基準案を作成したうえで広く関係者に意見を求めることが了承された。
II 暫定基準第1次案の設定
1. 暫定基準の作成
(1)
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作成方法 暫定基準の設定にあたっては、(1)国際基準であるコーデックス基準、(2)国内の農薬取締法に基づく登録保留基準(動物用医薬品にあっては、薬事法に基づく承認時の定量限界等)のほか、(3)JMPR(FAO/WHO合同残留農薬専門家会議)及びJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)で科学的な評価に必要とされている毒性試験結果などのデータに基づき残留基準を設定している諸外国(米国、カナダ、欧州連合(EU)、オーストラリア及びニュージーランドの5ヶ国(地域)(平成15年4月11日に開催された食品輸入円滑化推進会議において在京各国大使館へ通知し協力の申し出があった国))の基準を参考に、図1の設定フローに基づき、農薬、飼料添加物及び動物用医薬品の暫定基準を作成した。 なお、農薬等に該当するものであって食品に残留する成分が、いわゆる汚染物質等と同じものである場合には、自然に含まれるものについて過剰な規制とならないように必要な措置を講じた。また、農薬等に該当する場合であって、かつ、添加物規制の対象となる場合については、暫定基準策定の対象としなかった。その他、次を暫定基準の設定に際しての留意事項とした。 |
(暫定基準設定の際の留意事項)
1.
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現行基準の取扱い 現行の基準については、当然のことながら、改正の対象としない。 |
2.
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ADIの設定ができない農薬等の取扱いについて 発がん性等の理由によりADIを設定できないものについては、従来より農作物に対する基準を「不検出」としていることから、新たに設定する他の食品に対する基準も「不検出」とする。 |
3.
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現在の抗生物質及び合成抗菌剤に関する食品の規格基準の規定(個別に規定されたものを除き、「食品は、抗生物質を含有してはならない。」あるいは「食肉、食鶏卵及び魚介類は化学的合成品たる抗菌性物質を含有してはならない。」)はそのまま残すこととするが、対象食品の範囲については整合性を図るものとする。 |
4.
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残留する代謝物等が同一の場合の取扱いについて 農薬等の成分が異なるものの、残留する代謝物又は分解物が同一であるものについては、当該代謝物又は分解物ごとに基準を作成することとする。また、農薬等の成分が異なるものの分析対象となる物質が同一とならざるを得ないものについては、その分析対象物ごとに基準を作成することとする。 例:MCPB、MCPBエチル(除草剤) |
5.
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有効数字について FAOガイドラインに従い、原則として有効数字は1桁とする。ただし、コーデックス基準については例外とし、また、基準値案が100ppm以上の場合にあっては、有効数字を2桁とする。 |
6.
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外国基準の採用について 複数の外国基準を参考とする場合には、その平均値を用いる。
例: |
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(2) |
複数の外国基準を参考とする場合であって、当該基準に大きな違いがある場合には、単純に平均値を採用するのではなく、そのばらつきを踏まえ適切な値を採用する。ただし、合理的な理由がある場合にはその事情を勘案する。 |
(3) |
他の外国基準がない場合であって、EU等において検出限界値をもって基準を設定していることが明らかなものについては、我が国のポジティブリスト制においては一律基準値を適用することとし、暫定基準を設定しない。 |
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7.
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各分類ごとの食品の基準の整合性について 穀類、あぶらな科野菜等の各分類ごとに、個々の食品等の基準の相互の整合性を考慮する。 |
(2) |
暫定基準の性格 暫定基準は、改正法第11条第1項に基づく規格として、ポジティブリスト制の導入(改正食品衛生法公布後3年以内)と同時に施行する。なお、農薬、動物用医薬品及び飼料添加物は、それぞれ区分することなく、まとめたものとして告示する。 |
2. |
参考とした基準に関する情報 基準作成に際し、参考とした基準については以下のとおり。
国(地域)等
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分類
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品目数
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日本
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農薬取締法に基づき登録保留 基準が設定されている農薬 |
231品目 (平成15年6月現在)
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薬事法に基づき承認されてい る動物用医薬品等 注1) |
132品目 (平成15年6月現在)
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コーデックス
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農薬
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136品目 (平成15年6月現在)
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動物用医薬品等
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43品目 (平成15年6月現在)
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米国
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農薬
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327品目 (平成15年4月現在)
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動物用医薬品等
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104品目 (平成14年4月現在)
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カナダ
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農薬
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142品目 (平成15年6月現在)
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動物用医薬品等
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61品目 (平成15年1月現在)
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EU
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農薬
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157品目 (平成15年2月現在)
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動物用医薬品等
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123品目 (平成14年11月現在)
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オーストラリア
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農薬・動物用医薬品等
注2) |
417品目 (平成15年3月現在)
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ニュージーランド
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農薬・動物用医薬品等
注2) |
154品目 (平成14年12月現在)
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注1: |
我が国の薬事法により承認されている動物用医薬品については、承認にあたり、原則として残留しないことをその条件としていることから、暫定基準の設定にあたっては、農林水産省動物用医薬品担当課長から提示された各品目の定量限界値を参考とする。 |
注2: |
オーストラリア及びニュージーランドにおいて設定している食品中の残留基準については、農薬及び動物用医薬品等の区別はされていない。 |
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3. |
基準設定対象食品分類について 従来の農作物分類についても「上記以外の○○○」の中から比較的摂取量が多い作物(1日摂取量が1g以上のもの)であって、コーデックスにおいて分類があるものについては、分類として独立させるものとする。なお、分類の追加については、ポジティブリスト制の施行に合わせる。
[追加分類(摂取量)] |
[従来の分類(変更後の摂取量)]
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チンゲンサイ(1.37g) |
上記以外のあぶらな科野菜 |
( 3.7g→2.3g) |
にら(1.74g) |
上記以外のゆり科野菜 |
( 2.5g→0.8g) |
たけのこ(2.05g) |
上記以外の野菜 |
(13.3g→11.3g) |
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4. |
加工食品に係る基準設定について コーデックスにおいて基準を設けているものは、暫定基準を設定する。それ以外の加工食品については、個別に基準を設けず、原則として、規格基準に適合した原材料を用いて製造され又は加工された食品は、流通を可能とする。 |
5. |
暫定基準の見直し 今回設定する暫定基準については、ポジティブリスト制施行後、5年程度ごとに参考とした基準の変更に伴う見直しを行う。 これに加え、マーケットバスケット調査による農薬摂取量の実態調査等の結果に基づき、優先順位を付した上で、安全性試験成績を収集し、リスク評価に基づく基準の見直しを行うこととする。 |
6. |
その他
(1) |
参考とする基準は現段階のものであり、告示までの間に新たな品目の追加・削除及び対象農作物等の追加・削除など、参考とする基準の変更も予想されることから、暫定基準設定作業の事務的に可能なもの(WTO通報、パブリックコメント実施前が目途)については、暫定基準に反映させることとする。 |
(2) |
平成16年春を目途に農薬等の残留基準設定の要請に関してガイドラインを示し、農薬の登録申請、動物用医薬品の承認申請又は飼料添加物の指定要件がない場合であって、国外からの要請等により残留基準を設定が可能となる体制を整備する。 |
(3) |
暫定基準の意見聴取期間等において、暫定ではなく本来の基準の設定が要請される場合も想定される。 |
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図1

※ |
登録保留基準 |
: |
農薬取締法に基づく登録申請の際に登録の可否を判断する基準 |
※ |
外国基準 |
: |
申出があった国(米、EU、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)の基準 |
※ |
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: |
暫定基準として採用する基準 |
(類型)
1-1 |
コーデックス基準と登録保留基準があり、コーデックス基準を採用したの |
1-2 |
コーデックス基準と登録保留基準があり、登録保留基準を採用したもの |
2 |
コーデックス基準を採用したもの |
3-1 |
登録保留基準と外国基準があり、登録保留基準を採用したもの |
3-2-1 |
登録保留基準と外国基準があり、外国基準を採用したもの |
3-2-2 |
登録保留基準と外国基準があり、外国基準を採用するが、その平均値につき特別の取扱いをしたもの |
4 |
登録保留基準を採用したもの |
5-1 |
外国基準を採用したもの |
5-2 |
外国基準を採用するが、その平均値につき特別の取扱いをしたもの |
6 |
各分類ごとの食品の基準の整合性に配慮したもの |